第10話
女の子が指を鳴らすと、どこからともなく教会の鐘の音が響き渡った。その澄んだ鐘の音を耳にしながら、黒青は未来の区画から追い出されるように出口へと押し出された。
目の前に広がるのは、見下ろすほどに大きな街だった。遠くには広い海が広がり、その向こうにはまた陸地が見える。手前の陸地にも、びっしりと町が広がっている。普通に考えて、どれだけの人がここに住んでいるのだろう。
黒青は、地下世界の広大さに改めて驚きを隠せなかった。
「娘には悪いけど、私は2000年後の世界には興味ない。だから地上に行かないって選択肢もあるってことなんだよね。」
そう心の中で思いながら、黒青は口には出さなかったが、あの少女はきっと自分が真面目に地上に戻ると思っているのだろう。考えると、それがなんだか可笑しくて微笑みがこぼれた。
「やっぱり子供なんだなあ。」
そう呟くと、黒青は静かに街の中へと歩き出した。
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