値引き

仕事の帰り道

今日は残業で少し遅くなってしまった

外はもうすっかり暗くなっていて蒸し暑い

スーパーで惣菜を買って帰るつもりだった

だがもうどこのお店も閉まっている

夜の街に光る黄色と紺色の看板

「ﾃｨﾛﾘﾛﾘﾛﾘﾛ♪ﾃｨﾛﾘﾛﾘﾛﾘﾛ♪」

入店音と共に眩しさに包まれる

「いらっしゃいませ〜こんばんは〜」

バイトの子だろうか

気だるそうな挨拶に聞こえた

夜10時

こんな時間に立ち仕事なんて大変だな

昼間ずっとパソコンと睨めっこしてる私ですら

今日はもうヘトヘトだっていうのに

入口から1番離れたヒンヤリとした売り場

おにぎりやお弁当が並んでいる

後ろを振り返ると手作りのお弁当が並んでいる

【20%引き】

赤と黄色で印刷された割引シール

多くの種類が並んだ売り場より

この赤と黄色のシールが貼ってあるお弁当が

ポツポツと置かれている方に惹かれる

今日は唐揚げ弁当を買って帰ろう

5個の唐揚げに黒ごまの乗った白ご飯

ピンク色の漬物にきんぴらのような小さなサラダ

でもやはり何より頭に残るのは赤と黄色のシール

安さに惹かれて買ってしまったけれど

ちゃんと作った人への感謝は忘れないでいよう

シールの印刷もバイトの子が頑張ったのかな

お店から家までゆっくり鼻歌を歌いながら歩く

たかが20%割引されるだけのシール

でも出会えた時は物凄く嬉しく感じる

なんだか疲れが少し楽になった気がする

外は蒸し暑いけれど

寂しいこの部屋は少し涼しいような気がする

電子レンジで温めた弁当の蓋を開けて

鼻から思い切り息を吸う

「いただきます」