爆薬の使い手

「あなたは…昨日のおさげの子?」

私はスピーカーに向かって言った。



『そうだよ〜!』


煙幕を周囲に放ち、それと同時に人々を眠らせたのは確かに彼女だ。



「何者なの?」

私は彼女に向かって問いかけた。



『あたし?あたしはルーシッド、この遊園地に貴方達を閉じ込めたのはあたし達だよっ』


フランクなテンションで話す彼女だったが、普通に人を監禁してしまっているので明らかに駄目なことをしているのは私でも分かった。



「どうしてこんなことするの?」

テルルちゃんはそう問い詰めるように言った。


『お姉様のためだもの』

その後、何度も問いかけたが彼女はそれの一点張りだった。


「お姉様はどうしてそんな事をしたの?」

私は優しく問いかけた。


『それはあたしの口からは言えない!お姉様に直接聞いてみたら?』




『あ、そうそう。この遊園地にあるシャルロックを集めて、それからサーカスエリアにきて!お姉様とあたしが待っているからねっ』


彼女との会話はそれで終わった。向こうから一方的に話しかけてきて、切ったのだ。



会話終了後、ねえとテルルに私は声をかけた。

「…シャルロックって何?」



「シャルロックっていうのは」

そう言ってテルルちゃんは髪に付けていた月の形のペアピンを取り


「これの事、昨日お守りとして渡したよね?」

私の髪に付いていたシャルロックこと、月の形のペアピンを指差した。



「シャルロック。これが幾つもあるの?」

そう尋ねるとテルルちゃんは頷き


「…これは代々私の世代で受け継がれきたお守りなんだ。そしてこのシャルロックには、不思議な力があってね。身につけると能力が付与される」


「そう、君が能力を付与されて空を飛べるようになったみたいに」と言った。

  


「どうしてこんな所にそのシャルロックがあるの、もしかしてサーカスの人達が関係しているの?」

私がそう尋ねると、テルルちゃんは悲しそうに頷く。



「うん。彼女達によって、シャルロックという大切なお守りが奪われたんだ」

彼女はそう言って、自分のシャルロックを見つめた。


彼女の持っていたシャルロックは美しい紫色をしていた。



「じゃあ、なんとかして取り返さなくちゃね」

私がそういうと、テルルちゃんはそうだねと言った。



「ルーシッドって子が言うには、この遊園地にあるシャルロックを集めろって事だけど…」

私は少し悩むそぶりを見せた。


「どこにあるかって話だよね。どこかに手掛かりはないかまず探してみよう?」

テルルちゃんの後をついて、私達は遊園地内を軽く探索した。



「これじゃないかな」

テルルちゃんはそう言って、近くの机に置いてあったマップを拾い上げた。


「…なになに?」


私はテルルちゃんが持っているマップを横から覗き込んだ。そこには


ミュージアムエリア、メルヘンエリア、ゴーストタウンエリア、ハッピー・ラッキーエリア、サーカスエリアの五つが書いてあった。



「ここにあるってこと?」

私はそう言った。テルルちゃんは頷き、まずはそこに行こうと言ってくれた。


「…どこに行こっか?」

私がそう言うと、テルルちゃんは地図を確認して




「メルヘンエリアが1番近いみたいだよ」

と言った。


そうして私達はまず、メルヘンエリアの攻略に向けて足を運ぶのだった。





メルヘンエリアに到着すると、そこにはお菓子でできたようなコーヒーカップ、ケーキでできたようなメリーゴーランドがあった。白馬の馬は生クリームだろうか、みていて見ていて食べたくなってしまった。


そこには少女が1人立っていた。彼女は丁寧にそちらへお辞儀すると歩み寄ってきた。


「わたくしは白うさぎのメリーといいます」

メリーと名乗る彼女は美少女ととれるような姿をしておりまさに容姿端麗だった。


コウモリヘアというべきだろうか、彼女は二つ結びのような独特な髪型をしていた。


手には旗、髪にはユニコーンのヘアピンをしていた。



辺りを見渡すがシャルロックはどこにあるのか見えなかった。

 


「シャルロックどこにあるか知らない?」

私はそう気さくに彼女へと話しかけた。


「知っていますが、そのことは言えません」

彼女は固く口を紡いだ。



「ねえテルルちゃんどうする?」

私はこっそりとテルルちゃんに耳打ちした。


「…きっとここに一つはあると思う。もう少し探してみよう」テルルちゃんの言葉を聞いて、私達はメリーゴーランドから立ち去り、別の場所へ向かおうとした。


その時だったーー


「待ちなさい。」

彼女は冷徹にそう言い放つ。


「……!」

私はハッとして彼女の瞳を見た。



「行かせないわ!貴方達、シャルロックを持っているんでしょう?」

彼女は私達にそう言い、足早に近づいてきた。


「…逃げるよテルルちゃん!」

私はテルルちゃんの腕を引っ張って、走った。


「…待って」

テルルちゃんは私が走るのを引き止めた。


「え?」

私は驚き、彼女ことテルルちゃんの目を見た。


「…よく見て。彼女、シャルロックを持ってる」

テルルちゃんはそう言ってメリーゴーランドにある一つのユニコーンを指差した。


「…え。本当だ」

私はユニコーンを見つめ、一目散に走った。


「全く、早いんだから」

テルルは呆れ顔で百瀬奈々を見守るのだった。



私は黒色をしたシャルロックをユニコーンから取った。

「よしっゲット!」


瞬間、シャルロックから黒い煙のようなものが出た。


「げほっげほっ」

私はその場で咳き込んだ。


「危ない!」

テルルちゃんの叫び声が聞こえるが、メリーはそれを止めるように立ちはばかる。


「近づかないで」 

メリーは私の方向に一直線に向かってきて、

私の持っていた黒色のシャルロックを奪い去った。



「…あ!シャルロックが」

私がそういうと彼女は静かに微笑んで


「…これが欲しければわたくしと戦いなさい?でも、もし貴方達が負けたら貴方達のシャルロックを貰うわ」と言った。


「…受けて立つよ!」

テルルちゃんはそう言った。



メリーはその話を聞いた後、すぐにメリーゴーランドのユニコーンに乗って空へ行った。


私達も焦ってユニコーンへと続いて乗る。


「…待てー!私のシャルロックを返して!」

テルルちゃんはそう言って、向かう。


「テルルちゃんの、返してあげて!」

私はそういうが彼女は聞かない。



「返してほしければ、私と戦いなさいと言ったはず」彼女はそう言ってこちらへ爆弾を投げてきた。


「…っ!」

テルルちゃんのユニコーンは爆弾により真っ逆さまに落下していく。


「テルルちゃん!」

私はそう叫んで、テルルちゃんの手を掴む。


「…このままじゃ、奈々。君も落ちるよ」

テルルちゃんの警告を無視して、私はその手を離さなかった。


「私の、能力をもう忘れたの?」

私はテルルちゃんに向かって言った。


「…君の能力?…あ!」

彼女は察したように言った。






「私の能力は、空を飛べるの…!」

私はそう言ってユニコーンからわざと落下してみせた。


ふわふわと浮くこの能力でなんとかテルルちゃんをゆっくり地面へ引き下ろし、私はメリーの場所へと飛んで向かった。


「…助けられちゃったな」

テルルちゃんはそう呟いた。

   


「どうして!貴方達は爆破により落下したはず。

それにどうして飛べて…」

メリーは青ざめた様子で私を見た。


「生憎私も普通じゃないの」

そう言って私は自分のシャルロックを指差した。


「…さようなら、白うさぎのメリーさん」


「嫌っ!やめなさい」

悶える彼女を私はユニコーンから地面へと突き落とした。



「…メリー」

テルルは恐る恐る落下したメリーに近づいていき、そして


「残念だけど、私を怪我させようとしたからね」

テルルはそう言って、どこからともなくマイクを取り出し歌を歌った。


彼女が歌うと、どこからともなく音符が現れメリーに向かっていく。


「やめろ!うっ…その音色は…っ」

メリーは悶え苦しみ、その場に這いつくばった。


瞬間、メリーの辺り一帯が爆発した。テルルは少し離れていたので安全だった。



「大丈夫だった!?」

私は焦り、テルルちゃんの元へと急いで近づいた。


「平気。それで、シャルロックは?」

私はポケットからシャルロックを取り出し、テルルちゃんに見せた。


「よかった。」

テルルちゃんは安堵した様子で言った。


「…ねえ、そういえばだけどさ。シャルロックって集めないとどうなるの?」

私はふと思った疑問を投げかけた。


「…多分だけど、とんでもないことになる」

テルルちゃんの曖昧な返答に疑問を持ちつつも、きっと恐ろしいことが起こるのだろうと察した。


「…早くこっから出ようね!」

私はそう言って、彼女と共に次の場所へと向かうのだった。

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