一章③

 それは光のように感じられた。

 たとえば夜闇の中で輝く星のような。太陽や月のように周囲を照らし出すほどの力はなくともそれだけは確かに見える、ささやかでしかし強い光。

 無意識に手を伸ばす。吸い寄せられるように体ごと。光へ向かって飛ぶ蛾に明確な意思などないように。

「……」

 近付いていく中で、それが絵であることが分かり、胸が疼いた。

 郷愁のような懐かしさか。感動か。随分と久し振りに見た気がする。思わず手を伸ばしてしまうほどに。

 何気なく、本当に何気なく絵に触れる。書店で目に付いた本を手に取るように、なんとなく。

「――」

 溶けるような、目の醒めるような、緊張の糸が切れるような、温かさが、光が生まれた。

 思わず笑ってしまうような温もりがあった。

 単純に、短絡的に「もう少し頑張ってみよう」と前向きに思ってしまうような

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