外伝 桜の想い
わたしは目の前の光景が上級生にいじめられる場面だと一瞬で理解した。
「さくら子ちゃんに手を出すな!」
彼はいじめられていたわたしの前に素早く現れ庇ってくれた。そしてわたしを安心させてくれた。
「ゆう人君、お鼻から血が出てるよ!」
「このくらいのけがなら大じょうぶだよ!」
彼はニコッと白い歯を出して笑った。彼はヒーローみたいにかっこ良く見え、その笑顔に心が落ち着かなかったのを今でも覚えている。
目が覚めた。まだ純粋だった頃の夢を見ていた気がする。
「おはよう。お姉ちゃん」
リビングに向かい、お姉ちゃんの遺影に挨拶をした。
お姉ちゃんはわたしが中学2年生の時交通事故で亡くなった。居なくなる前は成績優秀で品行方正なお姉ちゃんばっかり可愛がられた。でもお姉ちゃんが亡くなってからわたしは漸く両親から可愛がいがられると思ったがお姉ちゃんが居ない当て付けで毎日「何でお前が生きているんだ!」と言われるばかりだった。…、でも正直お姉ちゃんが居なくなって良かったと思ってしまっている自分が少しだけ心の中に居た。
そこから学校でもいじめが酷くなりわたしは不登校になった。
「治るまで一緒に居る?」
彼の言葉には優しさで溢れているからまたわたしは彼の優しさに甘えてしまった。優君が特別な存在になったのもこの頃だろう。
そして現在に至った。
「おはよう優君!」
いつも通りに挨拶をし、何も変わらない様に見せる。
これはずっと行っている。
その後、朝御飯を食べてわたしが行きたい遊園地に連れていってくれた。
遊園地に着いた。道中のバスの中でははぐれない様に手を繋いでくれたり、歩いている時は何も言わず車道側を歩いてくれた。
「ジェットコースターでも良いし、気は乗らないけどお化け屋敷でも良いよね。…うーん、わたしジェットコースターが良いな~」
狙って可愛い声を出した。
「…分かったよ。ならジェットコースターにしようか」
興味なさそうにスルーされた。
ジェットコースターは思わず声を出してしまうくらいには楽しかった。優君は途中で失神していたけど。
周囲の人にも手伝ってもらって優君をどうにか一番近くのベンチにわたしが膝枕する形で寝かせた。
「ぐっすり眠れた?優君」
お姉さんみたいな優しい声で頭を撫でた。その後の行動で彼の顔が紅潮していた。何故だか胸の高鳴りが治らなかったけど。
お昼時にまず有名な神社に行った。『優君との関係性をもっと深めたい』そう願ったら風が強く吹いてわたし達に2枚の花びらが落ちてきた。わたしのは手に乗った瞬間に8枚に増えて優君のはすぐに枯れた。何で増えたり枯れたりするのか不思議だった。伝説の存在を今思い出し彼と笑い合った。彼の顔は明るくなかったけど。
レストランに行き、料理を頼んだ瞬間に吉野君から電話がかかってきて、物凄く怒っていて唇から血が出てて何かがあったと分かった。…オムライスは美味しかった。
その後はまずお化け屋敷に行って、わたしが気絶した後に仕返しされた。彼が心配そうに見つめていて、わたしは「だ、大丈夫だよ」と言って恥ずかしくて目を逸らしてしまった。
それと立体迷路に行った。
「優君、先行ってるね」
入ってから5分でわたしは待ちきれなくなって先に行った。
「15分でゴールしたのは貴方が初めてですよ!」
ゴールの鐘を鳴らしてらスタッフさんが凄く驚いていて、わたしは飛び上がる程嬉しかった。
「疲れた…。桜子速すぎだよ、今度からもう少し僕にペースを合わせてくれないかな?」
わたしの35分後にゴールした彼は到着早々にわたしにお願いをしてきた。何かに悩んでいる様だから表情を晴れさせる方法を考えていたけど、わたしが頷いた後に彼の顔が晴れたためつい「良かった」と呟いていた。
「急がないと乗れなくなるよ!」
観覧車に乗る前に言ったこの言葉で彼の顔は紅潮していておまけに目も合わせてくれなかった。わたしは訳が分からず右往左往していたけど、原因がわたしだと勘付いてしまった。
「…そんなにさっきのわたしの顔可愛かった?」
暫くの間お互い沈黙していた。わたしは沈黙を肯定だと捉え更に恥ずかしくなった。恥ずかしそうに目を逸らす優君が可愛かった。
その後に優君に引っ張られて観覧車に乗り頂上に着いた。わたしはその景色に釘付けだった。そこで彼に「お昼頃から無理して笑ってない?」と伝えると彼は首の横を掻きながら「そんなことないよ」と言った。彼のそれは嘘を吐いている時の反応だから即座に訂正した。「君をいじめる様に指示した黒幕は君の親友の高尾湊羽だよ」
余りの衝撃に最初わたしは彼がまた嘘を吐いたのだと思った。けど彼は吐いておらず、わたしの頭は真っ白になってた。彼は泣き止むまでずっとハグをしてくれた。
観覧車が一周する迄には収まった。そして帰り道の途中でお花屋さんを見つけた。わたしは優君にピンクのゼラニウムを買ってもらった。その後わたしは外に追い出された。待っていると彼が、フラワーアレンジメントを渡してくれたから凄く嬉しかった。お家に帰ってネットで調べているとこの感情が恋だと気付いた。…優君は振り向いてくれるかな。
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