【双神の心の友】

アシュヴィン双神が一位と二位の座をキープしたまま、馬車マラソンは終了した。


賞金は被害者へのお見舞い金と寄付金となり、手元に残ったのは表彰楯だけだった。



「えーと……お役に立てましたか……?」



どんよりした顔のシルビアに、恐る恐る尋ねる双神。



「ええ……ありがとう……。」



ため息混じりの返事にシャスタが肩をすくめる。



「シルビアの事は気にしないで下さい。捜査の協力、ありがとうございました。そちらの表彰楯は記念にお持ち帰り下さい。」



「それ……可愛いわよね……」



ポソッと聞こえた呟き。

楯には可愛い馬の姿が埋め込まれている。


それを彼女はジーッと見つめていた。



「では、女神シルビアにプレゼントします。」



「ほんと!?きゃっ、コレクションに加えちゃう!」



ぱあっと笑顔になったシルビアに苦笑する神々。



「あっ、こら、2つ貰うなんて欲張りですよ!?良い大人がはしたない!」



「えー……色違いなのにー……」



シャスタにたしなめられ、ぶーぶー言いながら1つだけ選んだ。



「二位の楯で良いんですか?」



返された楯を受け取り、一位の方が価値が高いのにと問う双神。



「価値よりも色よ。ゴールドよりシルバーの方が可愛いもの。ありがとう、ナーサティヤさん。」



言った後で苦笑する。

楯の持ち主ナーサティヤに礼を言ったのだが、馬抜きで並んでいる彼らは区別がつかない。



「私からもお礼を言いますよ。ありがとうございます、ナーサティヤさん。」



しっかりと目を見て話すシャスタに驚くナーサティヤ。



「シャスタ神には区別がついているんですね。」



コソッと言われ、頷いた。

そうと知った双神が嬉しそうに笑う。



「シャスタ神、また何かありましたら遠慮なく言って下さいね。」



「はい。その時には宜しくお願いします。」



顔を見合わせクスクス笑う。


見分けられる事のない双神だから、個々を認識された事が余程嬉しかったのだろう。

この瞬間、彼らの中でシャスタは特別な存在となった。



「それでは私達はこれで。」



「馬車マラソン、楽しかったですよ。」



そう言って2人は天界へと帰って行った。



「えーっ、アシュヴィン双神帰っちゃったの!?」



帰宅したセフィーナががっくりとうなだれる。

そんな彼女にシャスタが数冊の本を手渡した。


それは勿論双神からで……



「私、頑張る!立派な薬師になるから!」



笑顔で受け取った彼女は、益々勉学に励むのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る