第4話 名前はサキ

ヒナは震える手で写真を裏返した。

そこには、油性ペンで何かが書かれていた。

「ヒナのかわり:サキ」

サキ――?

知らない名前。知らない顔。

でも、なぜか心の奥がズキリと痛んだ。

「この子が、“私”になったの……?」

その言葉が頭の中でぐるぐる回る。

ヒナは再び“星”をのぞき込む。

未来の景色の中では、今や完全に“サキ”がヒナの席に座り、

先生に名前を呼ばれるたび、笑顔で「はい!」と返事をしていた。

クラスメイトも、先生も、みんな自然に接している。

まるで――最初からその子が「ヒナ」だったかのように。

「……私が、いなくなっても、誰も気づかないってこと……?」

ヒナの指が震えたそのとき、突然、“星”にヒビが入った。

ピキィィィンッ!

「えっ……!?」

ガラスの星が割れ、その破片の中から――“もうひとつの手紙”が落ちてきた。

ヒナは破片をかき分けて、それを拾った。

そこには、たった一行だけ、こう書かれていた。

________________________________________

「ほんとうに消えたのは、“君”じゃない。」

________________________________________

ヒナは読み返す。けれど、意味がわからない。

じゃあ、誰が消えたの?

……と、その瞬間。

部屋のドアが、**トン……トン……**と、ノックされた。

ヒナはおそるおそる立ち上がる。

外から、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「ヒナ……。ヒナ、開けて。今すぐ逃げないと、“サキ”が来る。」

――その声は、カレンの声だった。

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