第五話  聞こえる意思からの真意

 理助りすけは胸騒ぎがした。

 月明かりを頼りに、森閑しんかんとした闇夜に足を踏み出していた。

 程なくすると、今度は何かが響き出して来た。理助は声を捉えたと感じた。

 恐る恐るではあるが、声の響くその方角へ足を向けた。

 すると暗がりの中、手製の龕灯がんとうを向けた先の南の崖下に人影が見えた。ピクリとも動かないため、滑落者と見て間違いなかった。

 二人とも息はあるが意識がなかった──。


 理助はまず、子供を背負い運び、急いで滑落現場に戻り、なんとか二人を自分の根城に運び込んだ。

 その根城とは谷底にある山小屋で、過去の地殻変動で不自然に周りの山々が隆起した結果、崖に囲まれた窪んだ地形となる場所にあった。

 かつて理助も滑落し、命からがら小屋を見つけ居着いた経緯がある。

 幸いにも菜種なたねから絞った油が余っており、明かりをいつも以上に灯しては二人の状態を確認する事が出来た。

 そこで子供だと思った人物は矮躯わいくな男だと分かり、もう一人は複数の打撲やわずかな裂傷の娘と分かった。

 とにかく瀕死の状態のため、医術の知識を活かし診断を進める。

 先に娘の状態把握から開始する。

 骨や筋への影響を疑ったが、触診や目視からは深刻な致命傷は見当たらなかった。

 可能な範囲での内部診断として、口の中を覗く。ここも致命傷はなく、眼球の確認に至るところで理助は驚いた。

 《眼が無い!》

 両瞼を開いてみたが、中身はがらんどうだった。眼球が見当たらない事に言葉を失わせたが、それよりもまず治療が優先だと言い聞かせた。

 まずは応急的な処置として、薬草数種と木の根をすり潰し端切れに染み込ませ患部に巻き付けた。

 それとは別に、薬草汁も作りそれは男の口元から数滴程度含み込ませ、腹部を中心に百草の灸を当てた。

 いずれも自己治癒力を促す効果程度ではあったが、娘の方は骨格、筋力形成からして、時間が解決するだろうと目論んだ。

 しかし、小男に関しては半々であった。

 致命傷は無かったが、酷く栄養不足のようで、骨格も筋力も衰え全体的な色素も褪せてしまっている。おそらく体格は先天性のものだとしても、よく生きながらえている方だと感心さえしていた。

 眼の無い少女と半死人──。

 そして未だに止まない〝物鳴り〟──。

 完全な回復までは時間がかかると見通しをつけ、淡々と作業をこなす。

 湿布や灸の当て替え、薬草汁の含ませをとりあえず一晩こなせなければならなかった。


 材料には事足りていた。

 一晩分程度の薬草は充分に備蓄してある。

 ここの森は資源に恵まれていた。豊富な薬草や源泉などもあった。狭い小屋内には広さには似つかわしくない植物片が整然と並べられていた。いずれも医術用と思われ、木の根から花びら、乾草、または木の子まで採取してあった。

 理助はこの二人を回復させると自分にいい聞かせた。

 なぜこの奇妙な二人が滑落してしまったか詳細は分からないが、今自分が出来る事に心血を注ぐ決意をした。

 《この者達を復活させ、声の真意を汲み取ろう。その先に、さらにせねばならない事がある──》

 理助は幾度も心の中で唱えた。

 そして自分と重ね合わせた。


 理助はその昔ある共同体に居た事がある。

 まだ若かりし頃だった──。

 そこで父と共に暮らし、匙医さじいであった父からも医術を教わった。実際に何人もの治療を行なっていた。

 やがて奇妙な発作に悩まされた。

 それが〝物鳴り〟だった。

 聞きたくもない声(音)が何処からともなく聞こえ、その度に恐怖し心の動揺が抑えられずにいた。

 それは理解できるような言葉ではなく、人に説明できる内容でもなかった。

 医術の師でもある父に打ち明けたが、見えない症状にはお手上げだった。

 自分には適切な治療が必要であったが、その術は見当たらなかった。

 ある夜、急病人のため父は握りばさみを手にして布を切っている時に、また幻聴が始まる。

 その声(音)のようなものが、握り鋏から出ている事がはっきりわかった。

 そして、それは父からの〝不信〟と言う事もはっきり理解できた。

 また〝羞恥・不浄〟などの感情が続け様に読み取れた。

 そこで初めて、自分が気狂きちがい扱いされている事に気がついた。

 〝物に宿った心情〟を聞く事が出来る──。

 それが〝物鳴り〟、理助は症状をそう理解した。


 その後、〝物鳴り〟の働きをさらに理解しようと、数日声(音)のようなものに集中した。

 まだ幼い子供の枕からは亡き母への想いからか〝哀傷あいしょう〟が溢れ出ていた。遠き島からの漂流者とのたまう語り部の爺さんの筆からは郷里への想いからか〝寂寞じゃくまく〟を読み取った。

 そういった行動からか、異端の噂は共同体内部でも広まった──。

 この小さな村のために奉仕し、人助けをしていたつもりではいたが、人々からの反応は〝不気味〟以外無くなってしまった。

距離は埋まらないまま、父が言い放った。

 「理助、この村から出るんだ、それがお前の為だ──」

 助けて欲しい気持ちは失せ、正直どうでも良くなった。今まで慕われ過ごした時間は、単なる幻聴ごときで脆くも崩れ散っていった。


 《人は異端を排除する──》

 それを境に、共同体から離れる決心をした。

 心の平穏を保ちたかったからだ。

 それから人との出会いを避け続け、今の地に辿り着いていた。


 久しぶりに聞いた〝物に宿った魂〟の声──。

 それをもう一度聞く事が、この者達を復活させる事と繋がっていた。

 夜が明けてまもなく、小男は目覚めた。

 そして小男は稲造、娘はカズと言う名前を知る事になる。

 理助はひとまずほっとした。

 そんな、稲造は自分よりもカズを心配していた。

 「ほ、ほ、ほんとに、だ、だ、大丈夫かな」

 「まあ、大丈夫だろう」

 理助はそう言いつつも、稲造に対しては悲観していた。

 稲造はと言うと、理助に対しては警戒心などなく、自分の境遇やカズとの出会いの経緯を話した。

 そこで初めて、カズが目の見えない娘だと言う事を知ったフリをした──。

 

 それから数時間後にカズも目覚め、その日の夜は三人で卓を囲む事が出来た。三人で囲むには大ぶりな作業台といったところだった。

 「粥だ、ゆっくりお食べ」

 「ありがとう理助、本当に助かった」

 「まだ安心はできないし、まともに歩くにはもう少しかかると思う」

 「そうだね」

 「ところで、この先どうするつもりかな?」

 稲造はカズの顔を見やる。

 「実は、人探しをしてるの」

 「聞いたよ、君の〝親代わり〟なんだって?」

 「そう」

 「もし良ければ、詳しく聞かせてくれるかな?私に出来る事があるかもしれないし」

 「・・・簡単に言うと復讐」

 「復讐・・・かい?」

 稲造は再び恐々とカズを見やった。

 「そう、私から視界を奪って消えたの」

 「その〝親代わり〟って人が、君を失明させたって事?」

 「こ、怖い・・・」

 「そうじゃなくて、元々私は目が見えなかったらしいの」

 「そうなのか」

 「気づいたら〝親代わり〟に育てられてた。それから義眼を当てがわれたの」

 「ぎ、ぎ、義眼?」

 理助は眉尻を動かすにとどまった。

 「義眼創作師、自分でそう言ってた」

 「なかなか聞き馴染みの無い言葉だね。その人に義眼を作ってもらったの?」

 「そう」

 「すると、視界を奪ったって話はどういう事かな?」

 稲造も気になる様子だ。

 カズはなるべく話を整理しようと心掛けた。

 「ある日、義眼を作り入れてくれたの。そうすると、目が見えるようになった」

 「え、え、え⁉︎」

 「まさか⁉︎」

 二人は同時に反応した。

 「あたしもびっくりした。生まれて初めて景色を見る事が出来たし、色と言うものが理解できた。ただ、〝親代わり〟が言うには、その見えるものは並みの半分程度らしかったけど、でも全然いいの!だって、それでも世界が見れたんだから」

 「す、す、すごい・・・」

 「そうだね、見えると見えないじゃ雲泥の差だ」

 「・・・でも、急に義眼を奪われた。あたしが寝入っている隙に身体の自由も奪われ無理矢理義眼を奪ったんだ。そしてそれっきり〝親代わり〟とは会っていない」

 「そうだったのか・・・」

 重苦しい空気が辺りを包んだ。

 稲造も想像だにしなかったカズの過去であった。

 理助は場を取り持つための口を開く。

 「それは辛い経験だったね。復讐という思いも頷けたよ。でも今は、静養するといい。余計なことを考えず、二人ともね」

 「わかった」


 ──理助は考えを巡らせていた。

 カズの不思議な話は、なんら不思議ではなかったからだ。

 自分も立場は違えど、不思議な話の持ち主であった。その事を話すのはもう少し後にしようと考えた──。


 カズと稲造は数日の間にすっかり回復していった。小さな源泉もあり、湯治も叶った。

 その間も理助は治療を怠る事はなく、いそいそと森に行っては食料の調達や薬の調合に余念がなかった。普段は行かない場所まで出向き、貴重な植物を採取しては、幾重にも薬草を足して慎重に保管していった。

 カズは谷底の山小屋から見上げる空が独特と感じていた。夜は特にだった。

 窪んだ地形にいる為、空気の流れが普段と違い、森の音も反響し心地よく聞こえた。

 カズは口笛を吹いてみた──。

 〝親代わり〟が口ずさんでいて覚えた旋律──。

 自分よりも遥かに達者で、楽器を用いているかのようにカズには聴こえた。

 夜な夜な必死に練習をした事があったが、その都度〝親代わり〟に「うるさい」と言われ止められた。

 この日、久方ぶりに俄仕込にわかじこみの口笛を吹く事が出来た──。

 「か、か、カズ!」

 稲造が呼んでいる。

 「も、もう、すぐ、ゆ、夕餉ゆうげだって」

 「うん──」

 カズは明日出発する事を伝えようと決めた。


 小屋の中では理助が調理をしていた。

 カズは卓を囲んだ時にきちんと伝えようと思い、理助の手伝いを名乗り出た。

 「──いや、ここは大丈夫だから、待っててくれていいよ」

 「わかった」

 カズに遅れて稲造も卓に着くと、カズが囁いた。

 「明日出発しよう」

 「う、うん」

 稲造は戸惑いながらも同意した。

 カズは稲造の戸惑いも理解していた。

 しかし、やはり〝親代わり〟を探す事を諦めるわけにはいかなかった。


 「──今日はきのこがたくさん取れたよ」

 理助が二人の夕食を運びながら言った。

 「実は──」

 カズが言い始めたと同時に理助も言葉を発した。

 「今日あたりがきっと最後の晩餐になると思ってね。話したい事があるんだ」

 カズは先読みされて申し訳なさが込み上げ、稲造は目の前の食事に手を出せずかしこまった。

 「君の両腕の刀から声が聞こえたんだ──」

 理助は席に着き、いつに無い目つきで語り出した。

 「たくさん、人を殺めたんだね。その声が聞こえるんだ、私には──」

 二人とも話の内容が唐突過ぎて口を挟めないでいた。

 「──物に宿る声、〝物鳴り〟と言ってね。それが私には聞こえる。何故かは知らないし、言葉として聞こえる訳じゃないんだ──。感覚として聞こえる。例えば、その刀からは〝絶望〟や〝怨念〟、血の匂いや命が消える感覚が聞こえる。君はどれだけ残酷な体験をしたんだい?」

 「あ、あの、こ、これは──」

 カズは稲造のようにどもった。

 「──私は、それも込みで救いたいと思う」

 「あ、りが、とう」

 まだ二人には真意が分からなかった。

 「彼もとても残酷な身体の持ち主だ──」

 理助は稲造の肩に手を置いた。

 「──たぶんこの先、充分に生きられないだろう。きっと君達は排除される。そんな不安も込みで救いたいと思っている──」

 「は、は、は、はい」

 稲造は緊張で動けなくなっていた。

 カズはここで嗅覚への異変を感じ始め、理助から不穏な空気を察知した。

 「──私は君たちを導けるんだよ。何の不安もなく眠りに着きたくないかい?」

 理助は卓に手を伸ばし、粥皿を手に取った。

 「さあ──」

 稲造の口元に運び、すするように促す。 稲造もあらがう事なく受け入れようとしていた。

 「待って!」

 カズの大声に理助の手も、稲造の口の動きも止まる。

 「何を入れた?」

 「・・・」

 「それ以上手を動かしてみな」

 「・・・何を──」

 理助は構わず右手の粥皿を稲造に押し向けた。

 その微動に即座に反応したカズは右腕内鞘から抜刀し、そのまま矢の如く理助目掛けて放った。

 カズの短刀はまっすぐ理助の右の手の甲から貫いた。剣先は稲造の鼻先で止まっている。

 「あぐっ!」

 苦虫を噛み潰したような表情で溢れた粥皿を見詰める理助は、自分の手を貫く短刀に視線をずらした。

 「やめろ!」

 カズは咄嗟に叫ぶも、理助は食いしばりながら突き刺さった短刀を抜こうとしている。

 「逃げろ!」

 今度は稲造に叫ぶが、稲造は失禁し身動きが取れずにいた。眼前には鬼の形相で理助が睨みを効かせている。

 短刀は抜かれる寸前であり、照準は稲造に他ならない。

 「た、た、た、たす──」

 「──ぐぅぎぎぎぎっ・・・」

 カズは卓を跳ね退けては、今度は左腕外鞘から抜刀しつつ飛び込み、標的を両手首とし、短刀を垂直に切り上げた。奇しくも〝親代わり〟十八番の居合〝龍渦炎りゅうかえん〟を見舞った。

 太刀筋は天へ駆け上るかのように龍を描き、数拍遅れ理助の両手の平も宙を舞っていた。

 そして、稲造は勢いよく後方に倒れ込んだ。

 「うわあああああ!」

 叫び声は理助だった。

 自分の手首から先を見詰め、目を剥きながら声を上げている。おびただしいほどの流血はすぐさま粥の残骸をも飲み込んだ。

 ここでカズは両刀携え構えを取った。

 すでに反撃しようもない有様だが、泣き叫ぶ力がある内はまだ侮れないと踏んだ。

 稲造を引き寄せ、徐々に理助との距離を空ける。

 理助も段々と血の気が失せ、生気が色褪せ始めてきたのが感じ取れた。

 「なんで?・・・」

 カズの投げかけに理助は反応し見やった。

 「・・・なんでだって?」

 声もかすれ、ようやく音になっている状況だった。呼吸も荒くなっている。

 二人は固唾を飲んだ。

 「──君たちで・・・生き抜ける訳・・・ないじゃあないか・・・」

  噴き出ていた血の勢いもかげりを見せ、鼓動も同時に弱まっている。

 「──わたしは・・・苦しみから・・・解放してあげられ・・・るんだ」

 カズは背後の稲造に呟く。

 「毒だ。粥に触れるな、猛毒にまみれてる」

 稲造はその言葉に戦慄を隠せないでいた。

 「稲造、逃げよう」

 「う、う、うん」

 二人は手分けし、手早く支度を進める。

 しばらくすると、置き物のように固まっていた理助から声が漏れた。

 「・・・び・・・びいど、ろ・・・髪・・・飾り・・・」

 「──?」

 カズは反応した。

 項垂れていた理助が再び顔を上げ叫ぶ。

 「髪飾り!聞こえる・・・希望・・・いや、ぐふっ──」

 カズの束ね結い上げている髪飾りを腕差し、血反吐を噴き出した。

 「稲造!行こう!」

 「わ、わ、わかった!」

 二人はそのまま小屋から飛び出し、北へ走り去った。

 理助は炊事場に這いずり行き、くすぶる薪を両腕を使い散乱させた。

 火の粉も飛び散り、開け放たれた扉から吹き込む風を受け、方々で火種が育つ気配がある。そして、無数にある毒草の煙を思い切り吸い込める位置についた。

 理助は両腕の痛みを忘れるため、過去を掘り起こす。


 ──かつて共同体での生活をしていた頃、道具や物から不安や絶望が聞こえてきた。

 人々は日々生きる事だけで、その先の希望が無い事を知った。

 父は健気に周りの人達を治す行為をしていたが、誰も何も治っていなかったと解釈し、父の行為は偽善と理助は捉えていた。

そして、〝死〟を与える事こそが〝救い〟の唯一の手段だと結論付けた。

 理助はそれからあらゆる毒草の知識を得ては調達に向かい、火力乾燥させ細粒化させた。

 最終的には致死量以上のものを共同の水飲み場に撹拌かくはんさせ、人々を全滅させた。

 少なくとも理助にとってはそれが正義であった。

 《絶望しかないのであれば、息の根を止めてあげたい──》理助の根底にある言葉であった。


 理助は今ようやく、自分自身をも救えると感じ、この身を焼かれながら死ぬ決意をした。

 山小屋は瞬く間に業火に包まれ大きな火柱を上げる。

 《──間違ってはいない、間違ってはいない──》

 理助は最期までそう唱えながら絶命していった──。


 稲造は走り去りながら、背後の火の手に気付き、カズも同時に振り返り立ち止まった。

 「り、り、理助さん。な、なんで」

 「・・・」

 カズは複雑な心境を抱えていた。

 真意はどうであれ、命を救ってくれた恩人でもあった。

 本当に殺意があったならば、あの面倒をみてくれた数日間はなんだったのか──。疑問は拭えないままであった。

 そして、稲造を救うために理助の両手を切り落とした感触は後味の悪さを残していた。

 「稲造」

 カズは噛み締めながら応えた。

 「この先、きっと考えもつかない事が起こると思う。あたしが守ると言ったけど、もう無理強いは出来ない。怖かったら、ここで別れよう」

 稲造は見上げながら涙が溢れ出て、カズの顔が良く見えなくなっていた。

 どんな表情で問うているのかが伺い知りたかった。

 「──こ、こ、こわい。こ、怖いよ」

 大粒の涙をこぼしながら声を絞り出す。

 カズはやるせなくて言葉を失っていた。

 「──こ、怖いけど、けど、けども、一緒に旅もし、したい」

 「稲造・・・」

 「ぼ、ぼ、僕も強くなるし!カズの目にだってなれ、なれるし!だ、だ、だ、だから、わ、別れる、な、な、なんて、言わないで!」

 カズは稲造の涙を両手で拭い、視線を下げて言った。

 「わかった、あたしも強くなるよ。だから、もう泣くな」

 涙は止まったが、ひきつけが止まず、次第にカズの表情が見えてきた。

 「う、うん」

 結果的に決意立たせてくれた理助に、カズは心の中で礼を言い、理助の小屋からさらに離れるため再び走り出した。

 そして二人は闇夜の森へ消えて行った──。


 ちょうどその頃、カズ達とは対角の崖の上には五人の人影があった。

 荷車に居座る男が遠くを指差し発言した。

 「──答えはどうやら、あそこにありそうだな・・・火の無い所に煙は立たぬってか──」

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