苦戦する味方と迷宮
「よしっ帰ったわね!」
家族達が射的から帰りガッツポーズを決める咲ちゃん。
「さっそく挑戦する?」
テルルちゃんはそう話しかけた。咲ちゃんはこくこくと頷き、射的の店員さんにもう一度説得することにした。
「射的に挑戦させてください!」
店員さんは納得がいっていない様子。
「ダメですか!」
さっきの子達は挑戦してたというのに、と不服そうな咲ちゃん。
「シャルロックは俺のものだ!」
譲らない店員さん。あくまでもこの景品は非売品で取らす気は無いとのこと。
「でも、これはテルルちゃんの物です!」
私は思わず身を乗り出し、そう言ってしまった。
「はあ?さっきも言った通り、これは俺が見つけた物なんだよ!」
埒が開かない。そう思った咲ちゃんは私を見てから
「奈々はバーガーマンがここまで追って来てないから見張っておいて!ここは私達がなんとかするわ」
そう言って咲ちゃんは店員さんに向き直った。
「わかった、咲ちゃんの言う通りだね。ちょっと見てくる!」
私はそう言って、そこから離れるのだった。
*
「いない、よね…?」
不安がありつつもバレない様に身を潜め。そっと辺りを見回した。
空を飛ぼうとも考えたが、もしバレたら一大事で、居場所が特定されることをわかっていたのでやめた。
サーカスの衣装は赤と青であまりに目立つのでシャルロックを外し、制服姿になった。
この形態になると力は落ち、能力も引き出せないのであまりしたくなかったけれど。
ハッピーラッキーエリアから離れた森の茂みでそっと隠れて見ていた。その時だった
「ねえ」
さっき射的で猫の魔法少女のお面を手に入れた白髪の少女が話しかけて来た。
「何してるの?」
興味本位で彼女は少し目を輝かせながら、そう言った。
″追われてる″って言っても、幼い子に何かできるだろうか。私は不安になった。
「ううん、なんでも無いよ。お母さんとお父さんの所に戻ったら?」
私がそう言うと、少しうーんと言った表情になる白髪の少女。
「お姉ちゃん、どこいるかわかんなくなっちゃった」どうやら、彼女のお姉さんは迷子らしい。
「お姉ちゃん、一緒に探してくれる?」
そう頼まれてしまっては断れない。そういう性格をしている私は頷き、彼女と共に探すことにした。
「お姉さん、どこにいるかわかるかな?」
私は少女にそう話しかけた。
「いつも…あの森に行く」
指を指して彼女は言った。
「でも、あの森怖いの。迷宮ラビリンスってゆうんだけれど…」
彼女は少し怯えて言った。迷宮ラビリンスという名前なのだからそこは迷路になっているのだろうと私は解釈した。
「私も一緒だから怖くないよ」
私はそう言い、彼女の心を落ち着かせるようなだめた。
*
「わかりました。戦うので、それなら良いですよね?」咲ちゃんは店員さんに向かってそう言った。
好奇心で戦いに挑もうとする咲ちゃんに不安気になる私ことテルルは彼女の耳元でこう囁いた。「無理しないでよ?」
「あったりまえよ」
咲ちゃんはそう返し、店員さんを睨みつけた。
「ふん、ようやくやる気になったか」
店員さんはそう言って、射的に置かれていたシャルロックを取った。そして、自分の剣に装備した。
「…任せなさい、テルル。ここで私が倒してみせるわ!」咲ちゃんはそう言って戦う体勢を整える。
「こっちから行くわよ!」
覚悟を決めた彼女は風のように素早く走って行く。
そして、手からビームを彼女は創り出し敵めがけて繰り出した。
「喰らいなさい!!電気ショック‼︎」
彼女の雷攻撃を受けた敵は少し怯んだがすぐに立ち上がった。
「咲さん、ううん…咲。私も協力する」
そう言って敵の背後に回る私。
「テルル…?これくらい、私一人でも倒せるわ!」
そう楽々と言う咲とは裏腹に私は何かを察した様子で
「ううん、相手は本気をまだ出してない」
私はそう言い、敵を見つめた。
「チッ、気がつきやがったか」
彼はそう言って、周りからパーティクルのようなオーラを纏った。キラキラとした感じとは程遠く、禍々しくて触れたら駄目そうな感じである。
「君はどんな能力をしているの…」
少し疑ったようなそんな顔をして私は言う。
「はっ、今に見てろ」
火山のように真っ赤に燃える火を一心に放ってくる。避けなきゃ、そう思った時
「危ない!!」
炎が、彼の攻撃が咲に直撃した。彼女が必死に身を削って、私を守ったのだ。
「馬鹿!何してんのさ」
私はそう言って、背中姿の彼女を見つめる。
「それはこっちの台詞よ。」
咲は若干振り返ってそう言った。何馬鹿げてるんだと、そう言いたそうにして
「ごめん…私のせいで」
落ち込む私。
「ねぇテルル…頼みがあるの」
そう言う咲。何さ…急に…今更
「奈々を探してきてくれないかしら。ここは私一人で何とかするわ…だから!!」
そう必死な顔で伝えてくる咲。
「わかった。わかったよ!!」
奈々を…助けるよ。大切な大切な存在だし、散々助けられてきちゃったし…!!助けない選択肢なんか、無いよ。
「…急いで戻ってくるから!!絶対絶対生きててよ!」私はそう言って、足早に奈々を探すのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます