欠片2.『深峡岩要塞』


欠片ピース2.『深峡岩要塞ディーニオンフォートレス』です!


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【3年後──】


深峡谷ディープキャニオン

サーチが住む峡谷きょうこくは、地上からとても深い地下にあり、深峡谷ディープキャニオンと呼ばれている。

かつて人類は、機屑物ガーベマジルから逃げるべく──安全な場所を求め、この深峡谷ディープキャニオンの岩の中に要塞を創ったとされている。


その要塞ようさいを『深峡岩要塞ディーニオンフォートレス』と呼び、そこを生活の基盤とした。


しかし、要塞といっても迎撃兵器などはない。

これから先の時代に、いずれできるかもしれないが、一体いつになるのかは誰にも分からない。


峡谷きょうこくの地下・最下層には、いくつもの狭い道があり、人々はその道を通って、別の施設や住宅へ移動ができる。

さらに、地上からも地下全体につながる階段が伸びていため、地上にも出ることができる。


そうして、人類は要塞を築くことで機屑物の進行から生き延びてきた。



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サーチは自分の部屋で新聞を読んでいた。


月に一度届く新聞は、王都『ルインルーナ王国』から各要塞に届くようになっている。


今では紙などの資源は貴重な物であり、本もまたその一つだった。人類の歴史や知識を、後世に伝える手段として、大切に保管されてきた。

サーチは、働いた資金シリカの大半を歴史本か破片ノ武器ウェードに必要な素材に使っていた。



「──ルインルーナ王国が、聖騎士パラディンたちを各大要塞に派遣」


「ふーん」

「まあ、ここは関係ないかな〜」



【ルインルーナ王国を中心とし──】



【各地に8つの巨大な要塞が存在する】



【8つの要塞の周辺には】

 小規模な要塞がいくつか建設され】


【サーチが住む深峡岩要塞ディーニオンフォートレス

 その内の一つであり】

【ルインルーナ王国の近くに存在している】



その後も新聞を読み進めていると、『グゥ〜』とサーチのお腹が鳴った。



「ハラへったな〜」

「広場に買いに行こうかな」


サーチは部屋を後にして、入り組んだ通路を進んで行く。


深峡岩要塞ディーニオンフォートレスには様々な部屋が存在している。

そして、大きな空間にたどり着くと、食材を売っている店や武具を売っている店、糸や布、生活に必要な物、他にもさまざまな売り場が並んでいた。


そこは、『広場』と呼ばれる大勢の人々が行きう大きな部屋だった。


サーチが目的の場所まで着くと、そこにはくすんだ緑色の帽子を被り、短い黒髪の男が座っていた。



「よう。サーチ!元気にしてたか?」


商人[グレディ(28)]

  [種族:ヒト]



「グレディ!」

「まあ、それなりにな!」



「ハッ、オマエは歴史本か破片ノ武器ウェードのことになったら、すぐに熱中しちまうからな」


「いつぶっ倒れやがるかわからん!」

「ダァーハッハッハ!」


そう話しながら、グレディは大笑いしていた。



「ハハハ……。否定はできないな…。」



「今日も乾パンでいいのか?」


「いや、今日はりんごとパンをくれないか」



「おっ!めずらしいな」


「いつもは金が無くて、乾パンしか買えねぇって泣いてんのによ」

「ハッハッハ!」



「今月は、歴史本を買わなかったんだよ」

「それに、破片ノ武器ウェードもいまあるので十分だし」


「だから、久しぶりに贅沢をしようかなって!ヘヘへッ!」



「なるほどねぇ〜。いいじゃねぇか!」


手際よく準備するグレディから食べ物を受け取り、通貨シリカを支払う。



「ハイよ!お待ちどうさん!ちなみに、今日のりんごはいつもよりうまいぜ!」



「ほんとか!」



「ああ、今朝ルインルーナから仕入れたもんだからよ!」


「なるほどね!ヘヘッ、ラッキー!」



「まいど!またこいよ〜!」



「おう〜!ありがとう!」

「またなー!」


手を振りながらサーチは、広場を後にした。



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深峡谷ディープキャニオンの谷底から北東約200kmにある要塞】


白壁要塞ランパートフォートレス

半径500mの街を囲むように、高さ50mの白い壁に覆われた要塞『白壁要塞ランパートフォートレス』がある。


サーチが住む『深峡岩要塞ディーニオンフォートレス』とは違い、地上につくられてはいるが、低地にあるため、土地全体に霧がかかりやすい。


その為──高い壁を築き上げ、見晴らしを良くしている。

さらに、壁の上に固定砲台である『破片砲台(テリード)』が設置されているため、機屑物ガーベマジルへの迎撃が可能な要塞の一つである。



"ズズゥゥゥン"…



"ズズゥゥゥン"……!



遠方から大きな音が鳴り響きながら、足元には振動が伝わってきていた。

天候は悪く、きりがかかっている中。見張の兵士が異変に気付いた。



「ん?なんだあれは……」



「──なっ!!これは!!」


壁門へきもんの上にある見張り台から、双眼鏡をのぞいていた見張り兵が、門下もんかの兵士へと叫ぶ。



「遠方300mから大小合わせ」

獣攻型じゅうこうがた機屑物ガーベマジルが多数接近!!!」



「門を閉めろ!!!」



すぐさま壁門の上にいる別の兵士にも伝令をする。



「オマエはすぐにだい隊長に知らせろ!!」



「はい!」


「残りの者は上から迎撃だ!時間を稼ぐぞ!!」

「門の突破を阻止しろ!!」


兵士たちはすぐに破片ノ武器ウェードを取り、門上もんじょうにある破片砲台テリードに、機屑物ガーベマジルから採れた破片クズを粉末状にし、火薬と混ぜ合わせて作った砲弾を補充しはじめた。



「撃てぇぇぇぇぇ!!!」



"ドォン"!!"ドン"!"ドドンッ──"!!



大きな音が鳴り響かせながら発射された砲弾は、迫り来る機屑物ガーベマジルへと放たれた。

いくつかの小型の機屑物は倒れていったが、中型や大型の機屑物は破損はあるものの、動きは止まらなかった。

数分後。大隊長が壁門へきもんの上に到着した。



「視界が悪いな」

「おい、双眼鏡を貸せ」


大隊長[オーディナル(42)]

   [種族:ヒト]



オーディナルは、迫り来る機屑物ガーベマジルを確認した。



(なんでいきなり……こんなにも多くの機屑物ガーベマジルが。)

(ヤツらは一体、どこからきたんだ?)



(目的はなんだ?しかも、全て獣攻型じゅうこうがただと……?)


「これは、異常だ……」



(獣攻型じゅうこうがた機屑物ガーベマジルは、人や在屑物アニマを襲うが……それはただ捕食が目的であって)

(基本的に狩り自体は、単体で行動をする。)



「それなのにどうしてこんなに。」



「でんれっ…ぃ…ハァ…ハァ……伝令──!!!ココより北に450kmの『機屑巨躯きせいきょくの大地』が、突然動き出しこちらにせまってきています……!!!」



北側から息を切らしながら、歴史生物図鑑の「ウマ」に似た『屑甲馬せっこうば』に乗ってきた兵士が告げる。



「どういう事だ!?」

「大地が動くなんて、そんなことあるわけ無いだろう!」



「それが…」


「とてつもなく巨大な──」

甲鎧型こうがいがた機屑物ガーベマジルが出現しました……!!」



「なんだと……!?」



「見た目は…「カメ」のような姿をしており」

「とつぜん大地が揺れ、巨体が起き上がると…こちらに向かってゆっくりと進行し始めた。」


「──と、中間要塞観測機関所インスティテーションの兵から伝言がありました!!」



「間違いないのか?」



「は、はい。」


「こちらにくる途中……この目で見たので間違いありません。」

「推測でも…大きさは500m以上はあったかと…」



「500mだと!?」



「はい。中間要塞観測機関所インスティテーションは、この機屑物ガーベマジルに、"象岩亀エレマントールス"と名付けたようです。」


その場にいる、話を聞いた兵士たちはみな呆然ぼうぜんとしていた。



(今から住民を避難させるにも……間に合うのか…?)


(すぐ目の前にも、獣攻型じゅうこうがたがたくさんいるってのに……)



(どうすれば……)



"ズズゥゥゥン"…!!



"ズズゥゥゥン"!!!



"ゴゴゴゴ"……。



地面が割れるような地響きは、先ほどよりも近づいてきていた。

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