第14話 託された力と、失われゆく記憶
古賀町のアパートのリビング。夜の静けさの中、雫は鳴海と奈緒に向かい合っていた。昨夜、水野姉妹に明かしたばかりの、羽田家と水野家の血縁関係。その重い真実が、まだ二人の心に波紋を広げているのを雫は感じていた。鳴海の足には、狗ヶ岳で負った怪我の包帯が巻かれている。
「鳴海、奈緒、実は今話したことには、もっと深い意味があるの」雫は言葉を選びながら切り出した。
鳴海は不安げな表情で雫を見つめる。奈緒もまた、ソファの端で静かに、しかし真剣な眼差しで雫の言葉を待っていた。
「鳴海、あなたの中に、まだ目覚めていない巫女としての力が眠っている。水野の血筋に流れる、特別な力よ」
鳴海は、自分の体にそんな力が秘められているなど、信じられない思いだった。しかし、沖ノ島での出来事、奈緒が黒い影に憑りつかれた時のこと、そして自身が感じていた漠然とした感覚が、雫の言葉と重なっていく。
「そして、その力は、あなたの姉である舞子を助けるために、必要なものになるでしょう。舞子は以前、海門を鎮めようとして、禁断の記憶に深く関わったの。その代償として、彼女は過去の記憶の一部を失い、そして彼女の中に眠る本来の巫女としての力も、その記憶が失われるにつれて、いずれは徐々に弱まり、そして失われていく可能性がある」
雫は切なる願いを込めた瞳で鳴海を見つめる。
「だから、鳴海。どうか舞子の力になってあげてほしい。彼女の記憶と力が完全に失われる前に、あなたたちで力を合わせ、この地の災いを終わらせなければならない」
雫の瞳は、未来への強い希望と、同時に切なる願いを宿していた。鳴海と奈緒は、それぞれの胸に去来する複雑な感情を抱えながらも、雫の言葉に静かに耳を傾けていた。彼女たちの運命は、今、新たな局面を迎えようとしていた。
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