第9話
「今から2000年後にね、人類は滅ぶんだよ。でも、あなただけは助かるの。」
少女は静かに、しかしどこか確信をもってそう言った。
「だから私がここに生まれて、この空間だけが未来になっているんだ。でもね、未来はこの場所からすごく近い。でもまだ2000年の時間が残ってる。だから、もしあなたにできることがあるなら、ちゃんとやらなきゃダメなんだよ。」
黒青は驚いた顔で答えた。
「2000年後でしょ? 私、生きてないわ。」
少女は少し生意気そうに肩をすくめて言った。
「ダメだよ。地上に行ったらもう2000年後の世界だから。ここにいる時間はただの時間じゃない。覚悟を決めたら帰った方がいいと思うけど……まあ、無理だろうね。いきなり2000年後の世界に戻っても、今のあなたじゃ何もできないでしょ?」
黒青はその言葉に少し考え込んだ。確かに、ただの未来じゃない。今の自分が行っても戸惑うだけかもしれない。
少女は少し悪戯っぽく微笑みながら続けた。
「お母さんなのに、こんな言い方して悪いとは思うけどね、2000年後の世界はもっと厳しいんだから。」
黒青は思わず苦笑いを浮かべた。
「やっぱり、何かあると思ったよ。ただの世界じゃないし、あなたもただの私の子供じゃない。私以上に言いたいこと言うやつだから……確かに私の子供だ。」
少女は誇らしげにうなずいた。
「私は認証してくれた瞬間、本当は、おめでとうの拍手でもするべきなのかもしれないけど、時間もないし、私はもう消える。でも未来の空間はまだ残ってる。だから、もし私に質問があったら、いつでも来てください。お母様。」
黒青はしばらくその言葉を胸に刻んだ。未来と現在をつなぐ奇妙な縁に、強い責任感と覚悟が芽生え始めていた。
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