幽閉されし奈々を救え!

数時間前。迷宮に先についていた私、百瀬奈々は銀髪の妹さんと一緒だった。姉を探すために来たは良いものの迷宮は本当に迷路そのものだった。


(どこまであるの?)


探しても、探してもキリがない。出口の光なんて恐ろしいくらいかけらも見えない。それが、常に不安だったけれど。


銀髪の少女をどうしても守らなければならなかったから、少女のお姉さんを意地でも見つけないといけなかったから。だから、歩いた。


迷っても、迷っても。途方に暮れても

ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと歩き続けて。ようやく、私たちは見つけた。


牢屋に閉じ込められた子供達と、牢屋の外で清々しいまでに笑顔なお姉さんの姿が__


「見つけた!」

私は彼女を見つけるなり言った。


「どうして来たの?」

落ち着いた素振りで、でもどこか哀しげな空気を纏う彼女はそう言った。


「どうしてって、妹さん…心配してたんだよ!」

私はそう言った。


「心配…何で?だってママ達の事、嫌いでしょ?」

あっさりと彼女は言った。


「嫌いって、あんなに楽しそうだったのに?」

私がそう言うと、隣にいた妹さんはお姉さんの言葉を聞いて頷いた。


「そうだよ、嫌い。もう、″あの時″のような幸せは起こり得ない。お母さんだって、もう帰ってこない」


あの時って何?だってこの少女達の年齢なんてまだ幼くて_


「まだわかんないって顔してるわね」

突然、お姉さんはそう言った。


「答え合わせ、とでもしましょうか。」

一拍、彼女は置いて










「改めて紹介するわ。私はセレナーデ、こっちがルーシッドよ」と、名乗るのだった。



「奈々はどこなのかな…」

当てもなく奈々の行方を探している私こと

テルル。途方に暮れていた時_


「あら…貴方も人探し?」

そう言って声をかけて来たのは、カウガールであるバーガーマンだった。


「バーガーマン!?奈々が偵察してくれてた筈じゃ…」そう言う私


「その名はやめて。もうそんなのダサいから」

そう言うバーガーマン。


「…それで、話を戻すけど。貴方も人探しをしていたようね?私は自分の娘達を探しているのだけれど」娘という言葉を聞き、驚く私。


「娘?それって一体…いや、それよりも奈々の居場所を知っているんですか?」焦りつつも、私は彼女に問いただした。


「そうね、私の予測が合っているなら…知っているわ。案内してあげる」

そう言ってバーガーマンに誘われるのだった。


「はぁ…はぁ」

迷宮につき、私ことテルルはひたすら歩き続けていた。


辿りつかないほど難解な迷宮で幾つもの″罠″を掻い潜って。


まるで私に″帰れ″ ″来るな″と意思を示すくらい、罠の数は想像を絶するほどだった。


「…っ!」

突如壁から矢が放たれる。私は必死に避け続けた。


(駄目だ…こんな所で止まってちゃ)

咲と約束したんだ。絶対戻ってくるって_


「いやだ…絶対帰るもんか」

擦り減る精神と戦いながら、私は必死に心の中で唱えた。


辛くても、悲しくてもどんな時でも、奈々が側にいたから頑張れた_それが帰ってこないなんて。


「奈々!絶対待っててね…!絶対絶対助けに行くから」

私はひたすら歩き続ける。迷宮を駆け回る。奈々を救うためなら_



「セレナーデ…って」

私は絶句した。


「サーカスが初対面だったかしら?直接また会えて嬉しいわ、奈々」ふふふと、不気味に笑うセレナーデ。


「あら、そんなに苦しそうな顔をしないで。あなたも″救ってあげる″から」救うって、どういうこと。


私が尋ねようとした時、髪飾りとしてつけていたシャルロックがルーシッドによって奪われた。


「返して!」

それが無いと、力を発揮できない。


「奈々、ごめんなさい。酷いことはしないわ、目的のためなの。」優しそうに言うセレナーデだったけど、彼女の言葉を信用ならなかった。


「目的って…きゃっ!」

牢屋に閉じ込められた私は彼女を見つめていた。


「悪い大人に可愛い子供達を預けて置けない。私達が管理するの_」


何されるのかわからなくって、私は震えていた。


「大丈夫、痛い様にはしないわ」

牢屋越しに頭を優しく撫でられる。


「私とルーシッドなら、きちんと管理してあげられるわ。だから、″いい子″でいるのよ?」

やだ、怖い、助けて…助けてテルルちゃん。


(助けて…テルルちゃん!)


「その話!全部聞かせてもらったよ」

扉を思いっきり開けて、彼女は登場した。


「テルルちゃん!」

私は彼女を見るなり、叫んだ。


「最低すぎるよ、セレナーデ。救うだって?救うと言っておきながら無理矢理人を閉じ込めるだなんて!」テルルちゃんはそう言って、セレナーデを睨んだ。


「どうやって来たのよ!罠は無数に仕掛けた筈。奈々とルーシッドだけがここに辿り着く様にしていた筈なのに!」セレナーデは動揺を隠せない。


「ずっと変だと思ったよ。迷路なのに、出口がなかった。それで…若干だけど色が違う壁を触ってみた。そしたら、からくり屋敷の如く壁が回転したんだ。」テルルちゃんはそう言って事情を説明してくれた。


「…っ!」

セレナーデは想定していない出来事の様で頭を抱える。 


「奈々を返して。さもないと…!」

テルルちゃんはこれまでにみたことない雰囲気だった。手を硬く握り締め、怒っていた。


「やろうって言うの?私に勝てるとでも思っているのかしら」不敵なほどの笑みを浮かべて、彼女は言った。


「っ!蓮のこと…私の弟を傷つけたこと、忘れてないんだからね」テルルちゃんは静かにそう言った。


テルルちゃんに弟がいるなんてちっとも知らなかったけれど、きっと何か過去にあったのかな…。


「ふふ、面白いわね。過去の因縁ってやつかしら」セレナーデはそう言って嘲笑した。


「ふさげないで!これは遊びじゃない」

テルルちゃんはとうとう我慢の限界の様だった。


「これ以上私の大切な人を傷つけようとするなら、許さない」

テルルちゃんはマイクをサッと取り出した。


「あら、そんな攻撃効くと思って?」

セレナーデはテルルちゃんが歌う前に攻撃を繰り出した。


「っ…」

苦しそうなテルルちゃん…。


「負けないで!」

私は精一杯大声を出して言った。


「奈々…!」

テルルちゃんは立ち上がった。


「絶対絶対!テルルちゃんが勝つって信じてるから」私は何度だって伝える、テルルちゃんを信じてるって。


「ありがとう…奈々!」

テルルちゃんはセレナーデに向き直った。


「〜♪」

テルルちゃんは歌った。テルルちゃんの声は力強くも人を癒すとても綺麗な声だった。


「っ!」

セレナーデは効いたようだった。近くにいたルーシッドは私のシャルロックを持った状態で、何をすべきか戸惑っていた。


セレナーデは全てを察した様子で逃げた。


「待て!!」

テルルちゃんは必死に追いかけるが、突然のワープ技をセレナーデが使って来たことに驚きを隠せなかった。


テルルちゃんはルーシッドが持っていた私のシャルロックを回収してくれたが、その直後にセレナーデとルーシッドは闇の中に消えていった。


「…くっ」

悔しそうな表情をしながらも、テルルちゃんは私にシャルロックを渡してくれた。


「すぐ開けるね!」

近くにあった鍵で扉を開けてくれた。


「ありがとうテルルちゃん!」

私は涙目になりつつもテルルちゃんを抱きしめた。


「わっ…。こちらこそだよ!いつも笑顔をくれてありがとう」数秒間があった後、テルルちゃんは私に感謝した。


「テルルちゃんが居てくれて良かった!」

私は彼女を精一杯抱きしめた。


「ていうかテルルちゃんの弟さんって蓮君って言うんだね!素敵_」私が話を切り出すとテルルちゃんは困ったように


「…ごめん。もっと話したいけど咲を待たせてるんだ」と言うのだった。  



事情を聞いて私達は大急ぎで咲ちゃんの元へと向かった。助けられていない子供達は仕方ないが後で救うことになった。


「大丈夫だった!咲」

テルルちゃんは咲の近くまで駆け寄る。

 

「ええ…なんとかね」

ぜえぜえと息を切らして、彼女は言った。


「近くにあった噴水に慌てて飛び込んだの。なんとか消えたからいいけれど…」辺りを見渡す咲ちゃん。


「ねえ、あの人はどこ?」

炎を操る敵はどこへ行ってしまったのかと、私は疑問を問いかけた。


「まだ近くにいるでしょうね。本当は私一人でも倒したかったけど、倒しきれなかったわ」

そう言って、ゆっくりと立ち上がる咲ちゃん。


「無理しなくていいよ」

テルルちゃんは優しく咲の背中をさすった。


「_そこにいるのは、お前らか?」

恐ろしい形相で来たのは炎の使い手。


「テルルちゃん、いくよ!」

咲ちゃんを離れた所に待機させ、私は言った。


「うん!」

テルルちゃんも頷き、戦いが幕を開けるのだった。

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