第2話 彼女との出会い
そこで出会ったのが私にとって愛してやまない、今無惨な姿で私の腕に力なく全身を預けている女
彼女の名前は凛。
その名の通り、どこか冷たい雰囲気をまとった気品漂ういかにも男ウケの良さそうな体付きをした女の子だった。
色白の肌に浮かぶ気の強そうなくっきりした目元。
その瞳にはなぜか吸い込まれそうな光があった。
彼女は私よりも二歳年上だった。
彼女はここで働いているわけではなく、彼女の友達がこの店のNo.1らしく、誕生日のお祝いにきていた。
体験入店で何の役にも立たない私と幼なじみは、苦情が来ることもないその凛が座っている席に座らされた。
彼女はどうやら私と同郷で、地元にいたときは街一番の繁華街の夜の店で有名なキャバ嬢だったらしい。
彼女は東京に旅行に来た際、スカウトされたことをきっかけに数ヶ月前に上京し、
芸能事務所に所属していた。
芸能事務所とはいっても、出演作は夕方のサスペンスドラマのエキストラのような役や、再現ドラマに出演している程度のまだ無名の女優だった。
特別絶世の美女ではないが、
話せば話すほどなぜか惹かれる、魅力的な人だった。
今思えば第一印象から、ずっと変わらない。
出会ったその日から今に至るまで。
彼女は自分にないものを持っていて、魅力的で歯がゆい存在となった。
そして、この日から私の人生は大きく変わったったのだ。
その日私達は意気投合し、彼女からの誘いで、仕事が終わったあとにカラオケに行こうと約束をし、連絡先を交換した。
彼女は閉店間際まで滞在し、客としてきていたのにも関わらず、バースデーイベントで忙しい彼女の友達の代わりに、お客さんの相手をしていた。
彼女は手際よく、そして見とれるほど美しい所作でお酒を注ぎ、気持ちのいい相槌で主役不在の席を華やかに盛り上げていた。
閉店後に店のボーイから茶封筒に入った日当を受け取り
足早に彼女の待つカラオケ店へ向かった。
体験入店も無事終わり、
またも新しい出会いに胸が高鳴った。
今思えばあの日以上に気持ちのいい頬に触れる夜風はもうないだろう。
神様の言うとおり/奥村ヒカリ @hikari_okumura
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