第7話 一途に

山田はマーちゃんを誰よりも愛していた。


だから。

俺が彼女に告白したことを知ると激怒した。


同じバスケット部で。

アイツは180㎝を超える長身だったけど。


体育館の片隅で。

本気で殴り合った。


結局。

痛み分けになったけど。


アイツは悔しそうに叫んだ。

彼女を不幸にするなと。


ドラマじみた臭いセリフに苦笑いしたけど。

良い奴だと、俺は思ったんだ。


※※※※※※※※※※※※


それから数年後。

マーちゃんと別れた俺は、どうしようもなくて。

そんな時。

アイツが現れたんだ。

同窓会をしようって。


今から思えば。

アイツは既に死んでいたのに。

どうして、ヤツは・・・。


※※※※※※※※※※※※


「パパァ・・・」

ヨチヨチと近づく娘にキュンとなる。


抱き寄せるミルクの匂いが愛おしい。

柔らかな頬にキスをする。


「パパ、おひげが痛いぃ・・・」

むずかる声が可愛いすぎる。


「ふふ・・・」

微笑む妻が眩しく感じた。


その後ろに立っているアイツがいる。

俺は口を開けて見つめていた。


(おい・・幸せそうだな・・・?)

笑う表情が懐かしい。


十五歳の頃のヤツだ。

殴り合った時の情熱が蘇る。


(良かったな・・・)

呟く声が遠ざかっていく。


「おい、行くなよっ・・・」

思わず叫んだ。


不思議がる妻が見つめていた。

俺は彼女が抱いている娘ごと両腕で包み込んだ。


愛している。

愛することができる。


そんな幸せを噛み締めて。

俺はヤツに感謝した。


俺の親友。

俺の、そう。


永遠のクラスメートに。

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永遠のクラスメートへ 進藤 進 @0035toto

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