第35話 おせいそ(笑)

☆☆☆


「さっさと素直になるべきだ。ほら、少しくらいなら触ってもいいから。」


「渉くん、ほらおいで。なでなでしてあげるよ。」


「まだこの話題続いてるかよ!くっそ、終わる感じだっただろ!」


「...何の話?」


俺はまだ続いていることに嘆きながら、2人から距離をとる。何をされるかわかったもんじゃない。まだ俺は普通の高校生活を送っていたい!...今でも送れてないだろって?うっせ!


「まあまあ、こっちきなって。悪いようにはしないよ。」


「いやです!さっさと着替えろ!もうそろそろホームルームでしょうが!?」


「うーん、それもそうだね...」


実先輩がそういう。よかった、実先輩はまだちゃんとして...


「じゃあ、はい」


「...実先輩?」


「...着替えさせて?」


「失礼しますっ!!」


俺は全力ダッシュでその場から逃げ出した。清楚!ここは清楚です!


☆☆☆


放課後。


部室の扉を開けると、こたつでくつろぐ先輩たちがいた。茶飲みを持ち、何かを飲んでいるようだ。


「やあ、飲むかい?」


「なんすかそれ?」


「甘酒だよ、調理実習で作ったんだ~」


「へ~いいっすね、温まりそうで。一杯もらいたいっす。」


「いいよ~」


先輩がIH鍋からひとすくい、コップに移す。


「どうぞ~」


「ありがとうございます。...あ、おいしい。」


もらった甘酒を一口飲むと、やさしい甘さと温かさが体に流れ込んできた。体がぽわぽわと温かくなる。


「たくさんあるし、ゆっくりのみながら雑談しよ~」


俺と実先輩は、咲月先輩の提案に賛成し、こたつに入りながらぬくぬくとする。


...で、30分ほどしたとき、ある違和感に気が付いた。


「ふわ~...」


「んん~...」


2人が顔を赤くし、こたつに突っ伏している。俺も気持ちふわふわしてるような...


「あの...先輩、まさかとは思いますけど...これ酒粕じゃないっすよね?」


「ん~?...どーだったっけ...」


「その、調理実習で作ったとき、先生が何か言ってませんでした?」


「え~っとね...」


----

「この甘酒は、家で作って飲んでくださいね!学校でお湯に溶かしたりしちゃだめですよ!自転車通勤の人は特に!」

----


「...って言ってたかな~」


「学校で飲んじゃってるじゃん!ダメじゃん!!絶対これ酒粕ですよ!?」


「え~...ちゃんと鍋で煮込んだよ~?お湯で溶かしてないよ~?」


「家で作って、って言ってたんでしょう!?まさか調理実習で飲んでないですよね...!?」


「ん~...飲んでないよ~...あくまで作っただけ~...」


実先輩がそう答える。ふたりはめっちゃふにゃふにゃしていた。


ああもう、どうしてこうなる―――!!


☆☆☆

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文化部の先輩は、どこかおかしい ko-suke @ko-suke5648

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