第13話 明かされる真実


一ヵ月前、


古賀町のアパート。水野姉妹の日常は、穏やかな時間の中にあった。沖ノ島での一件から立ち直った奈緒は、以前にも増して明るく、家の中には彼女の朗らかな声が響いている。一方、鳴海は狗ガ岳で負った足の怪我の養生中で、リビングのソファで静かに過ごすことが多かった。

そんなある日の夜、突然の来訪者が水野姉妹の平穏を破った。インターホンの音に奈緒が応じると、そこに立っていたのは羽田雫だった。彼女の表情はどこか真剣で、いつもの柔らかな雰囲気とは少し違っていた。

「雫さん、どうしたんですか、こんな時間に?」奈緒が訝しげに尋ねる。

「ごめんなさい、こんな夜遅くに。でも、どうしても今日、話しておきたいことがあって」雫はそう言って、促されるままリビングへと入った。鳴海はソファから身を起こし、怪訝な顔で雫を見つめる。

雫はゆっくりと口を開いた。「実は、羽田家と水野家には、深い繋がりがあるの。あなたたち姉妹と、私の妹たち、舞子と栞は、遠い親戚なのよ」

鳴海と奈緒は顔を見合わせた。互いの表情には、驚きと戸惑いが入り混じっていた。

「私の義理の妹である舞子と栞は、幼い頃に大島の羽田家の養女になったわ。元々は、水野家の長女、舞子、そして次女、栞として生まれて…つまり、あなたたちのお姉さんにあたるのよ」雫は続けた。

その言葉に、鳴海の心臓が大きく跳ねた。これまでの人生で知らなかった姉たちの存在。そして、自分たちと羽田家が親族関係にあったという事実。鳴海には、舞子が巫女の力を持っていることは知っていたが、自分にも同じ血が流れているとは思いもよらなかった。彼女の中には、漠然とした繋がりを感じていたものの、それが血縁によるものだとは想像だにしなかったのだ。

奈緒もまた、信じられないという表情で雫を見つめている。これまでの出来事が、まるで一本の線で繋がっていくような感覚に襲われた。

雫は、そんな二人の様子をじっと見つめながら、さらに続けた。「舞子と栞は、あなたたちの血縁の姉妹。そして、私は、その二人を慕うあまりに、あなたたち水野家のこと、特に奈緒ちゃんのことを、ずっと気にかけてきたの」

彼女が持つ、人の負の感情を読み取る力、人の感情を読み取る力も、もしかしたらこの血筋に関係があるのだろうか。

鳴海は、頭の中で情報が整理しきれずにいた。自分には姉が二人もいて、それが舞子と栞。そして雫は、その義理の姉。全てが繋がり、これまで点と点だったものが線になっていく。

「信じられないかもしれないけれど、これは紛れもない事実よ。私たちが、あなたたち姉妹を知っていたのは、そういうことなの」雫の言葉は、静かな夜のアパートに、新たな波紋を広げていった。

「でも、この話はまだ舞子には内緒にしておいてほしいの」雫は、少し迷うように言葉を続けた。「このことは、私の口から舞子に話すつもりだから。それが、今の私にできることだと思っているの」

鳴海と奈緒は、雫の強い決意を感じ取った。まだ全てを理解しきれないまでも、目の前の女性が、二人の姉妹の未来を真剣に案じていることは伝わってきた。

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