第27話 奈緒の覚悟
猫島の民宿の一室で、古井戸から感じる「黒い影」の異様な気配に沈黙が流れる中、舞子が口を開いた。奈緒が感じた「大きな力」は、自分たちが狗ヶ岳で追っていたもの、そして貞子を蝕んだ根源と同じであると告げる。奈緒は自身の能力が恐ろしいものと繋がっていたことに震えるが、皆がその力こそが解決の鍵だと信じていることに心を温かくする。
「私…この力を使って、みんなを助けたい」。奈緒の決意に、鳴海はそっと手を握り、貞子と栞も力強く頷く。舞子は曾祖母の巻物を広げ、「黒い影」を封じる鍵は「真なる名」を呼び覚ますことにあると説明した。奈緒の感情を読み取る力が、影の感情の源を探ることでその「真なる名」を見つけ出すのに役立つ可能性を指摘され、奈緒は自身の能力が重要な役割を果たすことを知り、覚悟を決める。
翌朝、五人は古井戸の調査に向かった。島には「神隠し」の噂が蔓延し、不穏な空気が漂っていた。井戸に近づくと、その底から湧き上がるようなおぞましい負の気配が肌を刺す。奈緒が井戸の縁にそっと手をかざすと、強烈な虚しさ、悲しみ、そして数えきれないほどの「諦め」や「絶望」が混じり合った感情の渦を感じ取る。その中で、「…忘れない…」「…私を…」という途切れ途切れの囁きが聞こえてきた。奈緒の言葉に、栞は曾祖母の巻物と地図を照らし合わせ、この井戸が古くから負の感情が集まる場所であり、その近くに今は使われていない古い祠があることを発見する。もしかしたら、そこに「真なる名」の手がかりが隠されているかもしれない。
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