第10話 サキの願い
教室の中で、サキ――かつてヒナだった少女は、ぼんやりと空を見上げていた。
名前も、制服も、まわりの友だちも――
どれも見覚えはないのに、不思議と懐かしい。
(……これが、願った未来?)
教室の後ろの棚に、見覚えのないノートが置かれているのに気づいた。
表紙には、手書きの文字でこう書かれていた。
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『星を売った少女の日記 つづき』
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(まだ……終わってなかった?)
サキがそっとページを開くと、中には彼女が知るはずのない出来事がびっしり書かれていた。
ヒナとして生きた日々。
星を売る屋台。
カレンやサキ(もう一人の)との出会いと別れ。
けれど、最後のページで彼女の手が止まった。
そこには、こう書かれていた。
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「次にこの日記を読む人が、“本当のヒナ”」
「そうでなければ、この世界はまた――書き換えられる」
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「……私が、“本当のヒナ”?」
その瞬間、教室のドアが、コン、コンとノックされた。
まわりの生徒たちは動かない。まるで止まった時間の中にいるようだった。
ゆっくりとドアが開く。
入ってきたのは――
サキだった。
白いワンピース。あの星の中にいた、小さな“ヒナ”の姿をしたサキ。
「やっと見つけたよ、わたし」
サキ(ヒナ)は、まっすぐに歩み寄ると、机の上の日記を手に取った。
そして、こう言った。
「――返して。これは、わたしの物語だから」
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