第29話 不意打ちはよくない
☆☆☆
「さすがにどうかと思うよ」
「いや俺が悪いんすか!?」
咲月先輩が逃げ出したあと、部室に向かったが、そこに咲月先輩の姿はなかった。少しし実先輩がきたが、咲月先輩がいつまでたっても来ないため、実先輩に何か知らないかと聞かれ、今に至るというわけだ。
「いや普通さ、『あなたの匂いが好きです』なんて言わないでしょ、どう考えてもさ。しかも不意打ち的にさ。」
「だって聞かれたから...」
「適当に濁しとけばよかったじゃんか。本当のこととはいえ、ちょっとそれはないかな...」
「そんな~...」
ガックシとうなだれる俺。その様子を笑ってみていた実先輩だったが、突如咳払いとしたかと思うと、制服を少し着崩した。ふわっと、特徴ある香りが部室に漂う。
「...ちなみにさ、もし咲月じゃなくて僕が乗っていた場合でも、気づけた?」
「え?ああはい、多分。」
「へえ、それも匂いで?」
「...なんすか、からかってんすか?」
「いやいや、ただの興味本位だよ。」
はあ、とため息をついて、実先輩の問に答える。
「実先輩に関しては、匂いじゃ無理っすね。少なくとも今日は。」
「...それは、僕じゃ君の好みの匂いじゃないから?」
「いやそうじゃなくて。先輩、今日つけてるの昨日までと違う香水でしょう?系統は似てるから、多分メインの香りは同じでしょうけど。」
そういうと、実先輩はソファからずり落ちた。俺を見て目を見開いている。あれ、この光景、既視感が...。
「...よ、よくわかったね。今まで使ってたやつが切れたから、匂いの系統が似てる別のメーカーにしたんだけど...。」
「わかりますよ、何となくは。...実先輩、引いてません?」
「ひ、引いてないよ引いてない...アハハ...」
口ではそういっているが、顔は引きつってるし、苦笑いだこれ。絶対引いてるじゃん。
「えーと、とにかく。君は考えなしに喋ってる節があるんだよね。脳死でしゃべってるっていうかさ。だから、これからはちゃんと考えてしゃべること。言わない方がいいかなって思ったことは口にしないこと。いいね?」
「はあ、まぁやってみますけど...」
「うんうん。すぐに直せとは言わないけどさ、そのほうがいいとおもうよ。」
「うーん...まあ、わかりました」
そういって、時計を見てみると、いい時間になっていた。そろそろ教室にいっておいた方がいいな。
「あ、俺そろそろ教室行きます」
「ん、りょーかい。かぎはこっちで返しとくから、先行ってていいよ。」
「わかりました」
実先輩に甘えて、俺は先に行くことにする...が、その前に。俺は後ろを振り向いていった。
「俺、実先輩の匂いも好きっすよ」
「っ!?!?んもー!だーかーらー!!」
俺は怒る先輩を横目に、教室へと走りだした。廊下は走るな?大丈夫大丈夫、バレなきゃ犯罪じゃあないんですよ。
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