4日目・続
次起きた時には可能性の雨は止み、希望の日差しが降り注いでいた。
午後13時
今日は特にすることがない、今日はというか今日も、この前庭を好きにしていいと聞いたのでどうせなら少し手を付けてみようと思う。
「庭、好きにしていいんだよね?」
<ええ、でもあまりに変な趣味の花を植えるようじゃ少しいやかもね>
「そんなこと言わなくてもわかってるよ」
さて、何をどうしようか、裏庭には櫟や樫、榛の木や栗の木が互いの邪魔をしないように伸びている、田舎だから庭はあり得ないほど広い、少し進むと赤く輝くルビーのような野イチゴの群生でおおわれていた。
それを踏まないように気を付けて歩いた、赤く輝き、瑞々しくやわらかな傷つきやすい宝石、足元に神経を集中させ野イチゴと木々の群生地を抜けると、気づけば庭を抜け緩やかな丘に差し掛かっていた、宝石の波はここまで届いておらず、かやつり草などがまじった行儀芝が丘一面を覆っていた、開けた丘にはあたたかく生温い夏のにおいがする風でおおわれていた。
僕は頂上と思わしきところにぽつんとたたずむ切り株に腰を掛け、遠く、遠くの薄青に輝く山に見入った、風が僕の周りの木々をそよがせてゆき、遠くで小川が流れるようにメジロが泣き続けている、手を加える必要はなさそうだ。
ここにきてからまだ四日しかたっていないのに随分と疲れた、学校にも行かずバイトだけしてるような人生じゃそんなもんか。
「家に帰りたい」
そんな言葉が嘘を吐く時のように口から流れ出てきた、ホームシックには絶対にならない自信があったが、珍しいもんだ。
『ホームシック?あんたってやっぱり変ね、弱いんだか強いんだか』
今一番聞かれたくないやつに聞かれてしまった
「みんな強がってるだけだよ、俺もれいかも。」
『そうね、私は違うけど』
そんな会話をし終えて10分は経った
「帰ろうか」
そう呟いて、歩いてきた道をなぞって二人で帰った
自分の部屋につくとどっと体に何かが落ちてきた、眠気、だるさ、他人からの期待、目線
今日はもう寝よう
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