第3話 ステゴザウルスの話
ここは月、いつだって綺麗な地球が見えるのよ。周りは沢山の星だらけ、太陽は容赦なく私を照らしてくるわ。
眠くなったら太陽の光がこない影まで歩いて、起きたら沢山日差しを浴びるの。砂と岩、石と小石しか無いここで、私は走り回ってみたり踊ってみたりしているわ。それで時々歌を歌うの。
私は喋れる恐竜、遺伝子の実験で生まれたステゴザウルスの女の子。他の恐竜達もいたんだけど、施設の爆発に巻き込まれて死んじゃったみたい。私は命からがら逃げのびて、逃げて逃げて逃げていたらこんな辺鄙な場所へ来ちゃった。
逃げる途中で色々な物を食べていたら、お腹は減らない呼吸も必要なくなっちゃったみたい。だからここで喉が潰れるまで歌って、足が折れるまで踊るの。そして心臓が破裂するまで生きるのよ。それが私の目標。
今まで沢山の歌を聞いたわ。卵の時から近くでラジオがなっていて、生まれる前から歌う事が大好きだった。生まれてからも歌うこ事が大好きで、逃げながらも色々な歌を聞いた。悲しい歌も、楽しい歌も、いろいろな人間と出会って沢山歌った。
ある家族は眠る前に歌い聞かせ、眠った子に必ず”お休み、また明日”と声をかけていたわね。なんだかそれが少し羨ましくて、私はその声も情景も昨日の事のように思いだせる。明日、また会える人がいるんだから、今日はもう目を閉じて眠るの。そんな安心の言葉。私に言ってくれる人は、もうどこにもいなんだから。
月の重力は地球の六分の一、私の大きな体も綿毛みたいにフワフワ浮くのよ。大きくジャンプしながらあの時の子守歌を歌う。孵卵器に入れられていた時の温かいオレンジ色の光を思い出しながら、寒い冬の赤いレンガ道を思い出しながら。
今日も地球は薄青く輝いているわね、私の仲間たちはもういないだろうけど。それが何だっていうの?私は私、他の生命は関係ないわ。でも少し寂しい気持ちだから弔いを込めて、静かに眠れるように歌を歌う。
まだあの地球に人間はいるのかしら。
いてもいなくても、私には関係ないお話だけど。
【ステゴザウルスの話】
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