2日目・午後
蝉が大声で統一の取れてない合唱をしている、無人駅だから駅員はいない
そして利用客すらもいない、こう誰もいないと不安になる。
ふらっと喫煙所に入り自販機でucc coffeeを買う。
火をつけ、缶を開け、飲み干す、煙草を吸うときはいつもこんな感じだ。
持ち手があったかくなってきたくらいで火を消す。
喫煙所から出たとき僕の心臓は止まっていたと思う。
どういう風の吹き回しなんだ、なんでこんなとこに警察がいる。
そんなことを思いながら背筋を思いきり伸ばして歩く、こういうのは胸張るのが大事だ。
特に何事もなく警察の視界から外れることができた。
びくびくするくらいなら煙草なんか吸わなきゃいいのにと思うが、やる理由も辞める理由もないので惰性で吸ってしまうのである。
町に向かおう
おばあちゃんのいる街に来ると(町というか村のようにしか見えないのだが)
二年前には見なかった色白で黒くなびく髪を持つ少女がいた、たぶん僕と歳はそう変わらないだろう、越してきたのか?
僕は柄にも合わず話しかけることにした。
「初めまして、最近ここに越してきたの?」
ただのご近所トーク的なノリだ
『そう、半年前に越してきた花邑麗華、あなたは?』
「ここに住んでる吉田っておばあちゃんの孫の宏樹、小川宏樹、よろしくね」
そう、僕は知っている、名前の後にフルネームを言うとちょっとかっこよくきこえることを、こりゃ決まったな。
『最初からフルネームを言えばいいじゃない、とても無駄ね。』
「ひ、ひどい」
『あなたこそ見ない顔だけど、今引っ越してきたの?』
「おばあちゃんに顔出しに来ただけだよ、でも二週間近くはいるかな」
僕は煙草を取り出し火をつけた
「そう、じゃあまたあとで」
彼女はそう言ってそそくさと行ってしまった、煙草が嫌だったのか?
またあとで?
変な女だ。
町を散策しながら写真を撮り、蕎麦屋で飯を食って早3時間、そろそろいくか。
田舎というのは無防備なもんで、多くの人が家に鍵をかけていない。
カラカラカラ...
「ばあちゃーん!かえったぞー!」
まあ、僕の家ではないんだが
『そんな声出さなくても聞こえるわ、あなたってホントに無駄ね』
「なんで君が...
そんなことを思った瞬間床の間から怒号が飛んできた
【こっちきなさい】
僕は聞き逃さなかった、花邑が鼻で笑ったのを。
今日のとこは逃してやる。
今日のとこは3時間の説教で許してもらえた、二階祖父の部屋を借り、その部屋であれば煙草は吸っていいらしい、ありがたい。
にしてもどうやら僕はこの家のカーストの最底辺にいるらしい、詳しいことは明日朝聞くことにしよう、とにかく今日は疲れたから銭湯に行こう。
「ばあちゃん、僕銭湯に行ってくるね。」
<はいよ、足元気を付けるんだよ>
『銭湯行くの?私も行く』
<はいはい>
なんなんだこの女は、そんなことを思いながら二人で外に出た。
「なんで花邑さんは僕の祖母の家にいるの」
『あんたの伯父さんの男友達が私の父親、両親二人とも死んじゃって、親族も金銭面で引き取れないってなったときあんたの伯父さんが来いって言ってくれたの、あと麗華でいいわ』
「それは災難だったね、まそんなのどうでもいいや、よろしくれいか」
『聞いたくせにずいぶんひどいこと言ってくれるわね』
そのあと特に何もなく家に帰り、そのまま寝た。
晩飯を食う気力はなかった。
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