LV.2話 レベルの足し算

彼女の意識は、半透明のウィンドウにじっと注がれていた。

そこに書かれていたのはユニークスキル。──レベリングだった。


彼女の心臓は高鳴り、視界の端に、まるで彼女に呼応するように半透明のウィンドウが浮かび上がった。


【レベリング実行: Lv.+1UP】


(やはり、あれは気のせいではなかったわ!)


数分前、退治した小さなスライム後、レベリングを実行した時も、璃華の頭には【Lv.+1UP】という文字が鮮明に現れたのだ。


璃華は静かに、そしてゆっくりと深呼吸をした。

(これを「ひたすら実行する」ことができれば…)


彼女は考えた。もとの世界では剣術の心得などない。魔法も使えない。ステータスが表示されるこの不思議な現象が、ただの幻覚ではないことを本能的に感じる。そして璃華は渾身の想いで念じた。


「レベリング!」


その瞬間、何かが体を包み込み璃華の視界に、再び半透明のウィンドウが浮かび上がった。


【レベリングを実行しました。】

【Lv.+1UPしました。】


そして、さらに新しいウィンドウが現れた。


【Lv.2になりました】


(思った通り……!)


璃華は興奮で体が震えた。これは夢ではない。彼女にしか見えない、しかし確かに存在する【究極のレベリングシステム】なのだ。そうなれば璃華は止まらない。ただひたすらスキルを実行し続ける。


実行して


【Lv.+1UPしました。Lv.+1UPしました。Lv.+1UPしました。Lv.+1UPしました。Lv.+1UPしました。Lv.+1UPしました。】


【レベルアップ Lv.8】


実行して実行して


【Lv.+3UPしました。Lv.+3UPしました。Lv.+3UPしました。Lv.+3UPしました。Lv.+3UPしました。Lv.+3UPしました。Lv.+3UPしました。Lv.+3UPしました。】


【レベルアップ Lv.20】


そこである異変に気づく。


【Lv.+3UPしました。】


(Lv.UPの頻度がかなり上がっている!?まさかこれもユニークスキルのレベリングの効果!?)


彼女はふと、これまで見過ごしていた細かなメッセージを思い出した。【特定の行動を連続で行うとボーナスが発生することがあります。】というような、小さな注意書きだ。


「 もしかしたら、このままいけば、もっと大きなLvが得られるのかもしれないわ!」


そして

実行して実行して実行して実行して


【Lv.+12UPしました。Lv.+12UPしました。Lv.+12UPしました。Lv.+12UPしました。Lv.+12UPしました。Lv.+12UPしました。Lv.+12UPしました。Lv.+12UPしました。Lv.+12UPしました。Lv.+12UPしました。】


【レベルアップ Lv.140】


実行して実行して実行して実行して実行して実行して実行して実行して実行して


【Lv.+99UPしました。Lv.+99UPしました。Lv.+99UPしました。Lv.+99UPしました。Lv.+99UPしました。Lv.+99UPしました。Lv.+99UPしました。Lv.+99UPしました。Lv.+99UPしました。Lv.+99UPしました。Lv.+99UPしました。Lv.+99UPしました。Lv.+99UPしました。Lv.+99UPしました。Lv.+99UPしました。Lv.+99UPしました。】



【レベルアップ Lv.1724】


最初はぎこちなかった実行手順も、回数を重ねるごとに洗練されていく。自信のステータスが上がるにつれて、彼女の動作はより正確に、より精密に、より効率的になっていった。


彼女はまだ知らない。ユニークスキル:レベリングの効果がまだ序盤に過ぎないことを・・・




【西条璃華(さいじょうりっか)】

現在・・・ Lv.1724





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る