第9話 秘密が暴かれる時
夕暮れのギルドは、いつもより重苦しい空気に包まれていた。
噂は瞬く間に広がり、前世の記憶を持つ者――つまり、異世界転生者であるという秘密が、ついにギルド内の一部に知れ渡ってしまったのだ。
ナオミアは、依頼の書類を整理する手が震えるのを感じていた。
心臓が激しく鼓動し、喉の奥が乾いていく。
彼女は深呼吸をして、冷静さを保とうと努めた。
「どうしてこんなことに……」
胸の奥で、前世の記憶が重くのしかかる。
もしこれが広まれば、彼女の立場は危うくなる。信頼は失われ、仲間たちの目も変わってしまうかもしれない。
その時、ギルドの扉が勢いよく開いた。
「ナオミア!」
ライアスの声が響く。彼の険しい表情には、怒りと心配が混ざっていた。
「秘密がばれたんだな」
彼は静かに告げる。
「狙われる危険が高まっている。お前を守るため、俺は何でもする」
ナオミアは涙をこらえながら、強く頷いた。
「ありがとう、ライアス。私、逃げたりしない。自分の道を進むだけ」
その言葉に、ライアスは決意を新たにした。
「なら、共に立ち向かおう。お前が孤独になることは絶対にない」
翌日、街の噂はさらに広がっていた。
陰口や疑いの目に晒されながらも、ナオミアはいつも通りギルドでの仕事をこなした。
だが、内心の緊張は限界に近づいていた。
そんな彼女を支えたのは、ライアスの存在だった。
彼は仲間たちに真実を話し、ナオミアを信じるよう説得し続けていた。
時には激しく怒り、時には優しく励ます彼の姿は、ナオミアにとってかけがえのないものとなっていた。
ある夜、二人はギルドの屋上で静かに話をした。
満天の星空の下、ナオミアは心の内を明かした。
「私の前世は……普通の会社員だった。でも、ここではそれが重荷になるなんて思わなかった」
涙が頬を伝い落ちる。
「怖いけど、ライアスがいるから頑張れる」
ライアスはそっと彼女の手を握り返した。
「俺も怖い。でも、お前となら乗り越えられる」
その夜、二人の絆はさらに深まった。
そして、ナオミアは再び歩き出す決意を固めたのだった。
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