第30話 小動物と悪魔
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放課後、俺が部室の扉を開けると、2人が隅っこで固まっていた。その状態で、こちらをじーっと見つめてくる。
「お、お疲れ様です...?」
挨拶をしても返事がない。その代わり、2人してびくっとしたかと思うと、ぷるぷると震えだした。
「何なんすかいったい、なんかあったんすか?」
「「心当たりがないとは言わせないぞ」」
「うわハモった」
俺はパッと思ったことを口にしてしまい、はっとした。朝、実先輩に「脳死で喋らずにちゃんと考えてから喋る」って言われたのに、つい口に出てしまった。
「やっぱり!全然響いてない!」
そこを実先輩に揚げ足取られた。その雰囲気から、なんでこんな状況になっているかを察した。
「2人ともまだ朝のことで怒ってるんすか?もう匂いのこと言いませんから、いい加減機嫌直してくださいよ~」
「その発言、さっきの君の行動のせいで全然説得力ないのわかってる?」
実先輩にジト目で言われ、ウッと言葉が詰まる。
「それを言われると弱いすけど...その、2人が嫌なことは極力しないようにしますから。約束します。」
「「...」」
2人は無言で俺を見つめてくる。どれくらい経ったかわからなくなってきたころ、咲月先輩が口を開いた。
「...嫌ってわけじゃないの。むしろ、好きって言ってくれて凄く嬉しかった。」
「え?じ、じゃあなんで怒って...」
「そもそもが間違ってるよ、渉くん。僕らは怒ってるわけじゃないの。ただ...」
実先輩は少し下を向いていった。
「心の準備ができてない状態で唐突にくるから、恥ずかしい+驚きがあるんだよ。なでられたりとかは唐突でも嬉しいけど、ああいう感じにパッと恥ずかしいこと言われるのはちょっとね...」
「うん。だからこうして、適度に距離をとることで自衛してるの。ついでに君にやり返すための作戦会議もね。」
「なーるほど...ふーん...」
...意地悪なことを思いついた俺は、にやっと笑う。その顔に気づいた2人は、おびえた顔になった。
「ちょっと待って、君今何を考えてる?」
「まさかとは思うけど、いたずらしようとか考えてないよね?」
「はっはっは」
俺は笑った後にずかずかと歩いて2人に近づいた。2人は逃げそびれて、隅っこでおびえた顔になる。
「そんな怯えなくても、取って食ったりしませんよ。言ったじゃないですか、2人が嫌がることはしませんって。」
「そ、そうだよね...?じゃあその笑みは何...?」
「こ、怖いよ渉くん...?」
怯える2人に対して俺はすっと近づき...
「よーしよしよし」
頭を撫でまわした。2人は一瞬驚いた顔をしたが、すぐにほんわかな顔になった。
こうして俺たちは仲直り(?)をしたのだった。
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