第4話 働きすぎ注意報! それでも恋が忍び寄る?
朝日が昇るとともに、街の石畳には長い影が伸びていた。薄く靄(もや)がかかる街の広場には、朝露を帯びた花々が咲き誇り、小鳥のさえずりが穏やかな空気を満たしている。遠くの山並みは淡い水色に染まり、森の緑と溶け合って幻想的な景色を作り出していた。
そんな美しい景色とは裏腹に、ナオミアは疲れ切った表情で歩いていた。最近の彼女は、忙しい日々に追われ、体の限界を感じていたのだ。貧乏貴族の家計を立て直すため、ギルドの改革に奔走し、領地の人々の問題にも首を突っ込む。前世のOL時代に培った段取り力と責任感で次々と課題をこなしていたが、心身は少しずつ悲鳴を上げていた。
「もう少し休まなきゃ……でも、やらなきゃいけないことが山積みで……」
小さく呟くと、ナオミアは肩にかけたマントをぎゅっと握り締めた。目の前には広がる青空、心地よい風が彼女の頬を撫でるが、胸の中の焦りは消えなかった。
そんなとき、背後から落ち着いた声がした。
「無理はよくない。君が倒れたら、誰も困る」
振り返ると、騎士団副団長のライアスが立っていた。いつもの冷静な表情の中に、ほんの少しの心配が見え隠れする。
「ライアスさん……ありがとうございます。でも、私にはやるべきことが……」
「君の頑張りはよくわかっている。だが、体あってのものだ。少しは自分を大事にしろ」
その言葉に、ナオミアはわずかに笑みを浮かべた。
「わかっています。でも、私、仕事は責任だと思ってるんです。前世でもそうでしたから」
彼女の瞳には、強い意志とどこか切なさが宿っていた。
その夜、ナオミアはついに疲労が限界を超え、静かに床に伏せた。白いシーツの上で、穏やかな月明かりが彼女の横顔を照らす。
そして、密かに部屋の扉が開き、一人の人物が入ってきた。
「大丈夫か、ナオミア……?」
その声に、ナオミアは微かに目を開け、かすかな笑顔を返した。
──こうして、彼女の心にも、誰かの存在がじわりと入り込み始めるのだった。
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