第5話 開けて、ヒナ

「ヒナ……開けて。今すぐ逃げないと、“サキ”が来る」

カレンの声。でも、消えたはずのカレンが、なぜ?

ヒナはゆっくりドアに手を伸ばした。

けれど――

そのとき、スマホの画面が真っ暗になり、自動的に動画が再生された。

画面の中には、見覚えのある風景。ヒナの部屋。

そして、動画の中のヒナが、こちらをまっすぐ見つめている。

けれど次の瞬間、画面のヒナの目がぎゅるりと黒く反転し、別の声が話し始めた。

「こんにちは、“ヒナ”」

「本当の君は、どっちかな?」

その声は、サキのものだった。

画面の中のサキが笑って言った。

「私、あなたの名前、思い出しちゃった。

でもね、それって私があなたになった証拠なの」

動画がプツッと切れると、ドアが**ガチャ……**と音を立てて開いた。

そこにいたのは――確かにカレンだった。

でも、カレンの目はどこか焦点が合っていない。

「ヒナ……逃げて。あの子、“わたしのふり”をしてるの」

ヒナが後ずさると、カレンの後ろからもうひとつの足音が近づいてくる。

「ダメだよ、カレン。ヒナは今、選ぶところなんだから」

ヒナは声の主を見ようと振り向いた。

そこにいたのは――

自分と同じ顔をした“ヒナ”だった。

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