第5話 夕暮れ
消毒薬の匂いが漂っていた。
北の外れに位置する理科教室。
その脇の階段下に彼女が待っていた。
小さな身体を窮屈そうにして。
俯く顔は忘れようも無くて。
大好きで。
大好きな。
初恋の人だった。
「山本さん・・・?」
俺は十五歳の少年に戻って問いかけていた。
何も言わずに顔を上げた瞳が潤んで光っている。
大きな目、小さな顔からこぼれそうだ。
熱いものが込み上げる。
校舎の灰色の風景の中で少女だけが色づいていた。
夕暮れのオレンジ色が長い影を落としている。
十年前と同じように。
少年の俺は。
おずおずと。
告白したのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます