第4話 ラッキーの話

 「ラッキーさん、この資料ってどこへ持ってくんでしたっけ?」

ラッキーさんと呼ばれた男は声のする方を振り向き返答した。


 ここは地球の周りをまわる宇宙船の中、全部で5機ある宇宙船の中で3番目にできた物だ。人類は多くなりすぎ、宇宙へ出た者と地球に残る者で分かれてしまった。宇宙へ出た者達は初めは一つの宇宙船に乗っていたが次第に栄え、今では5機の母船がゆっくりと地球の周りを廻っている。

 ある時から地球との交信が途絶え、その後大きな爆発が幾度となく確認されたらしい。きっと戦争だろう。


 ここにいる人間は産まれた時にナンバーを貰う、上層部の人間が管理しやすいからだ。ラッキーと呼ばれた男はナンバーG-777、つまりスリーセブンでラッキーという訳。

 各アルファベットで被るとは思うが、この部署だけでの呼び名なので何の問題も無い。昔は一人ひとりに両親から呼び名をもらっていたらしいが、どうやって人間を管理していたのか不思議でならない。同じ名前とか付けられないようになっていたのだろうか。わざわざ資料を引っ張り出してまで調べるつもりもないが。


 そんなことを考えていたらいつの間にか夜間変更のアラームが鳴り始めた。船内は12時間ごとに昼間と夜間の照明切り替えが行われる。夜間になると電力削減もかねて薄暗く、重力制御も昼間よりも緩い。


「少し休憩しようかな」


 温めたコーヒーパウチを片手に薄い黄色に照らされた廊下をゆっくり跳ねた。階段を上り、扉を開く。ガラスを隔てたそこには宇宙空間が広がっている。ちょうど月の影に船が入ったようで、遠くの星々が輝いていた。誰かが音楽でも聴いているのか、子守歌のようなメロディーがうっすら聞こえてくる。

 地球に戻りたいと言っている人々もいるらしいが、自分はそうは思わない。室温は一定じゃないらしいし、家畜以外の生物が身近にいるらしいし危険が多いんじゃないかな。


 別に今の生活に不満が無いかと言われれば、そんなことは無い。

 でも変えたいとも思わない。地球へ行きたい人の話も聞いてみたいものだ。


【4話 ラッキーの話】

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彗星オードブル @DEMI_PEN

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