第2話 白亜紀人類樹立戦線

時は夕の3時を指し家族は次の夜を迎えようとしていた。僕は状況を完璧に飲めている訳ではない。今日は学校を休んだのか。明日から何をするのか。夕焼けにすすきが揺れ家の中が紅に染まる。

 

「明日からは晴れて中学生だよね?」 

「そう、だからお祝いに色々買ってきたから明日から夜はもっと早く寝る。今夜は夕食食べ終わったらお風呂入って歯磨きして着替えてすぐ寝るのよ。」 

「?......はぁい」


 わざわざ言われる事ということは核心に早寝はあるという事なのかな。自分でいうのもなんだが察しが良いのは僕のいい所だ。


「ただいあーい。ヨリちゃー。」

 そして父が帰ってきた。

「朝仕事前に聞いたよ。衛徒もそんな時期か。伴余良ちゃん。」

伴余良は母の名前だ。

 

「衛徒は、この異常で非科学的で人がバンバン死ぬ様な不思議なモノを見てどう思った?」

 

 僕ははっきり言って言葉を出すのに時間がかかった。なぜならこの心持ちは不可解な程に楽観的で、こんな人の死を軽く見るような衝動に駆られる僕は傍から見れば当然目も当てられない酷い人間だ。だけどでもそんな僕を見る眼差し、何か父さんは既に僕の生き方を知っている様な気がした。だから僕は正直に言った。今も思えばもう少し引いた目線で話すべきだったかもね。

 

「僕は…… はっきり言って同級生が2人も死んだ。それでも僕は…… なんだかそれでもあまり悲しく無い。僕は人の死に思いを馳せられない冷たい人間になってしまったのかもしれない。そして今はこれからに何故かワクワクが止まらないんだ。」


「......そうだよね。


 うん!お父さんもお母さんもそうだった」


 語るにあの察しは合っていた。

 

「僕ら魔衛は普通の人と違った生き方を運命づけられてる。そしてファンタジーもそうした少し違う運命の人間と関わりを持つ。僕らは人と、確定している事実が書き換えられ無いよう守る存在。魔衛として戦うけどね。それそうとして僕ら魔衛の感情は渇きを感じるとされている。逆説的に元を辿ればその渇きを満たすファンタジーに魅せられる事が運命づけられてる人だから魔衛でもあるんだ。」


「難しい話をやめて祝いの食事に行きましょう?」

 どの口が言えたんだろうか?お母さん。

 

 場面変わって今日のご飯は焼肉を食べに来ている。この町の寂れた焼肉屋「十八番」ここは微妙な名前に似合わず美味しいし、高くて良い肉なんだ。まぁ。僕の数少ない食事経験においてはトップクラスに美味しいと感じるだけなんだけど。

 

 ジュ

 肉の焼ける音嫌いな奴居る?さておき

 

 「衛徒。これからこれとは比べものにならない食べ物を食べるんだよ。お父さんやお母さんは魔衛をして、これよりうんと美味しいモノを食べて来たんだし。」

 

 店主の訝しげな、フリの視線をアイキャッチする。まるで僕らの生い立ちを知るように店主は嘘だよと笑いかける。

「ンモン僕ュはもっと美味しいモノを食べるまで死なずに居られるかな?」

 僕は肉を頬張ったままだらしなく問いかける。

「不平等よね。すぐに死んでしまう様な人がたくさんいるけどあなたは大丈夫。存在確度なんて果てしなく不確定なあなたが簡単には死なない証左はある。でもそれすら消し飛ばす強いファンタジーにも必ずあなたは打ち倒す事が出来る!


 なんせあなたはうちら2人の子なんだから。」


 僕が寝る8:30 帳を下ろした夜に僕は布団を被る。魔衛はこうやって子を送り出す。僕はちょっと思いを馳せた。今夜にはきっと激しい死に方をする人と悲しみが走り、それでも僕らは次の日ワクワクを持って進むだろうと。床から意識は夢に向かう。


 こんばんは。あの日。回顧の中から明日を戦う君を思い返している回し手より。

 思えば物語の登場人物の様には悲しみを持たない本物の非現実に進む僕らはきっと元からこうだった。魔衛の目覚めの確信。それはその人が死ぬ時から生まれた時までの逆算が真相だ。これを見れば目覚めたように今日魔衛となった様に見える。多くがそうだと聞く。今思えばそれは逆で死から誕生までファンタジーに出会う事が決まっていて、目覚めの瞬間すら既定の路線なのかもしれない。この時の僕では測りようがないな。語り手をあの時の僕に返そう。頑張れよ。


 まだ無垢な僕の初めての疾走が幕を開ける。


「んむにむに。」

 

 午前3時の月の下。

 カツンカツンと窓をノックされる時間。


 前もって少し説明は聞いていた。今日の夜から僕は魔衛としてファンタジーなる存在と戦うらしい。今から出向となり戦地へ赴く事への抵抗が生まれないこと。その最もな理由がおそらく家系や生物的な本能なのだと思う。儚いな。人間と魔衛というものに根本的な違いがあると告げられるような話だ。

 

 魔衛としての初めてが始まる。時計を見ると秒針、デジタルは数字が3:00で止まっている。確認して窓を開ける。


 ツインテールが靡く、制服の学友とファーストインプレッションを迎える。月夜も風景も見えない霧を彼女と挟む窓に。

 

「こんにちはッ!あたしは新米のてんこ。春風 貂子」

 

 今回のミッションで乗せてくれる貂子さ…… 見た目からして多分タメかな。貂子ちゃん。

 

「こんにちはじゃなくてこんばんはじゃないかな。アハハ。」

 まぁ無難に会話しようにも突っ込まざるを得ない。深夜だよ今。

「気にしいなのね。バンバン死ぬから泣いてたら置いてくよッ。」

「おい。新米1人に時間かけすぎや。てん。」

 メンバーが話を遮る

「あぁ。もう。彼初めてのミッションなんだから。″存在確度″上げてるのよ。」

「見えない定数をあるかのようにして言い訳すんな。」


 存在確度。端的に人がどれ程ロストしやすいか測る魔衛式の測り方みたいなものか。会話ひとつで上がったり、出自や性根という変えられないものでも上下する定数という母さんから聞いたイメージだ。

「ごめんごめん置いてきぼりで。これ。魔衛ジョーク。こいつはりゅうき 久我 龍斬」

 おでこが広くてギョロ目だ。

「あぁ。こいつはよくあるキモイビジュにノンデリクールキャラのギャップキモイやつだから気にしないで。」

 酷い。とにかくノンデリはあなたじゃないのか。突っ込んでたらキリがない。行くか。

「乗るよ。」

 窓の外は紫の霧に包まれている。これはなんだろうか。

「この紫の霧は?」

「この霧の説明??あぁ。そうね。前提知識としてウィンドウを知っとかなきゃならないわね。えぇと。」

 

 人は家屋から窓を、眠りから起床を経て外の世界を観測する事を起点にその結果の伝聞を経て大衆へ広がる。そうした箱の外と中の接点、大衆と現実という間で相互に情報は強度が強まり、周知しきった時それは確定した現実世界として扱われる可能性と観測と基底のダイアグラム理論という観測委員会が提唱する理念の元、僕ら魔衛を束ねる魔衛局の観測委員会による調査より、以後確定しうるが実情は書き換えられた事実の示す並行世界の事、それを観測世界と言う。僕ら魔衛は現実世界へ影響無い結果へと繋げる為その世界を滅ぼす仕事だ。魔衛局の総本山はね。


 そして観測委員会により弾き出された現実世界に書き換えられうるファンタジーに介入された可能性のある場所へ行き観測世界へ入る。そうしてそれを現実世界へ書き換えを確定させる為に介入した敵ファンタジーを討伐する。そしてその観測世界へ入る為の入口。または簡潔に確定する可能性のあるまだ不確定な薄い現実、観測世界。その入り口。それが窓を通じて現れるウィンドウという扉だ。


 そしてこの紫の霧は隙間なく現実世界と観測世界を分け窓のみ通じて観測世界への入界を行うためのファンタジー、らしい。


 恐ろしい程に棒読みだった。これは教科書の内容的な1文なんだろうな

 

「これもファンタジーなんだぁ。」

「まぁ理解しなくても良いわ。ただの窓をどこでもドアに変える筒みたいなものだと思えば良いから。そしてそろそろよ。今回の世界は白亜紀。大絶滅の前日。それも相手は恐竜では無い。巨人、小人、普通の人間。」


 ありえない話だが広義にファンタジーと言ったら化け物も人も歴史上にありえない分岐そのものも有り得ると聞いた。

 

「観測委員会による測定結果は起源人類の可能性世界を示した。機械式可能性修正テクスチャ・デリート評価の低い観測世界を機械で滅ぼす兵器。それを使い、人類の出現時期の観測結果から白亜紀以前という可能性を削り基底通りの人類起源を確固たるものとし直す。」


「ただ相手は魔衛では無い真っ当な現代人類よりは圧倒的に進んだ文明レベルを持ってる。初回の今回すら、この失敗は僕らの歴史を破滅的な程の歴史改変へ帰結する。そして人類の出現の歴史を新生代から三畳紀付近とし、大絶滅すら人は超え、今の人々は宇宙へ逃げ延びた彼らの祖先だったことになる。その様に基底にさせる可能性があり、それを消すために白亜の明星と呼ばれるかれらの巫女を足止めしながら破壊工作し機械式可能性修正テクスチャ・デリートまでの時間を稼ぐ。」


「機械式可能性修正。これは単純に魔衛の技術力の本山にあるCultクラスAIエディタの行う、可能性世界の抹消及び分岐点の再連結を自動で行う兵器」


 霧を抜けた先は、色調はおかしいか恐らく都市区間。シックという言葉はおそらく無いのだろう。一つ一つが極彩色で目が眩む。目を覆いたくなる異様な光景ももちろんある。白亜紀の生物全てが巡回兵器と化していてレーザーライトのような質感無さげな攻撃に当たると溶ける、凍る、燃える、砕ける。とにかく持ち武器と言わんばかりに各々異常に死ぬッ。道路の一つ一つが全て滑らかである。ものすごいスピードで突っ込んでぐちゃぐちゃになる素養も才能も可能性も無い愚かなお調子者が居るのは …… そりゃそうだがさすがに軽すぎて諸行無常を感じる。あーあ。


 それはそうとしてぶつかったと思うとおぞましいスピードにもかかわらずその構造物。いや。これは窓だろう。外を見渡せるようなクリアな窓は傷1つ付いていない。

 

「可能性世界に限らずファンタジーの観測世界から現実世界への成立に必要な要素以外の詳細な数値に際限は無い。一つ一つの可能性に破壊が定められず、結果硬度はnull値や無限として定義される時が多い。この場合基底として定義された後、現実がそれのデータ一つ一つに至るまでは無限の硬度。俗に壊れない状態を持ちうる。」

「龍斬さんは物知りなんだね。」

「情報を知ってる奴がいなければ分隊は霞を斬る様に果てしなく難解なミッションをクリアし形の無い喜びを得る。否、俺らは戦績を得て持ち帰る。そのために俺は居るからな。」

 

 区画の合間にて僕らは待ち合わせと合流した。僕は聞かされていなかった。

 

「お調子者って、正にあなたの事ね。」

「それってあなたの感想ですよね。上隊案件選抜やった事ありますよw 」

「...... 」

 

「あの。おはようございます。なんだろう。無視しないでもらっていいすかw」

「ごめんねー。てんちー。ゆきひろの事は置いてってうちらー先に筆頭ファンタジー見つけようー?ファーストペンギンとして筆頭ファンタジー見つけたらもう帰宅しよー?」

「馬鹿言うな。筆頭ファンタジーの情報無しなんだから急いだら見るだけで死ぬぞ。ファーストペンギンの意味わかって言ってんのか。アホギャル。」

「観測委員会へ。通信 12班合流しました。点呼」

「12班 1番春風 貂子」

「12班 2番久我 龍斬」

 僕の立ち位置的に12班の3番は僕だろう。

「12班 3番洲原衛徒」

「12班 4番溯田 海結」

「12班 5番和田 幸宏」

「12班 6番伏龍 亜蓮」

「今回のミッションは明星の発見と足止め。総員解散。斥候任務始め。」

 僕らは見習い僕のみ貂子さんとツーマンセルとして5騎に別れ対象の筆頭ファンタジーを探す。

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僕らチートや異世界のファンタジーから現実世界を守る魔衛として生き残れるだろうか 藍螭 @aimizchvtuber2025

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