第7話 星の契約

「それを忘れたとき、あなたは“わたし”になるのよ」

偽ヒナの声が、耳の奥でこだました。

ヒナは必死に思い出そうとした。

自分はどこで生まれた?

誰と過ごしてきた?

何を、夢見てた――?

でも思い出すたび、なぜかそれが「誰かの記憶」に見えてしまう。

(これ……本当に、私の……?)

足元に転がる“星”の中で、未来の4人がひとりずつ、砂のように消えていく。

まずカレンが、

次にサキが、

そして偽ヒナが。

最後に残ったのは、ヒナひとりだけだった。

(……私が、生き残った?)

その瞬間、空間がねじれるようにグラリと揺れ、目の前の景色が崩れはじめた。

家の壁が、床が、世界そのものが“ガラス”のようにパリンパリンと割れていく。

崩れた先に見えたのは、真っ白な空間。

ただ一冊のノートが、ぽつんと浮かんでいた。

ヒナは吸い寄せられるように手を伸ばす。

ノートの表紙には、こう書かれていた。

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『星を売った少女の日記』

著:星乃サキ

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「……え?」

ヒナがページを開いたとき、最初の一行に目を奪われた。

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今日は、ヒナの未来を買い取った。

これで私は、“ヒナ”になれる。

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その瞬間、誰かが後ろからヒナの肩をつかんだ。

「――もう、終わりにしようか。“サキ”」

耳元でささやいたその声は、

――まぎれもなく、ヒナ自身の声だった。

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