【双神の愛馬たちの名前】

「んー……確かに必要だけど……。やっぱり神獣は反則よね……。」



一度認識してしまえば、それはもう覆らない。



「お二人らしいですね。あっ!」



笑っていたガルダが声を上げた。

何事かと会場に目を移すが、特に異変は感じられなかった。



「何?どうしたの?」



「あの男……私のディアに……」



見れば、コンパニオンのディアに言い寄っている男の姿があった。

ディアは丁重に断っている様子だ。



「ちょっと威嚇して来ても良いですか?」



鷲の姿で追い払って来ると言うガルダをシャスタがなだめる。



「ディアなら大丈夫ですよ。」



「ふふ、見てて。」



2人に言われるまま、不安そうにその様子を見守る。



何度断っても言い寄っているらしき男。

深いため息をついたディアが、スッと男に身を寄せた。


次の瞬間。


男がぐったりし、支えたディアが慌てた様子で係員を呼ぶ。

抱えられた男は救護エリアへと運ばれて行った。



「1インチパンチね。さすが私の孫だわ。」



「人間相手に威力はちゃんと抑えられていましたね。」



と、孫の成長に目を細めている2人。

確かに心配は要らなかったと、ガルダもほっとしていた。



「あっ、ダスラさんが戻って来ましたよ。」



一際高い歓声に会場を見れば、黒馬を操るダスラの雄姿があった。



「頑張れダスラさん!カーラーも行けーっ!」



再び興奮し、声援を贈るシルビア。



「カーラーって馬の名前ですか?」



「うん。名前が無いって言うから私が付けちゃった。」



「じゃあ、ナーサティヤさんの馬はサフェード?」



「当たり。ふふ、ヒンディー語で黒と白。ガネちゃんのネズミと同じで安易な名付けだけどね。」



ガネーシャは従者であるネズミをチューハーと呼んでいる。

チューハーはヒンディー語でネズミを表す言葉だ。



「名を貰える神獣は少ないですからね。それなりの地位も必要とされますし。」



そう言うガルダも地位は高い。



「名前に地位とか関係ないと思うんだけどな~。あっ、やった!ダスラさんが1位になったわ!」



このままキープ出来れば優勝と準優勝を勝ち取れる。

ガッツポーズで喜ぶシルビアだが……



「賞金は寄付ですよ。」



シャスタに言われ、そうだったと肩を落とす。



「元々レースの方がついでだったんですよ?それで良いじゃないですか。」



原点とも言える言葉に、頷くしかないシルビアだった。

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