第7話 秘密の会合と探り合う能力
その日の夜、悠斗は暦と瑠璃を、いつものコンビニエンスストアの近くにある、比較的静かなファミリーレストランに呼び出した。三人だけで、政府の件、そして自分たちの能力について話し合う必要があった。
「まさか、あんな政府の機関から接触を受けるなんて……まだ信じられないよ」
悠斗が不安を隠せない様子でそう言うと、暦は真剣な表情で頷いた。「私も、最初に接触された時は同じ気持ちでした。彼らは、私たちの力を国の管理下に置こうとする。それが彼らの基本的な考え方です」
瑠璃は少し不安そうな顔で言った。「でも、私にはそんな大それた力があるようには思えないんです。ただ、ほんの少し先の未来が見えるだけで……」
「瑠璃さんのその力も、私たちにとってはとても重要です」と暦は優しく言った。「未来を予測できるというのは、とても大きなアドバンテージになります」
三人はそれぞれの体験を改めて語り合った。悠斗の未来跳躍は、まだ制御が難しいものの、予期せぬ未来を知る手がかりとなる。暦の跳躍は、悠斗よりも安定しており、ある程度の予兆を感じ取ることができる。そして瑠璃の予知は、具体的な危険や出来事を事前に知らせてくれる可能性がある。
「問題は、政府が私たちの能力をどこまで把握しているか、そして、他に何人の能力者がいるか、ですよね」と悠斗は言った。
「ええ」と暦は頷いた。「私が以前接触された時は、能力の種類までは特定されていなかったようでした。ただ、私たちが普通ではない存在であることは気づいていたみたいです」
神崎凛が悠斗に接触してきた際、彼の能力を具体的に指摘していたことを考えると、政府はすでに相当数の情報を集めている可能性があった。
「一条さんと、あの紫色の瞳の女の子、それに最後に会った神崎凛さん……もしかしたら、あの人も何か力を持っているのかもしれません」と悠斗は、これまでに予兆を感じた人物たちのことを話した。
「一条葵さんの天気予知のような力は、私も何となく感じていました」と暦は言った。「彼女は、時々、周囲の人が気づかないようなことを言いますから」
紫色の瞳の少女については、二人は全く心当たりがないようだった。図書館で本を出現させた謎の少女……彼女の能力は一体何なのだろうか。
「神崎凛さんは……政府の人間ですから、何らかの特殊な訓練を受けている可能性はありますね。直接的な能力を持っているかどうかは分かりませんが、警戒は必要です」と暦は冷静に分析した。
三人は、今後どのように行動していくべきか、様々な意見を出し合った。
「まずは、他の能力者たちを探し出すのが先決だと思います」と悠斗は言った。「一人で政府に対抗するのは難しいですから」
「でも、どうやって?」と瑠璃は不安そうに問いかけた。「私たちと同じように、未来が見える人に探してもらうしかないんでしょうか?」
その時、暦が少し考えて言った。「もしかしたら、私たちの能力に共通する何かがあるのかもしれません。未来に跳躍する時、あるいは予知を見る時、何か共通の感覚や兆候があるはずです。それを手がかりに、他の人を探せるかもしれません」
三人はそれぞれの能力が発動する時の感覚を詳しく説明し合った。悠斗の場合は、周囲の音が消え、世界が静止するような感覚。暦の場合は、それに加えて、ごく短い未来の映像が見えることがあるという。瑠璃の場合は、頭の中に突然、鮮明な映像が流れ込んでくることが多いらしい。
それぞれの能力の発動には、集中力や疲労といった要素が影響していることも分かった。
「もしかしたら、特定の場所や時間に、能力が発動しやすいのかもしれません」と悠斗は言った。「僕が最初に時間を止めたと感じたのは、アルバイト中と家で勉強している時でした。暦さんは?」
「私は、特に場所は関係ないような気がします。ただ、精神的に不安定な時や、強い感情を抱いた時に起こりやすいかもしれません」と暦は答えた。
瑠璃は少し考えて言った。「私は……なぜか、雨の日が多いような気がします。雨音を聞いていると、未来の映像が浮かびやすいんです」
それぞれの能力の発動条件には、わずかながら共通点のようなものが見え隠れしていた。
「私たちはまだ、自分の能力についてほとんど理解できていません」と暦は言った。「もっと深く探っていく必要があります。そして、他の能力者たちと協力することができれば、政府の目的も、私たちの未来も、もっと違う形で見えてくるはずです」
三人は、今後定期的に集まって情報交換をすること、そして、それぞれの日常の中で、自分と同じような奇妙な体験をしている人を探すことを決めた。特に、悠斗が予兆を感じた葵や紫色の瞳の少女については、積極的に接触を試みることにした。
しかし、政府の監視の目は、すでに彼らに向けられている可能性が高い。秘密裏に行動する必要があった。
その夜、別れ際、暦は悠斗に真剣な眼差しを向け言った。「悠斗くん、決して一人で抱え込まないでください。私たちは、もう一人ではありません」
その言葉は、悠斗の胸に温かい光を灯した。孤独を感じていた日々は終わり、共に未来に立ち向かう仲間ができた。
しかし、その未来が、果たしてどのようなものになるのかは、まだ誰にも分からなかった。政府の影は、彼らのすぐそこまで迫ってきているのかもしれない。
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