謎の魔法少女と廻るコーヒーカップ
次に私達が向かったのはコーヒーカップの場所だった。そこには1人の少女が待ち構えていた。
その少女は魔法少女のような服装を着ており、
ステッキにはシャルロックが嵌めるようにしてあった。
「あの…!そのシャルロックはテルルちゃんの物なんです。返してくれませんか」
私がそう、魔法少女の姿をした子に言うと彼女は笑って
「これー?これはわらわの物じゃ!あのお方、
セレナーデ様が下さったんじゃよ」
セレナーデ。それが黒髪のお姉さんの名前だろうか、サーカスに来たお客さんたちを脅かせて私達をここに閉じ込めた張本人だ。
「…どうやら、話を聞いてはくれなそうだね」
テルルちゃんはそう言い切り、彼女こと魔法少女の子に向き直った。
「シャルロック、これを返してほしければわらわであるドリーミィと戦い。勝つことじゃな」
ドリーミィと名乗る魔法少女は杖をこちらへと翳した。
「…逃げよう!テルルちゃん」
私は彼女にそう呼びかけようと彼女を見る
が、テルルちゃんはドリーミィの放つキラキラとした不思議な魔法をかけられたのか倒れてしまった。
*
目が覚めるとテルルは自宅へと来ていた。
「ここどこ…奈々は?」
テルルは辺りを見渡すが、奈々の姿はない。
カレンダーの日付をふと見やると、現在ではなかった。そこには過去の日付が書いてあった。
しかも
「この日付は…っ!?」
テルルは驚き、冷静に洗面台へと向かった。
そこの鏡には茶髪だった頃の昔の自分がいた。
「…じゃあ弟は」
テルルは何かに希望を抱くようにしてサーカスのテントへと向かった。
*
「テルルちゃん!?しっかりして」
すやすやと気持ちよさそうに寝ている彼女を見つめる私
きっと、これはドリーミィの仕業だろう。私はドリーミィの方をじっと見つめ、様子を伺う。
ドリーミィはけらけら笑いながら魔法の杖を再びこちらへ翳す。
「っ…やめて!」
私は空を軽々と飛び、ドリーミィの攻撃を避けた。
「いつまでそうしていられるかのう?」
彼女の言葉に逆らうように、私は必死に避けた。
「いつまでも…だよ!」
私はそう言い張って、ドリーミィを睨んだような目で見つめる。
正直なところいつまでもは流石に無理がある。
ドリーミィは魔法で攻撃をすることが可能だが、私には空を飛んで避ける能力しかない。
攻撃手段が一切として無い私にテルルちゃんがいなくなった以上、正直いって状況は厳しい。
でもテルルちゃんが夢から目覚めるまでの間に私が出来ることはこれぐらいしかない。
耐え切ってみせる! ーーそう思った時
「…これでもくらうんじゃな!」
ドリーミィは突如としてコーヒーカップを投げてきた。勿論、ただのコーヒーカップではない。
にこやかな表情で可愛らしい顔が表面に描かれているのとは裏腹に、コーヒーカップの中身には不気味な目が二つ、そして舌があった。絵では無い、こっちが″本体″だ。そう思った直後
「っ…」
私はコーヒーカップに無惨にも食われてしまっていた。
*
サーカスへやってくると、テルルの目には1人の少年と1人の黒髪の女性が映った。
「…待て!」
テルルは黒髪の女性を見つめ、そう言った。黒髪の女性は虚ろな表情をしており、彼女は少年に見るからに襲いかかっていた。
「…邪魔しないでくれるかしら?」
彼女はそう、静かに言った。そして
「これさえ手に入れば、私は…!!私は!」
と彼女は声高にして強く叫んだ。
″これ″というのはきっとシャルロックのことだろう、テルルはそう思った。
「どうしてこんなことをするの?どうしてシャルロックが欲しいの?」
テルルは彼女に向かって尋ねた。
彼女は声を荒げ、ただ
「うるさい!」としか言わなかった。
彼女はここのサーカスこと通称″シャルロックサーカス″にあるシャルロックをすべて盗んで逃亡してしまった。
目的もわからぬまま、傷つき、ボロボロになった彼をテルルは呆然と見ていることしかできなくて
「…ごめんね、″お姉ちゃん″なのに情けなくて」
テルルは彼に言った。
「姉ちゃんはすげぇよ。シャルロックも無しで来るなんてさ」
テルルの弟である、小桜蓮はそう言ってくれた。シャルロックという能力が付与される物が無きゃ私は余裕で負けるだろう。
でも、間一髪で彼のシャルロックは奪われなくて良かった。
結局、彼は現在と同じ結末のように入院してしまうのだろうが…。
テルルこと私は″小桜花蓮″で蓮の姉。今はテルルとして彼から代わりに授かったシャルロックを使って彼女らによってボロボロになってしまった廃サーカスを取り戻すために存在していた。
私は自分の目的を再確認して″彼女″がセレナーデだと言うことも理解した
その瞬間世界は壊れて、私はそこから目を覚ますのだった。
*
「誰かー!」
百瀬奈々は一生懸命に叫んでいた。
口から抜け出すために空を必死に飛ぶ。
なんとか必死に飛び続けることで抜け出せてよかった。歯でギタギタに噛まれていたらきっと
…。
想像するだけで恐ろしかった、私は考えないようにして地面に着地した。
「…テルルちゃん!?」
私は目を開けて立ちあがろうとしている彼女を見て、驚く。
「待たせちゃってごめんね」
テルルちゃんは心配するような瞳で私を見つめた。
「…大変だったよ!空飛ぶ能力しかないってキツイね」
私はぜーぜーと息をついた。
「こっちも色々あってさ」
彼女はそう言って、ドリーミィを見る前にコーヒーカップの化け物を見てゾッとする。
「何あれ!?」
「気をつけたほうがいいよー」
私はそう言って、さっき私を食べた化け物を見た。
「まずあっち倒したほうがいいね…」
テルルちゃんはやや嫌そうな表情をしながらも、マイクを手にした。
私はというと、食われないように気をつけながらも滑空し近づいた。
「えい!」
勢いよくコーヒーカップの外側を蹴った。
口を大きく開けて足はないものの皿と共にくるくる回って近づく化け物を前にして恐怖心があるが、すっと離れることができた。
「テルルちゃん!任せたよ!」
テルルちゃんに向かってそう私は声を響かせた。
「…わかった!」
マイクを手にした彼女は恐怖心で足が震えていた。
でも決意したのか彼女は歌い始める。
彼女が歌った瞬間歌声によりコーヒーカップの化け物は立ち止まり動かなくなった。
そして、コーヒーカップはどんどんひび割れていく。
その様子を見たドリーミィは泣き叫んだ。
遠くだったからいまいち聞こえなかったけれど
「ごめんなさい」そう言っていた気がする。
何に対して謝っているのかさっぱりわからなかった。
ドリーミィは立ち尽くしてやがて座り込み、上の空で謝り続けていた。まるで私達なんか居ないみたいに
ゆっくり私達は警戒しながらも近づいていく、
でもドリーミィは攻撃する素振りさえ見せない。
コーヒーカップの破片があちこちへ飛び散った。可愛く描かれていた偽の顔も無惨な姿へと変化していた。
急に攻撃しない彼女に不安がる私達。
「…どうしようか」
こちらへ見るテルルちゃん。
「…わからない」
私はテルルちゃんを見た。
お互いがお互いを見つめたその時、ドリーミィが急に立ち上がって杖を持ち私達の方向めがけて攻撃を繰り出す。
私達はすっと避けた。
「大丈夫だよ、きっと」
不気味なほど笑顔でドリーミィは呟くように言った。
そして
「魔法少女がきっとたすけてくれるよ!」
その様子は純粋な女児そのものであのドリーミィはそこにはいなかった。
″意味がわからない″私達はそう考えざる終えなくて、彼女をただ様子を見るようにして見つめた。
ドリーミィ?は恐ろしいほどの笑顔で真っ向から向かってくる。
「そっちがその気なら!」
テルルちゃんはそっとドリーミィから離れる。
「こっちだよ!」
私は囮になり、ドリーミィを誘導した。その隙にテルルちゃんがドリーミィの背後に回って攻撃する予定だ。
あっさりとドリーミィは私の方向に近づいてきた。
ドリーミィは後ろを見る素振りさえ見せない。
きっとさっき戦ってたドリーミィならそんな考えしないだろう。
ドリーミィは魔法を私に放つが私はスッと飛んで避けた。
ドリーミィの攻撃なんて、今なら軽々とかわせてしまう。
きっとこれは私が強くなったんじゃない、ドリーミィの力が何故かわからないけれど弱くなったんだ。私はそう解釈して誘き寄せ続けた。
私が壁まで誘き寄せた。その時、テルルちゃんは背後からドリーミィを蹴った。
ドリーミィは呆気なく倒れる。
「…まだ不安なのね、そうよね…私も不安よ」
ドリーミィはどこか寂しげな表情をして言った。
そんなドリーミィなんてお構いなしに、テルルちゃんはマイクを手にして歌った。
ドリーミィは悲鳴をあげた。可哀想とも思ったけれど、彼女は私をコーヒーカップの化け物の胃の中に噛み砕いて取り込もうとしたし寝させられて無防備のまま食われたとしたら。
そう考えるとゾッとして仕方がない。
「ごめんなさいごめんなさい…お…か」
彼女は何かを言おうとしたがそれを聞くまでもなく辺りは爆発した。
″おか″の続きは何を言おうとしていたのだろうか?それは知る日は来るのだろうか。
それはわからない。
でも、何かあるんじゃないかって気がして仕方がなかった。
私達はそう考えながら次へと進むのだった。
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