ママならしないコト
強くて怖い相手も、テルルちゃんがいればきっと大丈夫!私は信じて相手めがけて一直線に向かっていく。
勿論、空を飛んで。広い青空を駆け巡るように進んで行く。
素早いスピードだから、多分相手には居場所なんてバレてないはず。
「テルルちゃん」
合図代わりに声をかけた。
準備OKを指で示したテルルちゃん、彼女が歌うタイミングと同時に私は敵へと突撃しに向かった。
*
どこだ、どこからあいつらはやってくるんだ?速すぎてとても目では追えなかった。
でも絶対この戦いに負けてはいけないんだ。
でないと‥でないと彼女が悲しむ。
俺の娘、セレナーデとルーシッドのためにも俺は勝たないといけない。
シャルロックを売り捌いて生活を楽にしてみせるんだ。シャルロックはさぞ高級品らしい、よく知らないが何やら不思議な能力が使えるんだ。
さっきの少女も雷のような特殊能力を使っていた。
でも、勝てた。だから
これさえあれば、あいつらなんて一瞬で倒せる。その、筈だった。
*
「ぐっ!?」
ダメージを与えれたみたい。
「テルルちゃん、このまま行くよ!」
「りょーかい!」
耳を塞ぎ始める敵にテルルちゃんは変わらず歌を歌った。
「シャルロックを返して。シャルロックは代々伝わる大切なものなんだ」テルルちゃんはマイクを静かに下ろして、説得し始める‥だけど。
「煩い!こっちの事情も知らない癖して、勝手にごちゃごちゃ言うんじゃねえ」と言ってテルルちゃんに攻撃を仕掛けようとしていた
「テルルちゃん危ないっ!」
敵の手首を掴み、私はその手を振り払った。
「大丈夫!?」
「‥なんとかね」
テルルちゃんに傷が無いみたいで良かった。と、安心しているのも束の間
私は直ぐに敵へと向き直った。
「もう許さないから‥!」
テルルちゃんを傷つけようとするなんて、人の善意の気持ちを無駄にしようとするなんて!
森谷咲ちゃんを傷つけたことでも既に怒っているのに‥!
「覚悟しておいて!」
「かかってくればいいさ、できるもんならな」
挑発するような、そんな雰囲気。近づくのは罠かもしれないから、これに乗ってはいけない。
そんな事くらい、私にも分かっていた。だから、大人しく遠距離で攻撃する事にした。
「奈々!」
そう思っていたら、壁の近くで休んでいた咲ちゃんが声をかけてきた。
「咲ちゃん!?もう大丈夫なの?」
「ええ、少しくらいなら平気よ。それより、私も戦いに参加させて。手助けがしたいの」
そういうことならと、今の状況を彼女に説明して協力してもらった。
「なるほどね。様子見の為に遠距離で攻撃したいってことかしら!それなら私に任せなさい」
ふふん、と鼻を鳴らして彼女は言った。
テルルちゃんにも、様子を見て攻撃する事を説明しなくちゃ。
「ねえ、テルルちゃん」
咲ちゃんのタイミングに合わせて、攻撃を仕掛けるように彼女に伝えた。
「‥わかった。やってみる」
上手く行くかなんて分かんないけど、今は信じてみよう。そう決意した
*
敵が油断したその瞬間、私は合図で示した。
「今だよ!」
私の合図に基づき、二人は攻撃の態勢になった。
二人の息ぴったりな攻撃が一気に敵へと襲いかかって行く。
敵は攻撃を仕掛けようとしたが、遠すぎて炎が届いていなかった。
「‥こんなので‥終わると思うなよ‥!」
咲ちゃんの雷攻撃とテルルちゃんの歌攻撃を同時に喰らった敵はもうボロボロになっていた。
「‥!」
敵のシャルロックがみるみるうちに黒く染まっていくのがわかった。
「‥っ奈々、気をつけたほうがいいかも」
テルルちゃんがそう警告してくれたので、私は警戒して後ろへと下がった。
(何か‥とんでもないことが起きるかも‥)
白うさぎのメリー、魔法少女ドリーミィ、蜘蛛の女などとは全然比べ物にならないくらい。
真っ黒で暗い、色褪せているそんな色。オーラが彼の周りを囲むようにしてできていた。もちろんその色も、真っ黒
「喰らえ!」
その言葉が聞こえたと同時に、私達全員が壁方向まで吹き飛ばされていた。
「っ‥!」
急に力が強くなった‥?どういうことなの。
「‥みんな!生きてる?」
私は言った。
「なんとか‥」
二人はそう言った、こっちのシャルロックの力もまだまだ弱くないようだ。
私達は立ち上がった。きっと、まだ痛いし辛い。
でもここで諦めてしまったら叶うものも叶わない。
私達にはまだ、やるべき事がある。だから、だから
「えいっ!」
思いっきり敵に向かって蹴った。効くかなんて、ちっともわからないけれど。
「そんな程度で効くと思っているのか?」
さっきまでには無かった余裕そうな表情。
さっきほどまでの威力ではなくても、また吹き飛ばされた。
「っ」
勝てっこない無理ゲーだとしても、私は諦めない。
「喰らいなさい!」
咲ちゃんが雷攻撃を仕掛ける、だけど。敵はバリアを作って雷攻撃を防ぐどころか、反射させた__
雷は咲ちゃんの方へ向かっていき、そして_
「ぐ‥」
咲ちゃんの身体に直撃してしまっていた。
「咲ちゃん!?」
ひ、酷すぎる。あんな目に遭わすなんて‥
シャルロックの力で、なんとか生きてるみたいではあるけれど‥あんな風にしていいわけがない。
テルルちゃんだけでも、どうにか頑張って‥
私はもう復帰出来そうになかった。
「二人の分まで頑張るよ。」
テルルちゃんはひたすら攻撃を避けた。隙を狙って攻撃も仕掛けようとしていたけれど、叶わなかった。
でも、ずっと格闘していたらいずれか体力も尽きてしまう。
「‥っ!?」
テルルちゃんが危険な目に遭いそうになった、その瞬間のことだった_
「もう‥パパ辞めて!」
突如として二人の間に割って入っていったのは私でも、咲ちゃんでもなくて
_カウガールのバーガーマンだった。
「え、今パパって言った‥?」
目を丸くして驚いていたのはテルルちゃんだった。
バーガーマンと炎使いの彼にそんな歳の差があるように思えなかったのだろう。
でも、バーガーマンが言いたかったのはどうやらそういうことじゃないらしく。
「すまない‥自身の妻にさえ迷惑をかけていたとは思わなかったのだ」
彼はそう答えた。
「妻って‥ことは」
テルルちゃんが言葉を紡ぐ。
「バーガーマンの旦那さんってこの人_!?」
私は驚いて続きを喋った。もちろん、炎使いの敵を指差して。
「どうしてここまでするのよ!」
バーガーマンは問い詰めた。
「我が娘のために、生活費を稼がないといけないのだ。」
「セレナーデとルーシッドは大丈夫よ。生活費だってなんとかしてみせるわ」
バーガーマンの娘さんってセレナーデとルーシッドなの!?
混乱する私達を置いてけぼりにして、バーガーマンは続きを喋る。
「あなたはもう、良いのよ」
「もうだって、″本当のあなた″はもうこの世に居ないんだから」
「そう決まってしまったの。″この子達″に続きという未来を見せたくないのでしょうけれど、もういいわ」
「ありがとう、パパ」
そう言って容赦無くバーガーマンは彼に向かって強力な一撃を喰らわせた。
呆気なくその場に倒れる炎使いの敵。
「‥そんな!?旦那さんをあんなにも容赦無く、どうして!」私は驚き、恐怖した。
「″ニセモノ″だから。と言ったら変かしら」
淡々とそう告げるバーガーマン。
「″ニセモノ″って」
ニセモノとか、そんなのついて行けるわけない。
「さあ、始めましょう?」
一歩、私が後ろへ下がろうとすると
「…クダランコトヲ…ニゲナイデ!!」
あの、前に見た蜘蛛の女のようなフリをして彼女は台詞を言うのだった_
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