愛
あら、そう黙らなくたっていいじゃない。これはもう決まったことなの。私にしか変えられないことなのよ、私にしかね。あなたは察しがいいから薄々気づいていたかしら?それでも言わなかったのは、きっとあなたの優しさね。あなたは怖がっていた。きっとあなたの言葉を私がどう受け取るかがさっぱり分からなかったんでしょう?これは私のせいでもあるわ。だってもとは私があなたに秘密を作ってしまっていたんだものね。でも、これは愛なのよ。少なくとも私にとっては正真正銘の愛そのものなの。だからどうかわかってちょうだい。ごめんなさいね、心配かけて。でももう行かなくちゃならないのよ。どうか止めないでちょうだいね。愛する人だから、綺麗な私で終わっておきたいのよ。高貴で気高く強気な私をどうか覚えていて。あぁあの人はどこまでも強かったと、そうたまに思い出してくれればそれでいいの。それが私の愛の形よ。私って歪んでいるのかしら?でも、こんな歪な愛を受け取ってくれるのが私の愛したあなたなの。あなたはこんな愛求めていなかったかもしれないわね。自分が求める愛を求め合って、奪い合って、ほんとバカみたいよ。でも人ってきっと誰もこんなものね。あなたが好き勝手私を搾取したから、私も好き勝手するの。これってまるでドライよね。こんなんじゃ真実の愛も何もありやしないわ。ただね、あなたはいつも私が欲しいものをくれようとしたでしょう。たまには身なんか削ってね。それが私には嬉しかった。あなたがただ私を搾取の対象にするんじゃなくて、私に寄り添ってくれたことが何より嬉しかったの。だから私も精一杯あなたに寄り添おうとしたわ。きっとそこに愛はあったのね。あなたは優しくて、鈍感で、ちょっと心配性で、その全てを私は愛していたわ。だからね、私にも最後まであなたを愛していさせてちょうだい。最後にあなたを憎むなんてしたくないのよ。苦しいかもしれないけれど、どうか止めないで。ただ少し抱きしめるくらいに留めておいてほしいのよ。あぁありがとう。本当にもう行かなくちゃならないみたい。あなたのことを誰よりも愛しているわ。こんな私を愛してくれてありがとう。私、今とっても幸せよ。大きく見れば、何も悔いなんてないわ。満足してるの。人の短い人生の中で、あなたに出会えてよかったわ。本当に私は幸運。ねぇだからどうか笑ってちょうだい。私は笑ってお別れしたいのよ。私はあなたが笑った顔が一番好きなんだから。
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