EPISODE 3 常識、終了。

「アンタ達、GRAND JAKQERだよね?」


「な、なぜそれを」

「馬鹿!言うな!」


ここが組織のアジトって訳じゃなかったのは残念だけど、少なくとも下っ端が武器取引をしようとしてたみたい。


「ご本人様方なら話が早い……ねぇ、安藤麻衣って女の人、知らない?」


「あァ!?知るか!」


「知らないかぁ……」


「の、のうのうと攻撃邪魔しやがって!!やっちまえ!!」


襲いかかってくる数人の男たちと、あの銃火器構えてる男一人。中々にめんどくさい。


「お巡りさん、腰引けてない?大丈夫?」


「あ、あぁ、おかげさまで。」


「じゃああの男たちは相手してくんない?銃火器は私がやる」


「お、おう、分かった、一旦任せる……無理するなよお嬢さん」


「さっきの私見てもまだそれを言うか!」


「いや、国家公務員としても一応一般市民に危険人物の相手をさせるのは……」


「大丈夫!ささっと倒すから!」


「……分かった、頼んだ」


警官からの許可を得られたなら何やってもいいよね?


「クソッ、これでも喰らってろ!!ついでにもう一発!!」


2発――うん、防げる!銃火器は破壊したくないし後で観察したいから慎重に行くとしよう。


白上閃脚はくじょうせんきゃく 霧華晶フロストラルッ!!!」


連続で蹴ってあのビームモドキを叩き潰す!!


「チッ!!クソ、もう1発――」


間髪入れず、くるぶしの上に取り付けたグレイブショットを取り外して、走りながら右腕の手の付け根に取り付ける。


こういう時は拘束しよう!


「なんだその機械は!!」


白上爆掌衝魂拳はくじょうばくしょうしょうこんけん 生大地ヴェルヴェラ!!!」


グレイブショットから大量の糸を出して、銃火器持ってる男の身動きを封じる。


そんでもって、ぶん殴る!!


「アガリィッ!!!」

「ぶべらあああぁぁぁぁ!?!?」


男が吹っ飛ぶ。銃火器は左手で抱えておいた。


「ってて……調整ミスったなぁ、いたた」


糸の拘束、強くし過ぎてこっちがぶん殴った反動を喰らってしまった。結構痛い。突き指にはなってなくてよかった……


あ、そうだお巡りさんは!?



***



「頼んだなんて言っちまったけど……いや、後で考えよ」


「警官がなんだやっちまええ!!」


全く、酔っぱらいのおっさんでもこんな暴徒化しないってのに。久しぶりに体を動かすし、明日は筋肉痛かもしれない。


「ごへっ」

一人、


「ぐはっ!?」

二人、


「お前どけよそこ!」「ちょ、やめろ!!」

「「どぼげっっ」」


三人目と四人目―はどっちも正反対の方向から攻めてきたので、俺が下がったら勝手にぶつかった。


まぁ、この強さからして地元のゴロツキだろう。さっきのは組織間取引。明らかにまずい物持ってるし、殴りかかってくるし、一旦ここで捕らえるのが良いだろう。


「暴行罪と銃刀法違反で現行犯逮捕です。署で話聞くからな」


チンピラか!さて、こっちは片付いたけどあっちは……


「アガリィッ!!!」

「ぶべらあああぁぁぁぁ!?!?」


あの足に付いてた妙な機械を今度は腕にはめて、思いっきりぶん殴って銃火器持ってた男を吹っ飛ばしてた。


・・・・・・見れば見るほど訳が分からないお嬢さんだこと。


「あ、お巡りさん大丈夫だった?」


「おかげさまで助かったよ、ありがとう。そういう君はあれの反動大丈夫なのか」


「いやぁおかげさまで痛いっすねえへへ」


「はぁ……とりあえず、説明も無しに突っ込まれるとこっちも何が何だか把握できないんだが、ありゃ一体」


「話してるとこ悪いですけどお巡りさん、まだです」


「え?」


「別に旧NEPLA側にも居ないわけじゃないんですけど、旧清栄連合側には改造されてる人間が多いんですよ」


「んー……その、まず最初から分からないんだが、NEPLAとか清栄連合ってのはあいつらの組織の」


「あ、ほらまだ起きるみたいですよ、あいつ」


まさか。俺が簡単に倒したはずの男のうちの一人が、何も無かったかのように立ち上がった。


「ううあああああ!!!」


「おいなんかあいつ呻き声上げてるぞ!?あれもなんなのか知ってるのか!?」


「バリアントって奴ですねぇ。私も初めてです、あれ見るの。

旧NEPLAの方が科学力に優れてるのはそうなんですけど、旧清栄連合にはそれとは別に人体改造が得意な班が居るみたいで。」


立ち上がった男の筋肉が異常な勢いで膨張と収縮を繰り返していく。蒸気みたいなのも出てるように見える。


「……色々と何度も聞いてすまないんだが、あれはどうすべきなんだ?」


「倒すしか、ないと思いますけど。ダメージ蓄積させまくったら人間に戻ると思うんで。」


「そうか……一応人間、なんだな?」


どう見てもまずい皮膚の色のヤバい巨漢なのだが。


「人間です。けどお巡りさん……ああなったからには多分お巡りさんじゃ力の差が大きすぎます。私がやりますよ」


またか。いくら強いと言え、見ず知らぬの一般市民のお嬢さんに俺は戦いを背負わせるのか、背負わせていいのか……?


――あ、いや、一般市民って言っても速度違反は論外すぎたが。


けど、無理に俺がやろうとして負けたら、それこそ一般市民に被害が及ぶ可能性だってある。あいつを確実に倒せるのは、この子だけ……


「……速度違反の件は、後でちゃんと聞くとして……」


「ギクッ!!」


「……今は、頼んだ。倒してほしい。」


「まっかせてくださいよ!!」



***



さてさて、承りましたと。GRAND JAKQER初戦から、いきなり奴らの主要兵器メインウエポン、バリアントと戦えるだなんて。


運が良い!!けど。既に開発されきった上に、ダメージ蓄積させたら倒せる、上にこんな危ない人間改造兵器なんて。


生け捕りとかサンプル採取はやめておこう。純粋に倒す。研究した所で、私は改造人間とかの類を出来るほどマッドサイエンティストじゃないからね。


「バリアント!こっち見て!!」


「ううああああ……」


……見ない。全ッ然こっち襲いかかってきてくれない。まあ、そりゃそうだね。


人間兵器として開発されたんだから、本来は単独で使うものじゃなくて、上司とか指導者が居る下で使える生物兵器みたいなものだと思う。


それこそ、赤いライトの方向に突っ込んでく奴とか、超音波に突っ込んでく奴とか、そういう「方向指定型」がバリアントには多いらしい。


そんでもって、あのバリアント。さっきからこっちじゃなくて、外……車がバンバン走ってる方?そこら辺の音が聞こえる度に耳の肥大化した筋肉が動いて見える。


ここは廃工場、故にとっても静か。それであっちに反応示してるってことは、多分音に反応する奴な気がする。


「お巡りさん、その拳銃一回撃ってくんない?」


「は、はぁ!?発砲しろっての!?」


「いやあの、あいつを狙って!ってわけじゃなくて。

あいつ、人の声じゃない環境音に思いっきり反応してそっちの方に襲いかかるように作られてるはずなの。

だからお巡りさんが銃撃ってくれたら、その方向に来るかなぁ……って。」


「な、なるほどな……?いやしかし、そうしてしまうと外の人にも音が聞こえてしまうんじゃないか?廃工場から変な音がする、って」


「さっきの私の白上閃脚うるさすぎたからもう手遅れです」


「あぁ……」


「とりあえず!銃声音はさっきのドンパチの続きってことにしたらいいから!お願いします!」


「………分かったよ…」


このお巡りさん、聞き訳が良すぎる!!!ワンチャン罰金も回避できそうだね




「音に反応したら多分凄い勢いでこっち来るけど、私が絶対にその場で倒すからお巡りさんは動かないでね」


「ほ、本当に大丈夫なんだな!?」


「大丈夫まっかせて!」


すぐに蹴りでぶっ倒せるように、グレイブショットの電源はもう起動させて足にくっつけとく。これでいつでも発動可能だ。


「――さっきから思ってたんだが、その機械はなんなんだ?」


「これ?グレイブショットっていう奴。

腕か足に取り付けたら、その部分の身体能力が一時的に向上して、更にこの機械本体からも攻撃強化の素が色々出てくれるんです。」


「ほう……まあ、詳しくは後で聞く」


「後でが多いですねお巡りさん」


「夏休みの宿題は早めにやる派だけどな」


「私貯める派でしたね、めいいっぱい休み楽しんでからそれのお会計ってことで宿題清算してました。」


「そういうやり方もあったのか……で、いつ撃てばいいんだ結局。」


「いつでも。せーのって言ってからでお願いしますね」


「了解……じゃあ行くぞ?」


「あい」


「っせーの!!」



バ ン ッ ! ! ! 



「!!!ギュギェアアアアアアアアア!!!!」


おいでなすったぁ!!しかも速度がめっちゃ速い!!



けど、やれる。麻衣さんが作ったこのグレイブショットがあればね!!



「ゲギャアアアアアアア!!!」


猛スピードで猪突猛進してくるバリアント相手なら、回し蹴りで!!




白上閃脚はくじょうせんきゃく 回転焼かいてんや桜吹雪チェリザードッ!!!」


やってきた巨漢バリアントの背中に、回転しながら、回転で発生した熱で強くした桜吹雪を叩き込む!!!



「ガッ……ギゲェラ、ぐあああああああああ…………」



バリアントの全身の筋肉から力が抜けていく。そして元の姿に戻っていき……



人間に戻った。



「……倒せた、のか?」


「ふぅ……はい!!倒せました!!いぇーい」


「い、いぇーい……ありがとう、何から何まで。」


「いやぁ、こんくらい朝飯前ですよ」


「そうか……やけに美味しそうな蹴りの名前だったな、というか、あれは名前、なのか?」


「技名ですよ。なんかかっこいいと思いません?」


「ちょっとわかる。」


回転焼きって言い方で突っ込まれるかと思ったけど特に何も言われなかった。


今川焼と回転焼きと御座候と、色々名前あるよね、あれ。食べたくなってきたし買って帰ろうかな。


「ところで。」


「は、はいっ……」


罰金かぁーっ!!!


「さっきの速度違反、法定速度+時速281kmでの走行の件についてだけど……」


「ハ、ハイ」


「……これだけ訳わからない物見せられたら、大人しく罰金取って免停、とかできないよ。明らかに俺達警察が知らないことが起きすぎてる」


お?これ、ワンチャンあるのでは?


「だから……申し訳ないけど、警察には来てもらう。」


「行く流れなんですかあああ!?それ!?!?」


「い、いや落ち着け落ち着いて聞いてくれ!あのだな?」


「は、はい。」


「一応さっきの……えー、なんだっけあの、筋肉モリモリの」


「バリアント?」


「そうバリアント。えーっとだな、バリアントも人間とみなすならさっきのお嬢さんの行動は正当防衛越して過剰防衛になる可能性があって……」


「は、はぁ……」


めんどくっさ!!!


「けど、けどだここからが大事だよく聞け」


「あい」


「……できる事なら、そんな理由で君がアイツらを止めることが出来なくなってほしくない。だから、だな……」


「は、はい」


「一人の警官としての意見なんだが、君に戦う許可を警察としてあげておきたい」


「!それってつまり、私の戦闘全部合法にしてくれるってことですか!?」


「ま、まあ要約するならそうだ……もしもそれが無理だったら、毎回俺が上手い事誤魔化す。

そうでもしないと、とてもじゃないけど市民の平和を守り切れない。」


……このお巡りさん、マジだ。


麻衣さん奪還の為にGRAND JAKQERと戦うとなった時、心配だったものの一つに警察があった。


明らかに非合法な戦いを、見逃してくれるのかな……っていう。けど、こんなにいい機会そうそうない。


これで心置きなく、麻衣さんを取り戻しに行けるなら。


罪のない一般の人を一人でも巻き込まずに済むのなら。



「……ありがとうございます!!」


「え」


「お巡りさんがそこまで考えてれてるの、本当になんか……嬉しくて……


どうかそれ、お願いしたいです!!」


「……あぁ!こちらこそありがとう、こんな無茶ぶりに付き合わせてしまって……」


「全然!本当にありがたいですよ、合法にしようとしてくれるの。」


「合法にできるかは、分からないがな……なんとかしてみせるよ。


名乗るのが随分遅れてすまない、滋賀県警巡査の六京海斗だ。よろしく。……あ、タメ口で全然いいよ、気にしないでくれ」


「六京さんね、覚えた。私は個人発明家の白上澪音、大学二年生20歳!これからよろしくね!」


「あぁ!じゃあ一旦、あいつらパトカーに詰め込んで本部へ行こうか」


「了解!」



長い付き合いになりそうだ、六京海斗さん。さて、今からはパトカーの後ろについて本部へ……あ。



『……断片的にしか聞こえてなかったけど、私たち、警察行くの……?罰金じゃダメなの……?』


「……凄い所だけ聞いてたな」


パトカーに尾行する自動運転とかを一番したくないであろう奴が居るんだった。






***





神刀しんとう使い……というより、神刀そのものは他の神刀を探し求めるが故に、自動的に神刀使いは、他の同族の近くに現れるらしい。


それがまさか、こんな簡単に現れてくれるなんてな。



「あの日麻衣が死んだのも、あの日俺が麻衣を助けに行けなかったのも……」


あの日あの橋が崩落させられたのも!!!


全部お前のせいだったなんてなぁ、北条丸政ほうじょうまりまさァ!!!!」


「飛んで火にいる夏の虫……にしては、ずいぶんと季節外れと言うか何と言うか……


火にいるのが3年くらい遅れたんじゃないのかなぁ?秀一くんよぉぉ!?!?」






澪音と海斗がGRAND JAKQERと初戦闘を行った日の夜。


滋賀県と岐阜県の県境、今須峠にて。


業火の神刀「天鈴あますず」を振るう復讐鬼、坂本秀一さかもとしゅういち


爆発の神刀「麺麭恕羅パンドラ」を振るうGRAND JAKQER幹部 北条丸政


神刀使いでありながら全くの対極に位置する二人の激戦が、幕を開けた。

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