EPISODE 2 カチコミ、一時共闘につき

そもそも廃工場だって私有地、不法侵入に変わりはない。引っ張り出して署で話を聞かねば。


一応いつでも銃を出せる状況にしておきつつ、工場の奥へ、奥へと足を進めていく。


錆びついた鉄の匂いがする。どうも長く使われていないみたいだ。こういう所は大体耐震対策とかがされてない。市民にとっちゃ危ないな……


なんて思ってたら。


「あぁ!?数合ってねぇぞ!全く、『NEPLAネプラ』の連中は数も数えられねぇのか?」


ドスの利いた声。  

隙間から覗き見ると、特攻服のような刺繍入りのジャケットを着た、いかつい男たちが数人。見るからにヤクザや暴走族といった風体だ。ちゃんと申請してんのかな。


「そっちの数え方がおかしいだけだろ……いつまでアナログでやってんだか。」


 対して、言い返しているのは近未来的なパーカーやテックウェアを着崩した、妙に小奇麗な男たち。


明らかに毛色の違う二つの集団が、木箱に入った物資――見るからに怪しいICチップだとか銃刀法違反にしか見えない銃火器のようなものを挟んで睨み合っている。


「こっちの身にもなれよ、下っ端でも時代遅れの任侠やってる『清栄せいえい』と関わらなきゃいけないだけで嫌なのに、数え方までアナログとか」


「かぁーっ!!半グレ集団はこれだから嫌いだ」


あいつらは一体・・・・・・地元のチンピラとか暴走族にはどうも見えない。組織か?なにか組織でもあるのか?


その時、ふと目に留まった奴が一人。


(あいつ……!!)


 趣味の悪いプラチナに光り輝いてるバイク。あのヘルメット、そしてあの服装!


さっきの時速341kmライダーが、物陰に隠れて様子をうかがっていた。蓄音機のようなものを壁に当て、壁に隠れて監視しているように。



***



間違いない。私が追ってた尻尾そのものだ。


『ビンゴじゃん、やるね澪音』


「うるさい今黙ってて録音してるから」


『はいはい』


速度違反してお巡りさんに追われたけど、無茶してでもこうやって追いかけてきて大正解、脳汁がドバドバだ。


どう見てもどう聞いても、私が追ってた組織そのもの!!


「おい」


「あぁちょっと今録音してるのでごめんなさい」


「免許。」


「え?あぁはいはい……あっ」


「速度違反です。お嬢さんあの道時速60kmまでしか出しちゃいけないよ?分かってた?」


「え、あ、えっと、ごめんなさ」


「うんうん、時速341kmとか初めて見たよ~なははは。

いくらF1の聖地だからって鈴鹿から琵琶湖のほとりにまで来てそんなスピード出してもらったら困るよ?

あと君ここ私有地ね。SECOM書いてないからって侵入はダメだよ」


「あ、あ、は、はい、ごめんなさい」


『終わった終わった終わった』


「で、君なんであんな急いでたの?」


「あ、あいつらを追ってて……」


頼む見逃してくれ!私は私なりにやりたいことがあるだけなんですぅ!あいつらが悪い!!


「あ~、あの見るからに悪そうなお兄さんたちね。あれがどういうのなのか君は知ってるわけ?」


「そう!はい!!知ってます知ってますというか奴らをずっと追い求めていて」


「あの暴力団に入りたいとかじゃなくて?」


「違いますぅ首ツッコまないでください」


「いや警察としてそれは無理だよ」


違う!二重の意味で違う!!入りたくないしそもそもあれは暴力団どころじゃない!!



***



「うーん……」


話してて分かったけど、そんなに悪い奴な気はしない……ことはないけど。でも、市民の平穏を守るという点なら。


あいつらを先にとっ捕まえたほうが、よくないか?


「ぜっったいにそこから逃げるんじゃないよ君」


「逃げる気ないですあいつら追ってるんで」


「ああそう」


とりあえず、この子が速度違反してでも追い求めるというあのやばい集団、とっ捕まえるとしようか。


「動くな!!警察だ!!」


「チッ、誰だよこんだけ大声でキレてたやつは!サツ来ちまっただろ!!」


「誰でも良いけどここ私有地だ、あとそれ!!銃刀法違反!!」


「……」


静まんなよ怖い。


「見られたらまぁ……警察でも消すしかねぇか」


男が襲いかかってくる。


けど、所詮はチンピラの喧嘩殺法だ。


俺は大振りのナイフを半身でかわすと、男の手首を掴んでねじり上げ、そのままコンクリートの床へと叩きつけた。


「ぐあっ!?」 「確保!」


 鮮やかな一本背負い。伊達に高校で柔道部やってたわけじゃない。まずは一人――そう思った、直後だった。


「清栄の馬鹿が……こちとら兵器があるってのに」


NEPLAとか呼ばれてた側の男が取り出したのは、木箱の中に入っていた例の銃火器。


――なんか変形してんだけど!?


「おいなんだその……なんだ、本当になんだそれは!!撃つぞ!!」


「撃ち返せるもんなら撃ち返してみろよ」


刹那。その男が持ってたソレから、銃弾どころかよく分からないビームみたいなものがこちらに向けて飛んできて。


「は――」




「だから首ツッコむなって言ったのに!!!」



後ろから、さっきのライダー女の声がして、影が飛び上がった。




白上閃脚はくじょうせんきゃく 桜吹雪チェリザード!!!」




閃光が、弾けた。あの女が俺の前に、ダッ、と降り立つ。足に妙な、拳くらいのサイズの機械を取り付けている。


「な――ッ!?」


「やっっっと見つけた…… GRAND JAKQERグランドジャッカー



***



「まさか私の初陣がお巡りさんを守ることになるからなんてね」


「何だよアイツ!!反逆者か?」


「いやあんな奴、組織内手配者リストでも見たことも無い……」


「初陣って言ってるでしょうが」


全く、清栄連合もNEPLAも関係無いね、人の話聞いてないじゃんこいつら。


「き、君は一体……」


「お巡りさん、ごめんなさい。ちょっと今は見逃してほしいかな、お巡りさんの為にもなるから、ね?」


ひとまず、やることは決まってる。


下っ端からでも良い、麻衣さんの居場所を聞き出さなくては!!

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