羽田支局-新人の1日
━━━━━━━━━━━━━━━
…いつも通り仕事しろと言われ他にはいいものの、そんな事もちろんできるわけが無い。気が気では無いのだ。
高橋 「代理、どうします」
斎藤 「まぁいつも通りつってたし、普通に仕事しとけば?」
高橋 「そういう代理は何をなされるのですか?デスクの書類はもう終わってますよね?」
斎藤 「げ……いつから気づいてた。」
高橋 「何年あなたの元にいると思ってるんですか?」
斎藤 「まぁそうだな…とりあえず暇なら屋上でも行ってこいよ。」
斎藤 「あーそうだ花道」
花道 「なんスかー」
斎藤 「お前の警戒武器、それ狙撃とかに使うやつだから屋上で試しに高橋に使い方教わってこいよ。」
花道 「わーしたー」
高橋 「…なるほど、分かりました。着いてきてください。」
そういうと花道さんと高橋先輩はデスクを後にした。
厳戒態勢だと言うのに呑気な指示なものである。
平川 「私は!!!」
斎藤 「お前は書類まだ終わってねぇだろ」
平川 「はい…」
あぁ撃沈された…
「課長、自分は」
斎藤 「あーーー………」
斎藤 「仕事も特に今んとこ無いしなぁ…どうしよ」
斎藤 「…いいや!お前も上行って見てきな」
「はぁ…?」
斎藤 「なんかあったら高橋のやつに連絡スっから。」
━━━━━━━━━━━━━━━
局の中は忙しなく人が行き来し、いつもの静けさが嘘のようである。俺はゆっくりと階段を上り屋上へ向かう。屋上は喫煙所も兼ねて居ていつもそれなりの人数が居る。扉を開けると今日はやけに賑わっていた…殆どは煙草ではなく双眼鏡片手に空港を眺めて居るの職員だった。
高橋 「おや、加藤くんも言われたのですか?」
「はい、暇なら見てこいと」
高橋 「なるほど、ではこちらを」
そういうと主任は双眼鏡を渡してきた。
「…?なんですか」
高橋 「偵察です、私はこちらのスコープで見れますので」
そういうと主任は自前の武器を見せてくる。
職員 「お前らどこのやつ?」
職員 「随分とキワモノ持ってんじゃねぇか」
野次馬の他課の職員が集まってくる。
高橋 「新人教育中でしてね、使い方を教えています。」
職員 「確かにちょうどいいな、こんな時だからもってこいだな。」
職員 「動きあったか?」
職員 「いや特には」
無線機と双眼鏡を交互に確認しながら他課の職員達はターミナルの方を見ている。
高橋 「加藤くんも覗いて見てください。」
そう言われ貸してもらった双眼鏡を使い野次馬の一員に加わった。
━━━━━━━━━━━━━━━
しばらくすると先輩の携帯に着信が入った。相手を確認すると片手で銃を抑えながら電話を取り、通話を始める。
斎藤 "もしもーし?どう?状況"
高橋 "恐らく犯人は1人、身体に爆弾を巻いて手にスイッチを持ってるのが確認できますね。"
斎藤 "なるほー、とりあえず二階までの職員、乗客は全員避難完了だってさ。今は一警とサツが囲ってっからまぁそんなデカい被害にはならねーだろ"
斎藤 "動きあったら教えてなーそれじゃ!"
課長と主任が電話しているが、緊張感を全く感じない。まるで対岸の火事だ。
しかし双眼鏡だけで見るのも疲れるな…そうだ!
━━━━━━━━━━━━━━━
羽田空港には防犯のために幾つものカメラが点在する。映像は一課が管理する空港内の監視室に送られる。基本的にはアクセス権限は一課の人間が持っていて、他の課は所有していない。だが今は緊急時なので室内のモニターに堂々と映像が共有されている。
俺は三課のデスクに戻りパソコンを開く。
斎藤 「おかえり、何してんの」
「映像を見ても?」
斎藤 「いいけどそれで見れんの?」
「物は試しにと」
斎藤 「あーそう、上持ってくんでしょ?みんなで仲良く観戦しときな。なんかあったら呼ぶから」
「分かりました。」
そう言って俺はまたデスクを後にした
━━━━━━━━━━━━━━━
高橋 「おかえりなさい…?パソコンなんか持って来てどうしたんです?加藤君。」
「これです」
そう言うと俺はパソコンを見せた。
高橋 「これはカメラの映像…、許可とかは…まぁとってそうですね。あの人の事ですし。」
ノートパソコンに防犯カメラの映像をリアルタイムで映している。さすがに不正アクセスをしようもんならクビになりかねないので課長にやんわりと許可を頂いた。やろうと思えばできなくは無いが今のこの仕事を失うのは自分の信念に反するので止めたという具合だ。
ノートパソコンな為画面が小さく、全ての映像を映すほどのサイズは無いので犯人が写っているカメラにだけフォーカスしている。
現場は膠着状態、特に何かを要求する訳でも無く時間だけが過ぎていく。
━━━━━━━━━━━━━━━
同時刻
羽田支局-三課にて
新岡 「動きないねぇ…」
斎藤 「っすねぇ〜、まぁまだ死人が出てないだけいいんじゃないッスかね〜」
新岡 「まぁそうだけどさ…、さすがに仕事手付けらんないよねぇこの調子じゃあ…」
斎藤 「今日は3班だけでしたっけ?休みなのは」
新岡 「そうだね、まあこんな事があった以上今招集かけてるけどさ…ホント申し訳ないよ…」
斎藤 「まぁこういう仕事ですししゃーないっすよ。」
斎藤 「3T担当の2班は既に避難誘導終わって一旦帰局すか?」
新岡 「一応念の為3Tに爆発物とか落ちてないか点検させてるよ、ウチ(1班)の班員も応援出してやらせてる。斎藤君とこは?」
斎藤 「新人が長距離適正あったんで上で監視してますよ。」
新岡 「珍しいねぇ…長距離適正とはまた。こんな時に持って来いじゃないの。」
斎藤 「こんな時以外使うとこないすけどね狙撃なんて、まさか来て早々役に立ちそうになるのは嬉しいような悲しいような。」
新岡 「まだ新人だもんねぇ…頼むよホントに?この壁を乗り越えられなかった子は沢山いるんだから」
斎藤 「そッスね…」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます