3日目

 聞き飽きた蝉の歌に包まれながら目を覚ます、午後13時、どうなっている、いつ世界は歪んだんだ、こんな虚無に包まれながら起きるのは初めてだ。


 昨日の銭湯上がりのれいか、とてもきれいだった、だが決してこれは恋ではない、美術品を見た時の第一印象と同じ気持ちだ、彼女の桃色に染まる頬に漂う石鹸のにおい、艶やかな髪、僕も思春期だ、ほてった体には少し毒にも思える一夜であった。


 とりあえず、昼飯を食べよう。


「おはよう、おばあちゃん今日の昼飯何?」

<遅いと思ったらなんだいその頭、今起きたのか、そうめんだよ>

「今起きて悪いね、いただくよ」  


 二日連続で麺類か、気乗りしないが、いただけるときにありがたくいただいとかないとな。

どうやられいかは散歩かなんかに出たらしい、いい趣味だ。

だらだらとお茶を注ぎ、麺をすする、こういう日があってもいいな、そう思わされた

ひと時だった。


 母に連絡でも入れておこう。

下から声が聞こえる、悪魔の誘いだ。


<暇だったら洗濯を手伝ってくれないかしら!>


 バイトの次に嫌いな家事だと?

まあいいか、せっかく来たんだからこの際経験だ。


 おばあちゃんは僕に大鍋で湯を沸かしてくれと指示した、なにするんだ?

洗濯なら洗濯機があるだろうし、庭の手入れにしても下手したら花が枯れてしまうじゃないか。

 そう思っているとおばあちゃんは各部屋から布団のシーツと洗面所から石鹸をとってきた、するといきなりシーツと石鹸を鍋の中に入れて煮始めた。


「おばあちゃん、これ晩飯とか言わないよな。」


少し間が開いて答える


<そんなわけないじゃない、少ししたら取り出して外に置いてある水の入ったたらいに入れて足踏みして洗ってね、もちろん裸足で>


「はいよ」


 いわれなくても裸足になるのはわかっているが、なぜこんな古いやり方をするのだろうか、そう思いながら足踏みしているととても変な気持ちになった。

冷たい水が足元でパシャパシャと音を立ててはしゃいでいる、踏んでいるうちに泡が出てきて水が濁る、言われてないがすすぎに入ろう、水を入れ替えるとキラキラと熱い陽の光を絶え間なく反射している、きれいだ。


<ひろくん!終わったら絞って物干し竿に干してくれる!?>

「はいよー」


干し終わったシーツは驚くほど真っ白になっていた、さすがに疲れたな。


<今日はこれだけでいいわ、ありがとね>


 今日は、だと?

そんなことを思いながら火もつけず煙草をくわえて庭を見ているとおばあちゃんが言う。


<そんなに花が好きなら端っこに空きがあるから畑つくるなり花植えるなり好きにしていいわよ、あと洗濯機がとまったら干しておいてくれる?>


 それもいいな、気が向いたらやるか、部屋に戻ろう。


 ジッポライターで火をともしてすこしするとれいかが帰ってきた。


『そのたばこどうにかならないの?毎日臭くてしょうがないわ、それにガキのくせにかっこつけててださい』

「そんなこと言われなくてもわかってるよ、控えるからもういいだろ、ていうか部屋に入るならノックくらいしなよ」


 食い気味に答える、実際に言われると結構ささるな。

れいかはいいたいことを言って去ってしまった、にしても今日は白いワンピースにカンカン帽か、ありきたりだが黒い髪に田舎というのも相まっていいな。


ピピ、ピピ、ピピ


なんだこの音...洗濯機か、干さなきゃ


 順調に干していくと違和感のある感触があった、とりあえず洗濯かごから取り出すとこれは...パンツだ、見覚えはないので俺のではない、これはひょっとするとひょっとするなと思いながら洗濯を続ける。


洗濯が終わった後れいかが自室からおりてきた


「暇だったなら洗濯手伝ってくれてもよかっただろー」

『生憎私は暇じゃない、の、よ...全部あんたが干したの、?』

「そうだよ、俺にしてはよくやったほうじゃないか?」

『そんなのしらない!』


顔は見れなかったが捨て台詞を吐いて行ってしまった、俺の予感は的中したらしい。


晩飯は味噌汁に白米、焼き魚にきんぴらごぼうだった、流石にアニメで出る田舎飯すぎやしないか?と思いながら完食した。















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