第6話 十二年後

「ははは・・・」

幼子を抱き上げながら俺は笑っていた。


「ふふっ・・・」

傍らで見つめる君も口元を綻ばせている。


「マーちゃん・・・」

思わず呼びかけてしまう。


その度に。

君は恥ずかしそうに微笑む。


いつまでも変わらない少年の想いに。

くすぐったそうにしている。


こんな幸せをくれたアイツは。

今は、いない。


そう。

あの時も。

アイツは存在していなかった。


俺を十五歳の時間に運んだヤツは。

山田は既に死んでいたのだから。


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