自分とは何か。
子律
ジブンとはナニか
3ヶ月に1度
体と精神が解離するような日が来る
朝目が覚めると体がまるでスライムのよう
頭は鉛のように重く微動だにしない
起こそうと思ってもベッドにへばりついたまま
目と思考だけは冴えているのに
体が起きるのには何時間もかかってしまう
その日はずっと無気力で何もやりたいと思えない
生きるのが本気で面倒に感じる
食事も外出もしない
ただベッドで白い天井と見つめ合うだけの1日
そうしてる内に
「生きる意味」「死なない理由」を探し出す
どちらも存在しないと分かっているのに
探している中で自分の内側に篭っていく
周りが何も見えなくなって声も聞こえなくなって
気付いた時にもう日付を越していたこともある
白い天井だったはずの景色が
黒い4次元空間のような景色に変わっている
さっきまでの景色に戻ろうとすると
砂嵐に視界が覆われて恐怖に潰されてしまう
その間スピーカーからは同じ音楽が流れている
目が覚めてすぐリピート再生に設定した
【Baby,God Bless You】清塚信也(敬称略)
必ずこういう時は自分の状態にあった曲を流す
落ちる所まで落ちなくては
戻るべき場所が見えなくなるからだ
先日Amazonのセールで4980円で購入した
ANKERの白い充電式小型スピーカー
なかなか音が良い
まるで目の前で奏でられている音楽のように
重低音とピアノが繊細に強く心に響いてくる
ゆっくりと己の精神のどん底へ降りる
トンッと底に足をつけて黒い視界を見上げる
水面のように空間が揺れる
そしてゆっくりと白い天井に焦点が合っていく
シューッと脳内の悩み溶けていく
赤黒く密度の濃い蜘蛛の巣のようなモノ
さっきまでの苦痛が嘘のように消えていく
生きる意味など無くてもいい
死なない理由も無かったと再認識する
へばりついていた身体がスッと軽くなり
流れるようにベッドから離れる
ドアを開け吹き抜けの窓から来た風を受ける
階段をゆっくりと降りキッチンに立つ
さっきまでの事が夢だったかのように
適当な食事を用意し胃に入れる
私は何のために生きているのだろう
ただ続く平坦な日々に
どんな価値を感じているのだろう
私は何故死なないのだろう
ただ繰り返す苦痛の日々を
どうして投げ捨てないでいるのだろう
「死にたい」ではなく「生きるのに疲れた」
複雑だけど単純で
重たいはずなのに軽く捉えて
冷たいのにどこか温かさを感じて
そんな世界にただ1人の人間として此処にいる
人生に何の意味も理由も見出せない
ただ流れる日々を
波をなぞるようにそっと愛する
命や心や人生にどこか期待をして絶望する
ただそれを毎日繰り返す
自分で自分を愛すること
自分で自分を鼓舞すること
自分で自分を癒すこと
これらが「大人になる」ということであり
これらがきっと「人の
これらが出来ない私もきっと私である
自分のペースでゆっくりと
沈んでは浮いてを繰り返す
沈めば自分を見失い
浮けば自分を取り繕う
いつか本当の自分に気付けるように
今は「自分とは何か」分からないまま
ただひたすらに日々をなぞる、それでいい
白いスピーカーにうっすら浮かぶ三角形
そこへ人差し指を運びポッと静寂を呼ぶ
さぁ今日は何をしようか。
自分とは何か。 子律 @kor_itu-o
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