Head shot!
しるふ_
第一話
「今日は…ここで最後か」
僕、姫川一希は現在怪しいバイトをしています。その内容は指定された場所に封筒を置くというものだ。
この内容で日給一万五千円。
これがもし、犯罪や良からぬことにつながっている可能性は高い。
しかし、世の中には手遅れという言葉がある通り、僕はこの仕事を既に半年は続けている。
それもこれもすべて家族のためだ。
「よし、今日の分終わり」
僕は帰路に着こうと体を家の方向に向けた。
「こんなとこで何してんの?」
「…」
後ろを振り向くと女性が立っていた。
まずい。
ここは立ち入り禁止区域の廃墟群だ。
人に見られ、通報でもされれば一発で刑務所行きだ。
その場合この人もだろうけど。
焦った僕はそんな事を考えながら足に力を入れる。
「はぁ!?」
僕は驚くその人を尻目に一瞬で壁をよじ登り、廃ビルの屋上に降り立つ。
廃墟が多いここなら一般人くらいすぐ撒ける。
別に焦らなくてよかったな。
「…なんで逃げるかなあ」
後ろから人の声。
その声とともに背後からまた別の誰かが接近してくる。
「ッ!」
僕は足を払われ、見事に取り押さえられる。
こんな芸当ができるのは…
「プロテクターですか…」
「大正解だ」
「何のようですか。善良な一般市民を捕らえて。何が目的ですか」
「立入禁止区域に足を踏み入れたやつを善良な市民とは言わない。何より、逃げたってことはやましいことがあるんだろ?」
その人はニヤニヤと笑い、そういう。
プロテクター。
またの名をGS。
彼女らの登場は十五年前の戦争から始まり、現在はプロテクトという団体を結成し国を護る第三の勢力となっている。
「ちょ、何してるんですか!?この拘束解いてくれません?あとこの上の機械なんですか?」
僕はその後、二人に連れられプロテクター達が寝泊まりするホームという場所に来ていた。
僕は今から一体何をされるのだろうか。
少し、怖い。
「まあまあ。そんな警戒するな。今からちょっとだけお前の’’体’’を調べるだけだ」
調べる…?まさか内蔵を取り出したり…?
考えただけでもゾッとする。
数十分後。
拘束が外された。
「終わったんですか?」
「…」
聞いても返事がない。
何やらタブレットを見ているようだが…まさか何か異常が…?
「えっと…君、一希君だったかな。親御さんと連絡取れる?」
「すみません、携帯持ってなくて…」
携帯や金になるものはとにかく売った。
親の入院費を稼がないといけないからだ。
「そうなの?今時珍しいね」
隊長さんは少し悩んだ後、言ってくる。
「では先に君の質問を聞こう。きっと色々知りたいだろう?」
その人はタブレットをプロテクターさんに渡し、再度口を開く。
「その後、私の質問にも答えてもらおう」
質問を聞く、というのは何個でも聞いてもいいということだろうか。と言っても僕が質問したいのは二つだけだ。
「では、二つ聞きます。一つ目は、なぜ僕を警察に突き出さないのか。あそこは本来立入禁止区域のはずです。二つ、なぜ僕の体を調べた後その検査結果を見て黙っていたのですか?僕の体に何か異常でもあったのでしょうか」
「質問はその二つでいいんだな」
隊長さんが目を見て聞いてくる。
「はい」
僕も目を見てはっきり答える。
「わかった。では私の質問を言うね」
「え、返答は⋯?」
「君の質問は君が、私の質問を答えたあとで説明したいと思う」
話と違うのだが?彼女の質問に答えると僕が聞いたことの答えがわかるとでも言うのだろうか。
「簡単な質問だけど」
その人は一泊を置き質問を提示する。
「君、本当に人間であってる?」
第一節 question
人生でまさかこんなことを問われることになるなんて思わなかった。
人間かどうか。つまり人造人間であるかないかという質問だろう。
「人間ですよ。造られてない。ただの人間」
再度目を見て答える。
「白を切る。という感じではなさそうだな」
当たり前だ。生まれてこの方ずっとお父さんに育てられてきた。それはもう、赤子の時から。
人造人間は殆どが高校生くらいの背丈で造られるので幼少期なんてない。だから幼少期の頃の記憶がある時点で僕が人間であることは確実だ。
「でもこの数値おかしくないですか?」
「そうなんだよなぁ」
隊長さんは大きなため息をつく。
「ていうか僕の質問に答えてください。なにかおかしいところがあったんですか?」
「う〜ん、検査結果あまり本人に見せちゃだめなんだけど一箇所ならいいか」
そういうと隊長さんがタブレットの一箇所を拡大し、画面を見せてくる。
「これは…?」
「見せられてもわからないよな。う〜ん簡単に言うと君の筋肉が馬鹿みたいに強い」
筋肉が馬鹿みたいに強い…?何を言っているんだこの人。確かに昔から身体能力は高い方だったけど。
「抽象的すぎます。そうですね、この数値だと…」
プロテクターさんは一泊をおいてとんでもないことを口にする。
「スナイパーライフルを片手で撃てます」
この人は何を言っているんだ?。スナイパーライフルを片手?言っている意味がわからない。
スナイパーライフルってあの狙撃する銃だよね。確か撃った時の反動が普通の…アサルトライフルの比にならないみたいな話をどこかで聞いたことがあるんですけど。
「冗談…ですよね?」
「試してみましょうか」
試すって何?怖い
「隊長」
「おう。射撃場空いてるから行ってきてくれ。ちょっと頭の整理とか、色々しないといけなくなった」
僕も頭の整理をしたいです。
その後、僕はプロテクターさんについて行き、射撃場というところに行った。
「これが一般的なスナイパーライフルです。昔、戦争で使われていた物より軽量化が進んでいますね」
プロテクターさんは両手で支えるようにそれを渡してきた。
「私達、人造人間でもスナイパーライフルを片手で持てたとしても撃つことはできません。もし仮に撃ったら…その日は片腕が使い物にならなくなるでしょう」
「僕にはそれができるかもしれないと?」
「…はい」
引かないでほしい。出会ったばかりの人でも流石に傷つく。顔も知らない母にもらったこの体は一般人は疎か人造人間よりも強いらしい。一体何者なんだ。
「でもそうなると疑問ですね。なぜあなたは抵抗せずに捕らえられて、大人しく拘束をされていたのですか?その気になればいつでも逃げられたのでは?」
「多分。逃げようとしてなかったと思います」
「なぜ?」
「悪いことをしていたら罪を償わないといけない日が訪れる。それがたまたま今日で僕はそれを受け入れたまでです」
嘘ではなく本心でそう答える。僕だって人の心がないわけではないのだから。それになぜかあの時、このプロテクターさんを傷つけてはいけないと感じた。
「そういうものですかね?」
プロテクターさんは少し考える素振りをして僕に向き直る。
「話がだいぶそれましたね。では、実際に撃ってみてください」
僕はそう言われたのでスナイパーライフルを’’両手’’で持ち、構える。重さはあまり感じない。
撃つときの姿勢や持ち方などはアニメや漫画で履修済みだ。
僕はスコープを覗かず、引き金に手を添える。
「あの人形の的、その頭を撃ってみてください」
人形の的には頭と心臓の位置に小さく赤い点があった。
すごい。アニメや漫画と同じだ。僕は実際にこの光景が見れた事による興奮をおさえ、深呼吸をした後照準を合わせすぐさま引き金を引く。
「…あなた経験者じゃないですよね」
「なわけないじゃないですか。さっきから言ってますけど僕は一般人ですよ?」
「ならなんで瞬時に照準を合わせただけでなく、ヘッドショットまで決めてるんですか!」
「は、はは」
苦笑い。あれなんでだろう。
このへんかなって撃ったらあたってしまった。しかもヘッドショット。
しかしなぜ僕はスコープを覗かなかったのだろう。
「しかもスナイパーの強みである、スコープまで使わず…。ま、まあ、まぐれということもありますから。もう少し撃ってみてください」
プロテクターさんに少し動揺の色が見える。
僕はその後も素早い照準合わせ&ヘッドショットを連発した。
本来の目的から随分ズレている気がするが気のせいだろう。
「おかしい。私もスナイパーライフル使いですが、あなた私より精度高いですね」
「いやでも実践では的が動くじゃないですか。僕には動いている的に当てるのは無理ですよ」
謙遜をする。いや実際止まってる的には難なく当てられるが、動いてる敵はわからない。
プロテクターさんは少し不満そうな顔をした後、何かを思い出したような顔をした。
「そう言えば、本来の目的を忘れてました。片手で撃ってみてください」
僕も忘れていた。片手で打てるか試すために射撃場に来ていたんだ。
「射的の要領で撃ってみてください」
僕は言われた通り、片手で銃を構え、的を狙う。
先程と同じく不思議と重さは感じなかった。
先程の感覚を思い出す。銃口から後部までを一直線に。
「よし」
掛け声とともに引き金を引く。弾は一直線に飛んでいき、見事、的の脳天に命中する。
「…」
プロテクターさんが言葉を失っている。
すごいってことでいいのだろうか。
「ありがとうございます」
「私まだあなたが撃ってから何も言ってないんですけど」
プロテクターさんは目の前で大きなため息をする。
ため息をつかれた側の気持ちを習わなかったのだろうか。
「片手で撃ってその精度もびっくりなんですけどあなたの集中力です。照準を合わせる時、私の声フル無視だったので」
「え!?なにか言ってました?」
僕って、そんなに集中力が高かったのか…?そう言えば中学生時代もこんな事があったかもしれない。
「腕の方は大丈夫そうですか?」
「なんとも…ないです」
あれ?もしかしたら僕、人間じゃないのかもしれない…
片手でスナイパーライフルを撃っても痛みどころか違和感すらなかった。つまり何も感じなかったのだ。
人造人間でさえ片腕が使い物にならなくなる程の衝撃をこんなあっさりと。
「僕って普通の人間なんですかね」
「さあ?どうでしょう。ですが、人造人間よりも筋肉が強い一般人はあなた以外見たことはありません」
「です…よね」
そんな事言われ、落ち込んでいると自動ドアが開く。
「隊長!」
頭の整理が終わったのか隊長さんがため息をしながらこちらに近づいてくる。
「いまリモートで警察とか上層部と会議をしてきてね。君の処遇がきまったよ」
処遇。どんなことを言われるだろうか。
おそらく選択肢は二つ。
警察に突き出すのかこのままプロテクトに引き取られるのか。
「君にはプロテクトに入ってもらう」
第二節 join the protect
Head shot! しるふ_ @shiruhu4011
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