第七話「母校の記念写真」



 LINEに貼られたURLは、俺の母校の校門前——関●県●市にある、廃校になった中学校だった。

 Googleストリートビューでは、撮影当時の校舎がそのまま残っており、赤茶けた校門には「閉校記念」と書かれた横断幕が風にたなびいている。


 心臓が嫌な鼓動を打つ。

 俺は、この学校でひとつだけ、忘れられない記憶があった。


 それは、卒業式の後、クラス全員で撮った記念写真。

 その写真には、写ってはいけないものがあった。



---


 画面を回転させ、校庭へと進んでいくと——

 そこに、当時と同じように整列する制服姿の生徒たちの群れが写っていた。

 Googleカーは、なぜか“人間のいないはずの空間”で卒業写真を撮影していた。


 その中央に、明らかに異質な存在があった。


 他の生徒と違って顔が白くのっぺらぼう。

 それなのに、どこか見覚えがある。


 拡大すると、制服の襟に「3-●」とクラス名のピンがあった。

 それは、俺のクラスだった。



---


 動画をアップロードすると、コメントは荒れた。


> 「この学校、もう取り壊されたんじゃ?」

「おい、この写真……10年前の卒アルと同じ構図だぞ」

「画面左下に……生徒のひとり、瞬きしてるよ」




 確認すると、画面左下。のっぺらぼうだった顔に“目”が浮かんでいた。

 その目は、俺と似ていた。


 動画の再生中、ブラウザの通知が何度もポップアップした。


> 「あの時、置いていったよね?」

「迎えに来て。ずっと待ってるよ」





---


 再び勝手に録画が始まっていた。

 再生すると、俺の部屋の窓の映像。窓の外は夜。


 そのガラスに、校門の「閉校記念」の横断幕が映っていた。

 ここは、東京のはずだ。なのに。


 

---


 次の日、パソコンのファンが回りっぱなしになっていた。

 録画フォルダには、またひとつ動画が増えていた。


 タイトルは、《next_●●.mp4》。

 ●●の部分には、俺が大学時代に一度だけ訪れた温泉街の名前が入っていた。

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