『住民を暴行し猫を盗もうとした男、強盗致傷で逮捕

(曙新聞 二〇二五年五月二十二日)』


 ※※県警は昨夜、自称会社員の蘭堂公太(二十七)を、不法侵入及び強盗致傷の疑いで逮捕しました。

 警察の調べによると、蘭堂容疑者は、知人男性(二十八)宅に押し入り、同居していた土田星那さん(二十二)を刃物で切り付け、二人が飼っていた飼い猫を盗もうとしました。

 蘭堂容疑者は「猫を盗もうとしたつもりはない」「知人男性宅で少女が拉致されているので救出しようとしただけだ」「邪悪な土星猫は殺さねばならない」と容疑を否認。蘭堂容疑者と知人男性との間には面識があった事もあり、警察は引き続き捜査を続けています


 ハトやイソヒヨドリ、そして時にはハクビシンなどが現れる公園のベンチに、新聞がそのまま放置されていた。置き去りにした事を忘れたのか、はたまた新聞であるからわざと放置したのか。そんな事は、公園にたむろする鳥獣には解らない。

 従って、新聞の三面記事にある奇怪な事件についても、誰も気にも留めないであろう。


 と、ベンチの上に一匹の猫がひらりと飛び上がった。普通の猫ほどの大きさではあるが、毛並みは緑や青紫に輝き、宝石のごとき光沢を放っている。

 猫と言うには異様な姿をしたそれは、新聞に顔を近づけた。一字一句読み進めているかのように、猫の頭が動いている。

 最後の一文まで読み終えた所で、猫は顔を上げた。その顔には、何処か勝ち誇ったかのような、ほくそ笑むような笑みが浮かんでいたのだった。

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狂気猫 斑猫 @hanmyou

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