第7話 星の契約
「それを忘れたとき、あなたは“わたし”になるのよ」
偽ヒナの声が、耳の奥でこだました。
ヒナは必死に思い出そうとした。
自分はどこで生まれた?
誰と過ごしてきた?
何を、夢見てた――?
でも思い出すたび、なぜかそれが「誰かの記憶」に見えてしまう。
(これ……本当に、私の……?)
足元に転がる“星”の中で、未来の4人がひとりずつ、砂のように消えていく。
まずカレンが、
次にサキが、
そして偽ヒナが。
最後に残ったのは、ヒナひとりだけだった。
(……私が、生き残った?)
その瞬間、空間がねじれるようにグラリと揺れ、目の前の景色が崩れはじめた。
家の壁が、床が、世界そのものが“ガラス”のようにパリンパリンと割れていく。
崩れた先に見えたのは、真っ白な空間。
ただ一冊のノートが、ぽつんと浮かんでいた。
ヒナは吸い寄せられるように手を伸ばす。
ノートの表紙には、こう書かれていた。
________________________________________
『星を売った少女の日記』
著:星乃サキ
________________________________________
「……え?」
ヒナがページを開いたとき、最初の一行に目を奪われた。
________________________________________
今日は、ヒナの未来を買い取った。
これで私は、“ヒナ”になれる。
________________________________________
その瞬間、誰かが後ろからヒナの肩をつかんだ。
「――もう、終わりにしようか。“サキ”」
耳元でささやいたその声は、
――まぎれもなく、ヒナ自身の声だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます