第44話 猫島からの報せ
猫島の祠で「黒い影」を完全に浄化した貞子と栞は、安堵と共に、すぐに舞子への連絡を試みました。伊勢にいる舞子たちが、イザナミの魂を癒やすための重要な役割を果たしていることは、奈緒の光が猫島に届いたことで明らかだったからです。
栞はスマートフォンを取り出し、舞子の連絡先を探しました。電波の状態が不安定な猫島ですが、祠の場所は比較的電波が入りやすいようでした。数コール後、スピーカーから聞き慣れた舞子の声が聞こえてきました。
「もしもし、栞? そっちはどう?」舞子の声には、かすかな疲労と、しかし確かな緊張感が滲んでいました。
「お姉ちゃん! 猫島は大丈夫だよ! 古井戸の『黒い影』、完全に鎮まったから!」栞は興奮気味に伝えました。隣で貞子も安堵の表情で頷いています。
舞子が一瞬、息を呑む気配が伝わってきました。「本当? 奈緒の光が届いた後、祠の鏡を使って浄化したのね?」舞子の声に、安堵と確信が混じり合います。
「うん! 鏡にイザナミ様の本当の願いが映って、貞子ちゃんが語りかけたら、スッと消えていったんだ。なんか、すごく穏やかな気持ちになったよ」栞は、体験したことを詳しく説明しました。
電話の向こうで、鳴海の「奈緒の光が、本当にイザナミ様の魂に届いたのね」という呟きと、奈緒の小さな嗚咽が聞こえてきます。猫島と伊勢、遠く離れた場所で、それぞれの使命が繋がり、一つの成果を生んだことを、全員が実感していました。
「よかった…本当に良かったわ」舞子の声が震え、安堵しているのが伝わります。「猫島が落ち着いたなら、私たちはすぐにそっちへ戻るわね。狗ヶ岳に残る『歪んだ門』の件もあるし、合流して、残りの戦いに臨みましょう」
「うん! 気をつけて帰ってきてね!」栞は心からそう伝えました。
電話を切った栞は、貞子と顔を見合わせました。猫島の使命は果たしましたが、まだ「歪んだ門」の残された脅威があることを二人は認識しています。しかし、その顔には不安よりも、希望と決意の光が満ちていました。舞子、鳴海、奈緒が戻ってくれば、五人の巫女の力が揃う。そして、全ての災いを完全に終わらせることができる。
猫島の清々しい夜明けの中、貞子と栞は、残された戦いへの覚悟を新たにしていました。
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