第8話 ライアスの視点――初めて出会った彼女の強さと孤独
街の朝は静かに始まる。
淡い橙色の光が城壁の石を照らし、冷たい空気の中に僅かな温もりをもたらす頃、俺はいつものようにギルドの周囲を巡回していた。
副団長として、街の安全を守るのは当然の務めだが、俺にとっては自分を試す場でもあった。
その日、彼女が現れた。
ギルドの大きな扉を押し開けて、静かに一歩を踏み入れた女性。
ナオミア――まだ新人の彼女は、その時からただ者ではなかった。
初めて見た瞬間、俺は何かを感じた。
目が合った時、彼女の瞳の奥に宿る決意は強く、しかしどこか孤独を隠していた。
まるで自分自身と戦っているように見えた。
「副団長、ナオミアさんがやってきました」
受付の声が耳に届く。
俺はゆっくりと彼女に近づき、軽く会釈をした。
「よろしく頼む」
簡潔な言葉だったが、彼女は真摯に頷いた。
彼女の動きは堅実で無駄がなく、仕事に対する姿勢は新人とは思えなかった。
何より、その眼差しには、誰にも負けない強さがあった。
だが、俺は彼女の表情の裏に隠されたものも見逃さなかった。
時折見せる寂しげな目、誰にも打ち明けられない孤独感。
その影は薄く、しかし確かにそこにあった。
初めての依頼を終えた後、彼女が一人で街の外れの広場で休んでいるのを見つけた。
俺は声をかけた。
「疲れているようだな。少し休め」
ナオミアは驚いたようにこちらを見たが、やがて小さく頷いた。
夕暮れの柔らかな光の中で、彼女はようやく肩の力を抜いた。
「ありがとうございます」
静かな声だった。
その時、俺は思った。
この街で、そしてこの世界で、彼女は誰よりも強く生き抜こうとしている。
それが彼女の孤独の理由であり、同時に魅力でもあった。
これから何があろうとも、俺は彼女のそばにいる。
それが副団長としての義務であり、俺自身の決意だった。
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