COCKTAIL　IN　THE　COSMOPOLITAN

21:00

久保田さんの映画話も佳境にはいり、

川上さん夫婦が来店。

川上さん、いらっしゃいませ！

矢野さん、いらっしゃいませ！

マスターきたよ〜

っと女性の方のお客様矢野さん。

マスター、今日もごめんね！また、矢野酔ってます。

と男性の方のお客様川上さん。

実は2人は夫婦ではない。

お互いに子供も育てあげ、セカンドライフを楽しんでいる60代カップル＆上司と部下のダブル禁断の愛カップルだ。

矢野さん！もう、酔ってるんですか？

白州はいりましたよ！

あら！本当に！[拍手]

(拍手をしながら白州とダジャレ)

じゃあ、マスター、白州を矢野に。僕はお水タップりとフルーツのカクテルで！

と優しく会話をまとめる川上さん。

バカラのロックグラスの磨き具合をカウンターの隅のライトで確かめ。キュッキュッとバーディのグラス磨きで一吹き。

まな板にシャインマスカットを5粒並べ、それぞれを4等分にして、ミキサーに入れ、角氷とミスティアマスカットリキュールとグレープフルーツを半玉搾る。

ミキサーのスイッチをオン。

冷凍庫から、丸氷を出してバカラのロックグラスに入れ、白州を優しく注ぐ。

グラスがうっすら霜だつまで、ステアする。

そうこうしているとミキサーの中の氷も良い感じに砕け、とろ～りフローズンになっている。

チューリップ型グラスにフローズンを入れ、グラスのエッジにシャインマスカットを一粒さす。

ストローとミニスプーンを添えて。

お待たせ致しました。フローズンシャインマスカットと白州ロックです。

ありがとうマスター！マスターも1杯どうぞ。

ありがとうございます。

既に用意したグリーンラベルをグラスに注ぎ。

すいません！頂きます！

カンパーイ！

3人で乾杯。

いつものルーティンだ。

マスター！こっちも！メキシコーラで。

久保田さんからも、ご注文だ。

テキーラのコーラ割り。レモンカットを優しく絞り入れる。

はいどうぞ！

その時だ。

4人のスマートフォンが一斉に鳴り響いた。

嫌な音。

蛇が這うような、緊張感を漂わせるような音。

地震だ。

地面から巨大な何かが唸り声をあげるような、音。

室内を大きな鉄球か何かで思いっきり殴られたような衝撃。

棚からこぼれ落ちるというより、飛び出してくるグラスやボトル。

矢野さんの悲鳴。

すかさず私は、銅製の重たい扉を傘立てで開けっ放しにした。

まだ、揺れている。

照明が消える。

非常灯だけの室内。