第3話 さくら


 俺と健一は大企業日本鉄鋼の社宅で知り合った。その当時は名古屋支店に俺の父と健一の父が配属されていたので、名古屋支店にほど近い社宅で小学校から顔見知りで、やがて東京本社に栄転となり、先に俺たち家族が東京に移り住み、その後を追うように健一家族も東京本社に栄転となった。


 俺はスポーツ特待生で早稲田大学に入学したが、健一も同じで小さい頃からサッカー漬けの毎日だったが、健一は運動神経は良いが、ガッチリタイプでサッカーは平均的で才能の限界を感じたのか、その体系を利用して中学からラグビー部に所属していた。そして……健一は何とラグビーで才能を開花させ、早稲田大学にスポーツ特待生として入学できたのだ。


 2人は小さい頃から何かにつけて比較されて切磋琢磨して生きてきた。お陰で同じ大学にスポーツ特待生として入学できたのだ。


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 健一は優しい奴でいつも俺を助けてくれた。俺は小さいときはガリガリのチビで背が小さいことでなめられることが多かったんだ。そんな時決まってがっちりタイプの健一が助けてくれたんだ。


「やーいチビ介。弱虫チビ介。隼人!」

 そう言うと隼人を押し倒す悪ガキたち。

「エイ!」

 ”ドスン”

「わああ~~~ん😭わああ~~~ん😭わああ~~~ん😭」

「お前ら!💢💢💢何してんだよ。俺が黙っちゃいないからな!隼人大丈夫か?」

 と、このように幼稚園の頃はよく助けてもらった。


 俺たち2人はどこに行くにも一緒で、小さい頃は健一は俺よりも大きくがっちりしていたので、もっぱら俺は助けてもらっていた。


 だが、高校生くらいになると俺は運動神経が抜群でサッカーでも頭角を現し、身長は1年で10cm以上も伸び、あんなにチビチビとコケにされていたのが噓のように身長も伸びて180cm以上になっていた。俺は自分のことは分からないが、超イケメンと女子からキャーキャー持て囃され、大変な人気者になって行ったんだ。


 一方の健一は正しくラグビーの申し子のような体格で、身長は185cm程で筋肉質のがっちり体系で益々頼もしい存在。


 高校は違ったが2人ともスポーツマンで、俺はサッカーの強豪高校だったが、そこで成果を出し、大学はスポーツ特待生として早稲田大学に進んだんだ。


 一方の健一も将来日本代表となって一線で活躍したいので、ラグビー強豪校早稲田大学からのスポーツ特待生のお話を頂き、喜んでその話を受け入れた。何といっても早稲田はラグビーの名門校だ。


 高校で離れた俺と健一だったが、またしても大学は同じスポーツ特待生ということで一緒になった。


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 健一はラグビー強豪高校、精華学院高校に進んだのだが、3年生となりこの強豪校からこの年スポーツ特待生として、唯一早稲田大学ラグビー部からお声がかかった。


 するとラグビー部マネージャーの立花さくらが健一に声をかけて来た。


 この立花さくらは精華学院高校のマドンナと呼ばれている超美人で、そんじょそこらの男子では手の届かない高嶺の花だ。そんな男子の憧れのマドンナから声をかけられて健一はすっかり舞い上がってしまった。


「健一君良かったわね早稲田大学からのスポーツ特待生だなんて……これでまた一歩夢に近付いたわね。今日一緒に帰らない?」


「エエエエエェェエエエエエエッ!俺なんかで良いの?俺決してカッコイイ訳じゃないから……」


「何を謙遜しているの?女子たちは我が校のスター健一君の事誇りに思っているのよ。だって……我が校はラグビーの強豪高校でしょう。そして……早稲田からスポーツ特待生のお話を頂いたということは、将来の日本代表に一歩近づいたって事でしょう。みんなそう言っているわよ」


「本当にそんな風に思われているなんて嬉しいよ」


 2人は一気に距離が縮まり、休みの日も時間が合えば一緒に出掛ける間柄になっていた。

「ねえチョット遅くなったので私1人で帰るの怖い。今日家まで送ってくれない?」


「嗚呼……当然だよ。送るよ」

 さくらの家に到着したが、真っ暗でだれも居ない様子。


「ご両親は留守なのかい?」


「ねえ寄ってかない?」


「でも……もうご飯の時間だし……」


「いいから!いいから!」

 そう促されてさくらの家にお邪魔する事になった。


「もうすぐご両親帰って来るんだろう?俺帰るよ」


「今日両親は旅行でいないのよ。私も誘われたけど……もう両親と出掛けるのつまらないから断ったの。1人ぼっちは嫌なの」


「僕……何か晩ご飯作ってあげようか?おばあちゃん子で、よくおばあちゃんとコロッケを作ったんだ」


「本当に?ジャガイモとミンチがあるから作って」


 時間はかかったが、コロッケとお味噌汁ときんぴらごぼうを作ってくれた健一と一緒に、美味しい手作り料理を食べた2人だった。


「私シャワー浴びてくる」


 暫く待っているとシャワーを浴びたさくらが風呂場から出て来た。

「健一君もお料理作って汗だくでしょう。シャワー浴びてきたら……」


「あっそうだね!」

 暫くすると健一が出て来た。


「ありがとう。俺もう帰るよ」


「行かないで!」

 そういうと後ろから健一を抱きしめたさくら。健一は困ってしまった。野郎とエロ談義はするが、ラグビーに追われて欲望はエロ動画で済ませていたので、まだ正真正銘の童貞だ。


(ああああああああ!どうしよう。一度もやった事が無いのに急にこんな状況に追いやられて……俺はどうしたら良いんだ💦💦💦)


 するとさくらが言った。

「ねえキスして!」

 興奮した健一は訳も分からず、興奮して口を押し付けた。


 するとさくらが健一の手を自分のパンテイの中に押し入れた。訳も分からず興奮した健一は一気に加速して欲望の虜となり果てた。


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 健一とさくらは公私共に恋人同士となり、さくらは将来性のある健一を絶対に失いたくないので同じ早稲田大学に進んだ。


 一方の隼人はサッカー特待生として早稲田大学に入学して1年生から名だたる試合に選手として出場しているスター。女は周りに嫌と言うほど寄って来る。だが、試合試合で女とデートする暇もない。


 そんな時に街角で健一と彼女さくらにバッタリ会った。


「オウ!隼人じゃないか!久しぶりだね。昼飯でも一緒にどう?」


「嗚呼……良いよ!」


 こうして…3人はお洒落なイタリアンレストランでランチを一緒にとった。


 何故イケメンで高身長のモテモテ男子隼人が、女が腐るほど寄って来るのに敢えて健一と一緒に食事を取ったのかと言うと、さくらに一瞬で惹かれてしまったからだ。


(まあそれでも……健一には小さい頃から散々助けてもらったから断れない。それから…綺麗な彼女だから目の保養に……)そう思い一緒にランチを楽しんだ。


 ▷▲▷▲▷▲


 そんなある日健一はラグビー部の先輩部員から意外な言葉を聞いた。


「俺も健一と一緒の聖華学園高校だったよなあ。俺が1学年上で、その時のマネージャーさくらちゃんは俺もよく知っている。さくらちゃんがお前の彼女だという事はもちろん知っている。だが、お前の友達サッカー部のエースでイケメン君と、さくらちゃんが街角で仲良く手を繋いでいたぞ」


「エエエエエェェエエエエエエッ!それはないと思います!」


「イヤ!本当さ。手を繋いでいたよ!」


 これは一体どういうこと?


 健一は改めてさくらを愛していることを再認識したと同時に、いつもどこに行くにも一緒だった切磋琢磨して助け合って来た隼人が、俺を裏切った事への怒りが込み上げて来るのであった。

「何で……何で……俺の彼女とそんなことに……」


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 健一の携帯をこっそり見たさくらは、隼人の電話番号を調べて後日隼人に電話した。

「嗚呼……隼人さん急に電話してびっくりしたでしょう?」


「一体どうしたのですか?」


「私……健一と別れたいと思っているの。実は……嫉妬深くて……」


「そんな……健一が悲しみますよ」


「じゃあ会って話聞いて下さる?」


「いいですよ。でも……試合がありますので、いつ会えるか分かりません」


 散々待たされたが、時間が取れてやっと隼人と会えたさくらは嬉しさで一杯だ。こうして……2人は喫茶店で話し合った。


「実は…健一が嫉妬深くて、私が男の人とちょっとでも親しげにすると怒り出し、暴力を振るうのです」


「僕が言って置きます。僕は忙しいのでこれで失礼します」


「チョット待って下さい。折角会えたのですから……」


「嗚呼……そうですね」

 2人は一緒に喫茶店を出た。


「もう暗いので家まで送ってもらえませんか?よく痴漢に遭うので怖くて」


 実際さくらの言っている事は正解なのだ。さくらは痴漢被害に悩まされて男の子に家まで送ってもらうことが度々あった。さくらの家は郊外にあり大豪邸である。敷地が広くて物騒極まりないのだ。


 昔は女中が車で学校まで迎えに来ていたのだが、父が会社を売却してからというもの両親は離婚。家だけは何とか売らずに済んだが、一家離散で残された娘さくらは生き抜くために、楽して大金を得られるパパ活に励んでいた。

 

 このさくらは何とも得体のしれない娘。











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